巨大ナメクジ戦
田中が中に入ると情報通り巨大なナメクジがこちらを無感情に見つめていた。
・巨大ナメクジ
・LV320
・状態 大幅強化、殺意増幅
・鈍重LV3・溶解LV3・病魔LV3
「予想通りですね」
「一人で入るとこんなもんか」
確かに強いが、敵ではない。レベルも強化も200台前半の迷宮が出し切れる最大まで出ており、呪いブーストがかかっているが、それでも彼らの敵ではない。
「では後は頼みましたよ」
「さっさと終わらせるからよ」
攻撃を加えた後に外へと転移する吉泉にそう言い、のそのそと向かってくる軽トラより一回り大きい巨大ナメクジに剣を構えた。
「さてと、そう来るよな」
田中の様子を見て途中で止まり、震えだす。そしてあらゆるものを溶かし、病魔に蝕む粘液を飛ば巨大ナメクジ。
「俺はあいつ等みたいな力は持ってないからな」
バケツから水を投げたように広範囲に広がる粘液に、田中は素早く剣を振るう。すると粘液はその風圧で吹き飛び、田中は直線距離を突っ走る。
「切れないよな」
剣が巨大ナメクジにぶつかり、重い衝撃と共に剣が止まった。とにかく重い、防御に入られていないのにこの耐久と斬撃耐性。そしてねじ込まれた剣はピクリとも動かず、田中は剣を手放し距離を取る。
「なんせそれな」
遅いながらも的確に武器を破壊し追い詰めようと動き出した巨大ナメクジは、体の違和感に驚きながら戸惑う。
「塩の剣なんだよ。脱水症状でさっさとくたばってくれよな」
ナメクジの体は約85%が水分で、表面は水を通しやすい構造をしており、塩をかけると表面の食塩濃度が高くなる。
「現実のナメクジと似た構造で良かった。安く倒せるからな!」
田中はあらかじめ用意していた大量の塩を巨大ナメクジにぶちまける。すると浸透圧の作用で、巨大ナメクジの体内の水分が塩のほうへと移動しナメクジは脱水症状を起こして縮み、簡単に動けなくなる。
「殺虫剤を使おうかとも思ったが、こっちの方が安かったんでな」
虫系の魔物用の殺虫剤は効果は大きのだが随分と高い。なんせ基本的に強敵用ではなく、大量にいるザコの殲滅と強い個体の弱体化と言うのが使い方だからだ。だから数が少ないと採算が取れない。なのでこういう敵には格安で手に入れた大量の塩で漬け込んで……
「これで簡単に倒せる」
とは言え塩だけで倒せる訳ではないので、こうやって身動きが完全に取れなくなったところを仕留めるのだ。道具でも使わない限り派手な攻撃が撃てない田中にとってはこれぐらいしかできない。
「塩で動けないし防御力が下がった相手を楽々討伐ってな」
これに尽きると何もできなくなった巨大ナメクジに剣を突き立て止めを刺す。
「ハズレだな。それにあとで消えるんだろうが、やっぱ汚ねぇな」
魔石を拾い、靴についた粘液を払いながら出口に向かうのだった。




