『洞窟迷宮』のボス
田中がボス部屋に入り、天井を見上げて嫌な顔をする。
「コウモリですか」
「どう倒すかな」
大柄ながらも洞窟を自由に飛びまわれるサイズのコウモリだったので、目立った遠距離攻撃を持たない田中には厳しい相手だ。
「代わりましょうか?」
「確かにあれなら俺よりもお前の方が……いややりようはある、大丈夫だ」
そう言い攻撃を仕掛けた後に西田を返し、滞空しているコウモリを見る。
「目立つのは超音波か。後は平凡だな」
人間の耳には聞こえないほど高い周波数の音波のことだ。コウモリはそれを周囲の確認に使うと聞くが……
「魔物がそれだけな訳ないよな」
何もしてこない。ただ田中の届かない位置に滞空しているだけだ。何かをしているのは分かるようだが、具体的な事がわからず気味が悪いようで投石による攻撃を開始する。
「避けるよな!」
華麗に避けられ、急速突進を咄嗟に横へ躱しながら剣を振るう。これで飛膜を傷つけられれば良かったのだが、当たるはずもなくまた空中へ逃げられる。
「やっぱ魔物だな、お前!」
再度石を掴み投げつける。その一撃はプロ野球選手の投球を軽く超える速度と威力があるのだが、このレベルの魔物相手には牽制がいいところである。
(300台レベの魔物には拳銃程度じゃ牽制が限界だったか、ボスともなると話にならんな)
急所を撃ち抜ければダメージは与えられるが、それだけで倒せるほど弱くない。
(さてどうしようか、嫌な気配は消えたが、それは攻撃をし続けて動かし続けているからだし)
投石と接近時の打ち合いで超音波攻撃を不発にはできたが、コウモリは中々しぶとく決定打が打てない。このまま戦っても埒が明かないと思った田中は、等価交換で大きいだけの盾を取り出し、コウモリの突進を真正面から受けた。
「飛べなくなればこっちもんだ!」
盾を放棄し、回り込んで飛膜に剣を突き刺し引き裂く。続けて首を突き刺したが、力が強く突き放されてしまった。
「銃器とまで言わないが、ボウガンや弓の一つでも持っておけば良かったか」
石を投げ過剰に反応したコウモリの隙をついて次々に斬りつける田中。
(隙だからけだな。超音波もつかえないとなるっ!?」
目眩がしてふらつき、踏みとどまった所で噛みつき受けそうになるが躱し、吹き飛ばされた。
「油断したな」
大したことないダメージだが、自分の甘さと相手の強さを再確認した田中は、立て直される前にと一気にコウモリを攻め立てる。
(もう超音波は使わせない、というか何もさせない)
着実にコウモリを斬り伏せ、抵抗の根を切り落としていく。予定調和のように淀みなく動き続ける田中をコウモリは捕らえられず、蠢く肉塊となった後に消えるのだった。




