イベントなんてないよ
慎重に動いているおかげで特に何事もなく一か月が過ぎていた。
「特に何もありませんでしたね」
「ヒヤヒヤした事はあったけどね」
吉泉と西田は見張りをしながら魔物を倒し続ける。
「呪いがあれば十日程度で終わる作業を一か月かけるとはね」
「そのお陰でボス戦も何度もできたので良かったじゃないですか」
週一の休みを除き毎日迷宮に通った結果、二十七日間でおよそ百回程度のボス戦と八万以上の魔物を狩り続けていた。そのお陰で一番レベルの低かった安藤のレベルが360レベに達していた。
「にしても、ボス戦とは言え格下でレベルが上がるのは得だね」
「安藤さんはともかく、私たちも上がりましたからね」
もうすでに彼らのレベルは迷宮を超えていた。よってボス戦とは言え格下しか出て来ないのだ。それなのにこれでレベルアップできてしまうのだから、都合がいい事この上ない。
「でも残念ですね。ここ周辺だと推奨レベル250とかの丁度いい迷宮のがない」
「それそれ、段階踏めないのが辛いよね」
ホントだったら、少しづつ安全を確保していきたいのだが、丁度いい迷宮が近場にない。なので結構心配している。
「でもね、洞窟迷宮にあるスキルがね」
「便利すぎますし」
推奨レベル300の洞窟迷宮には、数多くの洞窟に出てきそうな魔物が出てくる巣窟だ。ボスも安定せず、薄暗い空間が続く迷宮なのだが、人気なのには理由がある。
「魔物の種類が多いので欲しいスキルが多いですよね」
「暗視に毒液、他にも単純な強化系とか様々、なによりボスの土操術が欲しいよね」
二人の言う通りかなりめんどくさい迷宮なのだが、実は魔物が多くて罠が少なく攻略報酬も優秀、なにより宝箱が出来るのだ。魔石だけでは最低限の稼ぎしかできない探索者からすると、宝箱はまさに金持ちへの一歩とも言える。
「そういや宝箱もありましたね。あの地図もやっとまともな出番ができました」
「隠し部屋は聞いた事はないけど、それを抜きにしても僕たちはあんまり期待できなさそうだけどね」
因みに彼らは呪いの影響で、宝箱の排出率が下がっている。その代わりに高品質なものが手に入りやすくなっているのだが、勿論それもただでは手に入らない。ほぼ確実に罠付きか、危険地帯に設置されているだろう。
「罠が怖いですね」
「難易度おかしくされてるんだろうな」
まぁ彼らに限らず、宝箱のある場所に危険があるのは当然なのだ。実際に一攫千金を求める探索者の多くがこれにやられて帰らぬ人となっている。宝箱だけ持ち帰ればいいなどと言う安易な考えは既に対策されているのだ。
「ま、洞窟迷宮は一般人が入ってこない分人が少なくてやり易いでしょうね」
「油断はダメですよ」
300レベの迷宮からは副業で入ってくる探索者が一気に減るので、魔物の取り合いが少なくなり稼ぎやすくなる。人と出くわすのもぐっと減るので動きやすくはなるが、出会う人たちは皆本業かそれに匹敵するので油断はできない。
「スキル構成が強いだけなのは一般人でもいますけど」
「経験積んでる探索者ほど厄介なのはないね」
スキル頼りな一般人は強いだけであり意外に隙が多い。しかしレベルが300にも達した本業の探索者は、こいつらにも言えるがスキルを抜きにしても隙が少ないのだ。
「ま、どうにかなるでしょっと、どうやらうまく行ったみたいですね」
「じゃあ少し早いけどこれから合流して普通に探索しようよ。で昼には出てご飯でも食べにさ」
安藤からの連絡を確認した二人は、そう雑談しながら合流のために階層を降りるのだった。




