こういう迷宮は簡単
既に吉泉以外がボスを倒し終わり二時間が過ぎていた。そんな中、安藤はいつも通り最前線に出て魔物たち相手に無双劇を繰り広げていた。
「他の探索者に見つかったら大変ですから、逃げる準備しておいてくださいよ」
「大丈夫だって、二人には上の階層で見張っててもらってるし、時間的にも間に合うだろうからさ」
ナメクジの群れを葬りながらスキルレベルを上げることに集中する安藤。既に二千体近いナメクジを倒しており、鈍重のスキルレベルも2になっていた。しかしそれでも少しでも上げようと話を聞き流しながらひたすら狩り続ける。
「もう少しとか言って毎回遅れそうになるじゃないですか」
「そうだがよ、俺が倒し続けてなきゃそっちだって疲れるだろ?」
向かってくる魔物を倒し、安堵のサポートだけしている吉泉が呆れた様子でそう言う。安藤の言う通り、重ね掛けしているとは言え、スキルの自動回復量だけでは全力戦闘を長時間続けることは不可能だ。安藤の過剰供給あってこそのあの戦闘力なのだ。
「そうじゃないです。倒すのに夢中になってもしもの事があったらと言ってるんですよ」
「そこら辺は大丈夫だ。探知だって十分働いてるし時間だって計算済みだからよ」
遅れることはないが、遅れかける事は多々あるのだが、その理由が高度な探知能力とそれによる時間を計って計算しているからだった。効率を求めてギリギリまでやってしまう癖があるのだ。
「そうでしたね。毎度ギリギリなので忘れていました」
「にしてもよ、こう言う迷宮はいいよな。だって魔物が一種類しか出て来ないんだぜ」
魔物が倒しやすくて仕方がない。それは魔物の種類が少ないからだ。対処法が決まっているし、ここのナメクジたちのように動きが鈍い魔物がいる所はまさにいいカモでしかない。
「魔物の種類が多いと人気迷宮になりにくいですからね」
「余程稼げないとな」
魔物の種類に限らず環境が変わらないのも好まれている。階層ごとに変わるところなどマイナーな連中しか集まらない。まぁ珍しいものが手に入りやすいと言う理由もあるが。
「そうですね。このナメクジたちも、大体300前後はレベルがあるのにこのザマですし」
「本来はタフ過ぎて倒すのが大変なんだろうが、これじゃあな」
塩でも撒けば弱体化するし、殺虫剤を使えば一発だ。そうでなくても、多少時間をかけて複数人で袋叩きしてやれば何もできないだろう。安藤達からすれば、レベルもスキルも差がありすぎて相手にならないだけだが。
「少々力はいるが、それでも一撃で倒せるからな」
「私たちも随分と強くなりましたね」
吉泉の言う通りだ。半年もかけずにこのレベルに達しているのだから異常だ。500レベの最速記録を出せそうな勢いなのだ。
「500レベ到達の最速記録は、公式で一年半だからな」
「パワーレベリングの制約がないともっと早いと言われてますよね。まぁそれよりも罠対策の方が大変らしいですが」
400レベ以降のレベルの上げにくさと言ったらそれは辛いのなんの。なんせこのレベルで最も気を付けなければいけないのが、魔物ではなく罠だからだ。魔物を狩りに行ったら罠でお亡くなりになるとかザラにある。
「罠を無視して魔物だけを倒せたらな~」
「そうですね」
因みに非公式組上位勢は一年以内に500レベに達する者もいる。パワーレベリングの制約がないのは勿論、安藤達のように大量の魔物に襲われる上に、魔物発生罠などを利用し過剰生産した魔物を狩りまくっているのだ。
「でもやっぱ安全が第一だな」
「危なそうなら逃げるのが一番です」
しかし安全度返しでなければ効率は良くならないので注意しよう。やりすぎた結果、逃げ場を失い殺気立った魔物たちになぶり殺しにされる非公式の犠牲者の数が結構多い。組合公式の年間死亡者数が許容範囲なのは彼らを含めてないからだ。
「こうやって雑談しながら倒せる程度の相手なら、何万倒そうがレベルが上がらないのが残念な所だ。レベル的に見ても50も差があったらほぼ経験値は入らない。100レベ差でも経験値が入る例外な俺たちでも軽く十万は必要になるし」
「レベル停滞の理由は、格上に挑まなくなるところですからね。計算上は、格上との一騎打ちで千五百体ほど倒せば500レベにはなるんですけど」
平均して格上を3体倒せばほぼ確実にレベルが上がる。ボス級になると一気に数レベ上げる事も可能だ。400レベぐらいまでは道中の魔物を狩りまくって速攻で上げて、そこから先は罠に気を付けながら複数の迷宮をめぐりボスを倒してを繰り返して行けばすぐに上がるだろう。
「迷宮攻略に罠の警戒、他の探索者との取り合いとか無しでの話な」
「それに仲間がいればその分効率落ちますしね」
まぁ現実は単独じゃ上手く行かない事が多かったり、他の探索者との魔物の取り合いや迷宮そのものの攻略に時間がかかったりと上手く行かない事が多く、なにより、そもそも格上の定義がマジの格上なのでやろうとする者はまずいない。
「では時間ですね」
「間に合って良かったな。丁度他の探索者たちもボス部屋に向かってきてるらしいぞ」
ボスが復活したと同時に、二人から探索者たちが向かってきていると言う報告が入る。どうやら間に合ったようだ。そうして吉泉は最後のボス戦へと挑みに行くのだった。
予定だと、80話台まで書けたら主人公たちがこの町から出れる。頑張ろう……




