とある探索者の警備
雷久保と清水は、いつも通り仕事でシャッター街迷宮に来ていた。
「計器に異常なしだ」
「いつも通りだな。やっぱりここには来てないか」
2週間ほほどの調べの結果、シャッター街迷宮には非公式組が潜り込んでいない事が分かった。
「すべての迷宮の検査をしても特に何も見つからなかった。やっぱもうこの町から離れたのか?」
「そもそも定住しない探索者なのかもしれないぞ」
全国を回って攻略報酬を集めている探索者は少ないがいるにはいる。彼らは初回特典を求めているらしく、迷宮の強さに関係なく挑むので勿論監視対象だったのだが
「現状、確証を持てる奴いないな」
「だよな、そもそも他から来た非公式組がそんなヘマをするかと言われると疑問が残るし」
探査者たちの移動履歴を見ても特にこれと言った情報は出て来ていない。報告会ではもちろん、他の探索者や同僚にも聞いたが目立った成果は得られなかった。
「わざわざ人の多い迷宮で事を起こすか?」
「俺なら絶対しないな」
足が付くような事はしないだろうと、やはり犯行はなりたての非公式組のミスであると考えていた。そんな話をしながら魔物を倒し階層を移動しながらか警備をしていると四人組の二人、田中と西田を見つける。
「あいつら、もうここまで来たのか?早すぎないか?」
「成長が遅いって何だったんだよ」
特に苦労することなく魔物を袋叩きにしている二人の様子を見て、その強さに驚く。
「異能のレベルが上がったのか?それとも迷宮巡りの成果か?」
「それはあり得るな。ボス戦は経験値が美味いからな。強くなるためだったら、人気な迷宮以外の方が競争相手が少なくてやりやすい。仕事中は基本ボス戦できないのが悔やまれるわ」
異能やスキル構成は勿論、朝から晩まで迷宮に潜り、過疎った迷宮でボス討伐を繰り返せば強くなれる事は当然の話だ。その情報は事前に調べた通りだったので、特に気にしない二人。
「そういやなんで二人だったんだろうな」
「前に分かれて潜っている事あるって話してたからそれじゃね」
何度か話す機会があったり、話しているのを聞いた事があるので別段怪しむ話ではない。良く思われていないのは知っている二人だが、それでも公式な場での嘘やレベルの虚偽報告は犯罪なので流石にそこまでしないだろうと思っていた。
「前に聞いたレベルも含めて言えば150ぐらいか」
「それぐらいが妥当だろうな」
この迷宮の深層に入れる適性レベルだ。特にここはボスが倒しやすいので、この程度でもボス戦が出来てしまう。格上と簡単に戦えるのでレベルアップもより早くなるだろう。
「って事はもうボス戦も済ませてるのか。朝早いとは聞いたがここまでなんてな」
「ここのボス復活は平均2時間少しかかる。レベル上げが目的だろうから確実に入れる人が少ない時間を狙ってた訳だな。こりゃ成長が速くなる訳だ」
同僚時代は見下していたが、今は一般人と会社員と言う立場である以上、露骨な悪態はつけない。立場も土俵も違うのでこういう評価に落ち着いていた。
「ボスでのレベル上げは定番中の定番だからな。まぁその分リスクも奪い合いも多い訳だが」
「真夜中とかに迷宮に潜る奴もそうだ。人がいなくて狩りやすいからって無茶する奴が死にやすい」
忘れてはいけないのが、迷宮は命の奪い合いの戦場である事。敵は魔物や罠だけに留まらず、証明不能なのをいいことに人間同士でも容赦のない者だっている。
「ま、対策と情報収集してれば余裕だがな」
「そうだな。それに強くなればすべて解決だ」
曲がり角を曲がると魔物たちが待ち伏せしていたが、雷久保が放った雷撃によって一瞬で消滅する。そして討ち漏らしは、清水の水斬でこちらも消滅しドロップ品を落とすのみ。
「レベル差があるとゴリ押しでもどうにかなるし」
「油断は禁物だぞ。いつ強い奴が出てくるかわからないかな」
そう言いながら二人はドロップ品を回収して、引き続き警備をするために全階層を回り続けるのだった。




