運がいいのか悪いのか
田中と西田が地道に魔物を狩っていると、自分たちのいる階層に誰かが入って来た気配を感じていた。
「もう来たのか」
「連絡入れておいたよ」
探知で詳しく見てみると、それは雷久保と清水だった。警備員として見回りにでも来たのだろう。この階層は広い方だが恐らく一時間もしないうちに下の階層に行くだろうことは容易に想像がつくので、速攻で呪いを抑えるように連絡をしていた。
「丁度ついさっき吉泉さんがボス戦は行ったみたい」
「間に合ってよかった、安藤も止めたようだからバレる心配はないだろうな」
呪いの影響は割とすぐに消える。標的のみを狙い、それ以外に見つからないように徹底している迷宮の事情は四人には知ったこっちゃないが、兎に角都合が良かった。その分迷宮の恨み節は凄まじいものだがね。
「隙を見てこっちに合流するって」
「まぁそっちの方がいだろうな」
魔物狩りが出来なくなるのであれば一人でいる理由もない。それに一番レベルが低いと知られている安藤が深層で一人でいては怪しまれるかもしれないからだ。
「バレないようにしろよっと」
「見つかると厄介だからね。また長話をするのはゴメンだよ」
普段の会話や他人とのやり取りでさえ、注意して最小限に抑えているのだ。警察ほどではないが、あっちも正式な仕事としてやっている以上、あまり関わりたくはない。
「なんでかわからんがピリピリしているし」
「別の所で非公式組暴れたって話もあったね。僕たちも気を付けないと」
派手にやる人達もいるなと雑談しながら、こっそりと近づいてきたナメクジを適当に葬る。やはり呪いが無ければ物足らないものである。
「力の流入が減っているから本当に狩りは止めたんだろうな」
「あと十分もしないうちに着くだって」
そんな話をしながら魔物を狩っていると、迷宮内に人が増え始め魔物の襲撃が止み安藤とも無事合流を果たせていた。
「教えてくれて助かった。もう少し遅かったら見つかる所だったな」
「もう少し余裕を持てよ」
「いつだって成功する訳じゃなんだよ」
後始末を済ませ避けられたこと言ったが、いつも通り注意される安藤。軽く謝るがやめる気がないのが見て取れるのもいつの事だ。
「ところで何だが、ここでしばらくスキル吸収させてほしいだ。せっかく手に入れた訳だしカンストさせたい」
「レベル上げも鈍化し始めて来たし、別に急いでいる訳でもないから、俺は構わないが」
「僕もいいよ、スキルは多いにこした事ないからね」
過剰に狩れないので効率はクソほど悪いが、毎朝今日のようなことを繰り返していれば二か月もかからない程度の作業だ。レベル2のスキルが大半を占めているので、もしかしたらもっと早くなるかもしれないぐらいだ。
「ありがとな、こっちはレベルが低いんだ、これぐらいしか戦力差を埋められる手段がないんだよ」
「バカ言え、スキル取りすぎなぐらいだぞ」
「そうですよ、レベルの差は大きいとは言えそれは、適性レベル通りのスキルを持っていた時の話ですかね」
安藤はその大量なスキルを持って、万能性と隙の無さからくるしぶとさを得ていた。そしてレベル不相応なスキルを持つ事は、同格以下に一切の隙を与えず、格上との戦いにも食らいつける事を意味する。
「それに次ぎ目指すのは300レベの迷宮だ。正直400になってから行きたかったけど、流石にそれだと時間がかかりすぎるから、万全の準備を整えてから行こうと持っていた所だしな」
「そうだよ、300レベのボス上限の平均レベルは400なんだから、今までの非にならないからね」
「それに罠だって凶悪になり始める。洞窟迷宮はそこまででもないとは言え用心しておくに越したことはな」
そんなことを話しながら見つけた魔物を適当に狩っていると、西田の方も終わったようなので合流して最下層で狩りを継続する事にするのだった。




