とある魔物の出現
洞窟迷宮にある地下湖に潜った雷久保と清水は、深層付近を探索していた。
「ここにも異常なし」
「人気迷宮とはいえ人が少ないから少しは証拠が出ると思ったんだがな」
非公式組は見つからずもう12月も終盤になっていた。
「今年中に見つけられないなら警戒を解除するだと」
「まぁ妥当だな、いつまでも探し回る訳にはいかないし」
本部からも諦めムードでそういう伝達が来ていた。別に仕事は非公式組を捕まえるだけではないので当然と言えば当然だ。それに非公式組は見つけ次第対処というだけで、優先度的には大して高くはない。理由は、どれだけ強力であっても個人少数であることに加え、表立って社会に大した影響を与えないからだ。
「まぁ、騒ぎを起こさないだけマシだし、今回は諦めるか」
「やっと激務から解放される」
疲れた顔でそう話しながら魔物を倒して、迷宮の探索をしている二人だったが、直感系のスキルが発動し悪寒が走った。
「な、なんだこれ?」
「強敵の予感が……」
明らかに格上の気配が遠くからする。しかもその先に人の気配もするのだから最悪な事態だ。
「と、とりあえず行くぞ!」
「お、おう、クソ!次はなんだ!」
走り出す二人は周囲の魔物に目もくれず異能を全力使用して始末して走っていく。
「あいつは!」
「あの三人ボロボロだぞ!」
洞窟迷宮にある地底湖である開けた場所に出た二人は、激しく魔物と戦闘する三人の女性探索者を見て戦慄した。
「明らかに300、いや350超えの戦いだ、しかもあの魔物、こんな迷宮で出るなんて」
「ああ、俺たちはまだ300を超えていない。異能があってもあの戦いにはギリギリだぞ」
女性探索者が苦戦している魔物は、結晶でできたような巨大なエビのような魔物だった。その強さは尋常ではなく、350前後の探索者相手に無双しているようにさえ見える。
「クリスタル系の魔物だ。あれは厄介だぞ」
「物理特化のメタル系、特殊特化のゴールド系、そしてその両方のいいとこ取りをしたクリスタル系の魔物だったか。見返りは高いがレベル以上の強さだとは聞いていたがあれは、レベルでも負けてるぞ」
基本水辺にいて水鉄砲による遠距離攻撃、近づけば暴れるし、後退だけとはいえ恐ろしい速さで移動できる。おまけに三人の攻撃にもものともせず、仮に危なくなっても簡単に距離を取って水の中へと隠れて遠距離攻撃に徹し始めるだろう。今見ているだけでも明らかな格上、挑むのがバカな話だと思えるほどにだ。
「ヤバい勝てない」
「だがここで見捨てるわけにもダメだろ、こういう時に手助けするのが俺たちの仕事だ」
清水が怖気つきそうになるが、雷久保がそれを止め様子をうかがって入れる隙を探す。他の探索者であれば、途中介入は判断が難しくご法度だが、二人のような警備職は別だ。人命優先でいつでも自己判断による介入が可能だった。
「今だ!」
「わかった!」
剣使いが水鉄砲で貫かれ、それにより一瞬気がそれたハンマー使いはその隙をつかれ吹き飛ばされる。ナイフ使いは正面戦闘に向いてないが、仲間を見捨てるわけにもいかずに攻めに入ろうとした瞬間に、雷久保と清水の異能が炸裂し、二人を救出していた。
「警備隊だ!ただいまよりこちらの指示に従って速やかに撤退してもらう!」
「安全確保のため、俺たちが時間を稼ぐから速やかに撤退をするように!」
「「「ッ!?」」」
驚いていた三人だが、清水から回復薬を渡され、ことの深刻さを理解するとすぐに行動に移し始める。
「さて、こいつをどうする?抱えて逃げるにも水鉄砲があるし」
「あの三人が動けるようになるまで一分は時間を稼がなきゃいけないわけだが」
即時回復薬とはいえ低級のものでは、重傷を完全に治せはしない。回復と息の整えに最低でも一分はかかる。その間格上を相手しなければいけないので、それはつらい耐久戦になるだろう。
「逃げるまでの時間稼ぎをしたのちに俺たちも離脱するぞ!」
「わかった!」
清水の異能によって水が魔物に纏わりつき抑え込もうとするが、少し強めに暴れられるだけですぐに解除される。
「クソ!強すぎる!だったら!」
散らばった水を即座に針のようにして全身に浴びせた。その威力は軽く見積もっても、人間を穴だらけにするほどの威力と数があったが
「効かねぇな!」
水場で異能の性能が上がっているというのに清水の攻撃は通じない。
「だったらこれでどうだ!」
そこで雷久保の電撃が魔物を包み込む。
しかしそれを鬱陶しそうにながら魔物は水鉄砲を放ち……外れた。
「出力全開だ!感電死しろ!」
動きは鈍っているが通じているようには見えない。だが時間稼ぎが目的なのでそれで十分だった。
「動けるか!」
「逃げるぞ!」
「「「はい!!!」」」
五人が動き出したと同時に、電気分解された水が電気によって着火され、大爆発が起きる。その隙を見て探索者たちは、二人の活躍もあり無事撤退をできたのであった。




