シャッター街迷宮
シャッター街迷宮に入り、周囲を見渡す四人。
「本当にシャッター街そのままだな」
「ビル迷宮の時もそうだったが、できた場所の情報を元にしているだけある」
「ですね、であれがここの魔物ですか」
「うん、あのナメクジみたいなのがここの魔物だね」
少し行った先にいた人間サイズのナメクジを見た一同はすぐにステータスを確認した。
・大ナメクジ
・LV50
・鈍重LV1
・鈍重……鈍く重々しい動きになる。
「これが普通の迷宮か」
「いきなり200レベとか出てきませんよね」
「スキル持ちも疎らだし」
「スキルも微妙だね」
文句を吐きながらさっそく魔物狩りを始める四人。その光景はまさに一方的な殲滅であり、攻略法を無視して次々に倒され消えていく魔物たち。
「レベル差がありすぎて敵ではありませんね」
「300近い差があるからな。一対一じゃどんなスキルや異能を使ってもこの差は覆せないぞ」
本来の大ナメクジの攻略法は、動きの遅さを利用して攻撃を通すのが定番だ。同レベル帯で見ても非常に鈍間な大ナメクジは、多少タフで力強いだけの格好の的であった。
「レベル、スキル、装備、能力、全てにおいて圧倒しているからね」
「負ける要素がないな」
囲い込むわけでもなく、背後や側面取らずに真正面から斬り捨てられ、燃やされていく大ナメクジたちは、自分たちがやられた事にも気づかずに消えていく。
「ブーストないからドロップ品もしけてるな」
「まぁ仕方がないでしょう」
毎日山のようにドロップ品を集めていた四人からすると、普通の迷宮では全く満足できないようになっていた。
「げ、やっぱ鈍重は俺と相性悪いな。使い道考えないと」
「なんでも吸収するのは使い勝手が悪いですね」
鈍重を吸収した安藤の体が重くなる。これによって重厚感と安定性が増した代わりに、動きが鈍くなってしまったのだ。しかも任意発動ではなく、任意強化なので効果を弱めても常に速度低下の枷が付き纏う仕組みだ。
「数も少ないし、楽勝だな」
「はい、これなら他の探索者が来る前に終わりそうですね」
「復活含めて4,5時間ですよ。よくて三人が限界じゃ?」
「もうすぐ4時で、速い人だと6時ぐらいからボス攻略が始まる。一番乗りのふりをすれば大丈夫だろ」
数に関してもそうだ。拍子抜けするほど少なく感じる四人。普段からドロップ品が地面を埋め尽くすぐらいの殲滅を繰り広げているので、スカスカに見えるのだ。
「人出が少ない時間帯を調べれば、後は怪しまれないように迷宮に入るだけだからな」
「そもそも周回数なんてわかりませんからね。ボスを倒しても外に放り出される訳ではないので」
「出口に近い安全地帯に転移するだけだから」
「監視カメラじゃ確認できないしゲート記録にも引っかからない。楽なもんだ」
迷宮は外から来た全てを取り込むため、無暗に監視カメラやその他設置物を置くことが出来ない。対策はあるのだが、わざわざ迷宮内に何かを設置する事などまずない。それよりも一つしかない出入口を管理した方が楽でコスパがいいのだ。そのため迷宮内ですべて完結してしまう彼らの行動が中々露呈しないのだ。
「もうそろそろだな」
「30分もかかりませんでしたね」
「最短距離を爆走したらそうなるよ」
「そうだな。じゃとっとと終わらせようぜ」
通常3時間程度かかるはずの迷宮を30分もかからずに走り抜けた四人は、200レベに達した大ナメクジたちすらも瞬殺してボス部屋に辿り着いていた。
そして予定通り隠蔽を解き――
「おお、急に突き刺さるように」
「こんなにすぐに数が増えるもんなんですね」
「レベルも急激に上がり始めた」
「他の探索者が来るまでスキル取り放題だな」
田中と吉泉が予定通り先にボス部屋に入り、西田と安藤が300レベを上回りスキルレベルが2に達した大ナメクジたちの大軍を見ながらそう言うのだった。




