戦闘開始だ!
複数の水鉄砲が高速で発射されるが、四人とクリスタルプラウンの間に立ったよくわかない男がすべて打ち落とし戦況は膠着していた。
「どうなっているんだ?」
「誰だこの人」
「よく認識できないよ」
「ついていけない」
男が頑張って戦っているのを見て四人は茫然とし、少し遠くにいた三人も戦闘に入り損ねていた。
「あいつはお前たちを狙っているみたいだな。なぁ非公式組ども」
「「「「っ!?」」」」
バレた、そう思った瞬間にハッとして戦闘態勢に入る。後ろから攻撃するわけにはいかないが、それでも敵ならクリスタルプラウンを押し付け、戦線離脱し速やかにこの町から出なければいけない。
「別に俺はお前たちの敵じゃないぞ。俺だって非公式組で呪い持ちだ。因みにあそこにる鉱崎は迷宮から祝福を受けているぞ。まぁ仕組みや意味は違うが、迷宮に目をつけられた連中って訳だ」
迷宮は探索者に加護や呪いなどをかける。これは相手にマーキングしているのだ。そして加護と呪いの差は簡単で、利用した後に仲間に入れるか、そのまま始末するかの違いだ。だから加護持ちは運がよくなったりいいことが起き、呪い持ちには死ななければ利用してやると過酷な環境を強制する。
「それをどうしてここで?」
「離れているとはいえ、話を聞かれたらヤバいんだが?」
安藤と田中がそういい男に真意を求める。
「俺の異能があるから聞かれねぇよ。それに今回の目的はあのデカ物を倒すことだ。援護するからお前らできるだけ頑張れ、レベルアップしたいだろ?大丈夫だ、少なくともこいつを倒すまではあいつらも手を出させないだろからな」
「それはうれしいですが、ダメージ通るんですかね?」
「一応……共有していいですか?」
「やるのか西田?」
正直、援護ありきでも勝てる見込みはない。切り札を使えば話は変わるが、見張りがいる以上はそれ以前にあまり力は出せない。だが西田の共有で、男の恩恵を受けれれば可能性があった。
「そういう異能か、別にいいぜ俺にもそれなりにメリットがありそうだしな」
「では遠慮なく」
そういうと西田を通じて、強力なスキルや異能の効果が全員に行きわたる。
「これはすごいな!どんなけ強化してんだお前ら!」
「こちらこそ、流石高レベル保持者」
「これならいける?」
「まぁそれでもギリギリダメージが通るようになっただけだが」
「攻撃が通るなら問題ない!」
安藤が攻撃を搔い潜ってクリスタルプラウンに攻撃を加える。それはあっさりと殻に当たり、弾かれた。
「ダメージ少な!」
そして攻撃をくらってから初めて安藤に気が付いたクリスタルプラウンは反撃をするが、初動が遅すぎて関節部に何度も攻撃をうけてしまう。
「認識阻害で立ち回りは楽になりましたけど、効いているようには見えませんね」
「底上げされているとは言えはやり400にも達してないとああなるのか」
「僕たちも攻撃しましょう!」
「援護はこれぐらいでいいか?」
三人が動き出すと同時に、男が受けをしなが暗影を使い複数の影がクリスタルプラウンを同時に攻撃して隙を作り出す。
「隙も弱点も丸見えだ!戦いやすいな!」
田中が剣での刺突を繰り出し、深く剣が突き刺さる。そのまま横へと斬り裂き、足の一本を破損させた。
「素早くなりましたし!」
攻撃のみを考えた態勢で目を狙う吉泉。それにより目を突き刺されたクリスタルプラウンは、それでも冷静に目の前にいる誰かもわからない人物に、攻撃を集中させようと鋏を振るう。だがそれは当たる寸前で消えて、背中に衝撃が走っていた。
「焼き蝦にしてやる!」
今までにないほどに高まった炎熱線がクリスタルプラウンの殻を赤熱させ、蒸気と圧倒的熱量が洞窟を覆い隠す。
「その調子だ!」
安藤の刺突が腹に突き刺さり、剣から炎上を発動させ、内部から焼き尽くす。いくらレベル差と耐性があるとはいえ、体内を焼かれて悶えない生物はいないだろう。
そうして攻撃を続ける四人だが―――
「これでも倒れないのかよ!」
「何回攻撃したと思ってんだ!」
「10分以上も波状攻撃してこれですか!」
「最大火力でこの程度しか通じないなんて!」
最大火力をぶつけ続けても、苦しんでいるだけでその命までは手が届かない。耐性が高すぎて中々状態異常もダメージが入らないし、小さな傷ならスキルなしの元の生命力ですぐに元通りだ。特別性なので当然だが、それでも強すぎた。
「あの人の援護がなきゃヤバいことだらけなのに!」
「言っても仕方がないだろ!」
スキルや吸収のおかげで体力は一切減っていないが、それでも長期戦は精神的につらいものがある。物理的に数時間続けられても、ギリギリの戦いでは精神が持たない。体力が持つのもダメージを受けないことが前提だからだ。
「スキルを得て支援されていても素が違いすぎる!俺の切り札を使うか!?」
「いやあれば危険すぎますよ!」
四人は一人一人切り札を持っている。その効力は絶大だが、力技なので相応のデメリットもあるのだ。
「このまま一時間ぐらい粘れば倒せそうだが!」
「そんなに時間をかける気もないな!」
「だったらあれしましょう!」
「無理です頼みました!」
四人は一気に距離を取り、その隙間を縫って影が一瞬でクリスタルプラウンの関節に突き刺さり動きが止まる。
「もう無理そうか?まぁ十分戦ったからいいか」
「できるわけないでしょ!」
「そうだそうだ!」
「これ以上は、無理だ!」
「てかあれ!」
四人はクリスタルプラウンに必死で気が付いていなかったが、なんと400レベ超えのメタルラウンとゴールドラウンが追加で投入されており、三人の方も大分忙しそうだった。
「あいつらに押し付けておいた、お前らじゃどうせ勝てないだろ?」
「おっしゃる通りで」
吉泉がそういい、三人を見る。というか戦っているのはほぼ鉱崎さんで、雷久保と清水は邪魔にならないように援護に回ってる。
「あれが噂のブラックゴーレム。主力は三体いるらしいが、今回は一体だけか」
「クリスタルプラウンより強いですよあれ。あれは勝つのも時間の問題だな」
「てか鉱崎さん自身も強いのかよ」
「黒鉄でしたっけ?黒い鉄を生み出して戦えもするんですね」
ステータスの開示義務が絶対なのはレベルまでだ、スキルや異能は努力義務であり詳細を伏せたり黙秘は許されている。なので隠している人が大半で、全開示している人の方が少数派である。
「おい、倒したぞ、ということでとんずらだ」
「はやっ!てかもう逃げるのか」
「急すぎません?」
「とはいえここにいられないのは事実」
「見られちまったからな、いい訳も困るし」
一端とは言え怪しいところを見られてしまった。いい訳のしようはあるが、目を付けられるのは避けられない。それだけで面倒ごとが転がり込み今後の活動に支障が出る。だったらいっそのこと逃げるのが先決だ。
「その辺は安心しろ、俺の異能で誤魔かしておいた。証拠も残ってないし認識も曖昧だから言い逃れはできるぞ。てか俺と一緒にいる時点でヤバいから結局逃げるしかないぞ」
「前者はありがたいんですが、え?マジですか?」
「一応、俺たちはフリー免許に切り替えたんだから出て行っても問題はないけどな」
「そういう問題ではない気が……」
「まぁそこら辺もどうにかなるだろ」
準備はできているし証拠も残らない。残るのは疑惑だけであるが、それも時間が解決してくれるだろう。そうして五人は、そそくさと誰にも認識されることなく逃げ出したのだった。




