確認作業
迷宮から出た四人は、乗ってきた車の中へと戻り戦利品とスキルの確認をしていた。
「戦利品は、中級回復薬か」
田中が手に持っている小さな瓶をみんなに見せながらそう言う。
「おかしいですね。ここは普通の回復薬までしか出ないはずでしたが」
「それいうならあのボスの強さも大概だろ」
「随分苦戦させられた」
急激な成長と基礎レベルとスキル、能力レベルが釣り合っていない状態に慣れていないとはいえ、以前より強くなったというのは確実だ。それなのに苦戦したということは、迷宮の方が一枚上手だったのだろう。
「俺の予想なんだが、やっぱ連続して入ったからだと思う」
「詳しく」
安藤の話にみんなが耳を傾け、安藤は持論を展開した。
「前に入ったときは対策不足だったんだろう。道中ほとんど能力使わんかったし。それでたまたま二回目も来たから、前の戦いを見て学習したんだと思う」
「いやいや、だったら他の迷宮でも同じことが起こってるはず。そんな話聞かないし、それにしたって強すぎるよ」
安藤の持論に、西田が反論する。知らないだけかもしれないが少なくとも前例がなく、普通のボスよりも圧倒的に強いことに疑問を抱いていた。
「それはあれだ。この迷宮ほとんど攻略されてなかったから力が有り余ってたんだ。それと普通の迷宮は特定のパーティーが連続でボス戦するとかないだろ?大抵の場合再攻略中に誰か別のパーティーがボス戦をしてリセットされるんだ。あと付け加えるなら、これは迷宮が限界までホンキを出さないと起きない現象とか」
なんとも突拍子もない話だが、あえて理由付けするならある程度は理にかなっている。
「確かに普通の迷宮は、適正レベルでの攻略が一般的だ。限界レベルギリギリでなんて攻略する奴なんていないな。危険すぎるから」
「一部の特殊条件のことを除けば割に合わないからね」
「長期間無攻略かつ飽和時での限界レベルギリギリの連続攻略ですか。確かにそんな無茶する人いませんね」
納得した三人は、じゃあと報酬についての見解を聞いた。
「報酬はあれだ。次に期待させるためだとかだろ。迷宮側は人類に入ってもらいたいはずだからな。そこで渋ったら誰も来てくれなくなるだろうし……いや、もしかしたらだが、報酬の質だとか確率を高くしたりして強力な魔物を生み出しているのかもしれないな」
あくまで報酬は人類を誘い出すための餌でしかないのであればそうではないかと言い、そうでないなら迷宮側も何かしらのリスクを背負っている可能性があると推察する。
「なるほど。そういう考えもあるか」
「迷宮なんて自壊する以外で壊せませんからね。できるだけ多くの人類を狩りたいと」
「リスクで言うなら高価なものはコストが高いってところかな」
そこまで考え
「じゃ今からまた行ったら、もっと面倒な敵になってる可能性があるな。だが報酬のことを考えれば……」
「その分報酬も上がるでしょうが、危険ですよ」
「こっちの手はほとんど知られてんだぞ」
「いくら能力があるからって……」
迷宮の過剰分のエネルギーをなくすまでは、高報酬を期待できるのだ。しかも敵は、対策を施しているからと言っても基礎能力には限界がある。ケガの可能性があっても、挑み続ければそれ以上の見返りがあるのでは?と考えていた。
「まぁそっちはさて置き、安藤は何か手に入ったか?」
「ああ、やっとスキルを手に入れられた」
「マジ!?」
「やりましたね!」
安藤はそう言い手に入ったスキルを伝えた。
「分裂に酸液と再生ですか」
「分裂は無理だけど、あとの二つは使えるよ」
そう言い安藤は、草を持った手を見せてそこから粘液を出す。すると草は見る見るうちに溶けてなくなった。
「うわっ、強力だな」
「レベル上げればもっと強力になるんでしょうね」
「再生はわかるんだけど、分裂どんな感じ?無理な理由は?」
少々引き気味の田中に、興味深げに観察する吉泉。そして分裂について聞いてくる西田。
「ああ、なんとなく使えない……というか使ったら大変なことになるってわかるんだ。多分ヤバいことになると思う」
「確かにこれは体を割いて二人になるスキルだからね。スライム系以外には無理があるよね普通。まぁこれから他のスキルが手に入るから、それ次第でもあるかも」
「二人になった安藤さん……なんか面白そうですね」
「やめてくれ、もっとレベルが上がりづらくなるから」
そう冗談を言い合いながら成功を喜ぶのだった。