悲報、宝箱なし
あれから深層に降りて来た四人は、残念そうにしながらボス部屋の前にいた。
「隠し部屋も宝箱も無しですか」
「稼げると思ったんだけどな」
「宝石いくつか拾っただけと」
「まぁそれだけで数万にはなったけど」
もっとがっぽり稼げると思っていただけに残念である。これから通うのと、呪いの開放で変わるかもしれないが、出ると言われる迷宮でこの渋さは少々痛かった。
「装備の融合にも相当金がかかると言うのに」
「強力になり続けていますけど、その分出費がバカになりませんからね」
「割引品を買いあさる日々だから」
「スキルと装備の充実だけが趣味になりつつあるな」
酷い話である。心ばかりか金になるものでも落ちていればいいものを、あるのは小さな宝石だけ。この宝石はこの迷宮に入る者であればだれもが拾えるものであり、最低保証である。深層なだけあって地上付近より若干大きいが、だからと言って大きな金になるわけではない。
「ま、いつも通りサクッとボス倒して魔物狩りでもしよう」
「それが一番ですね」
「魔物を強くするんだったら必ずその分の報酬を増やさなきゃいけないのが迷宮のルール、絞り出してもらおう」
「スキル狩りじゃ!」
人がいない事は確認済み。その上で呪いを開放し、一気に迷宮の気配が変わる。突き刺さるような殺意と敵意。遠くから蠢くような音が聞こえ、大量の気配が一直線に向かってくる。
「お~コウモリにサソリ、クモにデカいミミズになんかよくわからない虫まで一杯だな」
「ザリガニみたいなのまでいるな、水辺から出て来たのか」
「レベルも最低300ですか。中にはギリ400も混じってますが、少ないですね。やはりレベルが上がるとブーストしてても限界がありますね」
「このレベル帯になってくると十数レベ違うだけで命取りになるから強化ではあるんだろうがな」
例えばレベル400と410の違いは分かりにくいが、それは外から見た場合の話であり。戦っている当事者たちはその実力差に苦戦する程だ。微妙な違いとは言え、確実にレベルが高い方が基本的に強いので、種族差やスキル差があっても油断できない。長期戦となるとなおさらだ。
「ま、俺たちには関係ないがな」
「そう言う事でね」
「疲れないので」
「数の暴力はこっちも同じだ」
魔物たちが見えた瞬間に西田の火炎放射が洞窟の壁ごと魔物たちを焼き払う。込められた力は最大であり、熱の逃げにくい狭い空間での攻撃だったこともあり、その威力は絶大だ。
「流石400にもなると強い」
「耐性もなく素であの炎を耐えるとは」
「とは言え弱ったところに急所に当ててやれば一撃だな」
「その分生命力と攻撃力はやばいぞ」
燃え盛る炎の中から飛び出す魔物を一撃で仕留める安藤。他の三人も抜けて来た魔物を効率的に捌いて瞬殺している。
「技術や先読みじゃこっちの方が有利だ、どれだけスキル揃えたと思ってんだ」
「攻撃が通るのであればどうとでもなるね」
「この調子で戦えたら遅くても来月中には400レベになれそうだ」
「そううまく行けばいいんだけど」
西田は疲れる事を知らずに火炎放射を続ける、魔物たちはそこに容赦なく突っ込み四人を殺そうと躍起になっていた。
「で、試しにやってみたが、ボスは倒せそうか?」
「もちろん、最初は僕が行くよ」
「頼んだ」
「慎重に動いてくださいね」
そう言うと西田と吉泉がボス部屋に入る。その瞬間に炎が消え魔物たちがこれでもかと押しおせてくるが……
「うまいうまい」
安藤が前に出て念力や炎で無双を開始する。後先考えずに全力で動き続けられる彼らには、多少のレベル差など意味をなさないのが伺えた。
「っと危なかった」
「油断すんなって」
魔物を殺し続けていると、流石の安藤でも僅かだが隙が生まれる。そしてその隙を付けてしまうのがブースとされた魔物なのだが、そんなことを仲間である田中が許すはずもなく叩き切っていた。
「ボスはもっと強いんだぞ」
「だったらできるだけ多くため込んどかないとな」
「ですね、強そうなゴーレムでしたよ」
帰って来た西田がそう言うと、三人の戦いが更に苛烈になるのだった。




