再度迷宮へ
朝になり、途中で道具を買いながら再度スライム迷宮に来ていた四人は、のそのそと動くスライムを見つけていた。
「さて、スライムからは何が手に入るのかな」
「再生とか分裂とかね?」
「酸液とかでは?」
「消化だろ」
そう話しながら安藤がスライムに近づき、刀を突き刺し一撃で仕留める。
「?」
「どうした?」
「力はみなぎりましたよ?」
「経験値も問題ないと思うけど?」
不思議そうな顔をする安藤に、田中が話しかける。
「ほんの少し力は流れ込んできたけど、スキルが手に入らなかった」
「ってことは?」
「ここらの魔物はスキル持ち出ない?」
「そうみたいですね」
基礎能力の吸収には成功したものの、スキルが手に入らなかったようだ。
「吸収に限界でもあるんでしょうか?」
「弱すぎて入ってこなかったのか、それとも持ってなかったのかわからないね」
「じゃ安藤。試しにボス部屋まで一人でここ攻略してみてくれないか?」
「わかった。やってみるわ」
検証するようにスライムを一匹一匹倒していくが、それらしいものが手に入らないようでボス部屋まで来ていた。
「手に入らなかったね」
「魔物ってスキル持ってないのか?」
「そんなことないと思いますけど」
「それらしいことはしてるからな」
人類がスキルや能力を使ってすることが、魔物にもできている。そのためスキルを持っていると思っていたようだが、ここまでで一切その傾向は見えない。
「数こなさなきゃダメなのか、確率かだと思うけど」
「にしても渋すぎるぞ。40は倒してるんだから」
「条件がわかりませんね」
「とりあえずボス倒すわ」
心配になってきたのか雰囲気はよくない。それを紛らわすようにボス部屋に入ると、前にいたスライムよりも一回り小さいスライムがいた。
「前にいた奴と違くないか?」
「少し小さい」
「まさかレアもの倒したから落ちたのかもな」
「まぁ今はそんなことより倒しましょうよ」
いつものように強化がいきわたり、安藤が加速で一気に距離を詰めてスライムを真っ二つに斬り裂く。
「は?」
その瞬間にスライムは二体に分かれて、安藤を取り込もうとした。それに焦った安藤は急いで逃げ出し、追撃を仕掛けるスライムに斬撃を放ち牽制を行う。
「戦い方が前と違う」
「まさか連続できたから対策取ってきたのか?」
「対策って、確かに迷宮は侵入者を観察してそれに合った行動を取ってくることは確認されてますけど、こんなあからさまのは初めてですよ」
「ここ俺たち以外は入ってこないから覚えてたんじゃね?」
小さくもなったし触手も使ってこないが、分裂するようになった。
そして――
「っ!?避けろ!」
何かの液体を飛ばし、四人がいた場所に降りかかる。すると地面が軽く溶けて煙が立っていた。
「やべぇじゃねぇか!」
「きますよ!」
突進をかます二体のスライムに分断された四人は、相手にしているスライムと対当する。
「どれだけ増えるかわからんから手が出せないな」
「まったくだ、くそっ」
「だったらこれでどうだ!」
「舐められたものです!」
田中と安藤がそう呟くと、西田と吉泉が攻撃を仕掛ける。するとスライムの片方が爆裂し、もう片方が燃え上がった。
「やったか?」
「おいそれフラグだ!」
煙が晴れると、半壊したスライムがプルプルと震えており、急激に膨張しだす。
「距離取りましょう!」
「いわんこっちゃない!」
そして逃げ出した瞬間に、スライムは爆発四散し酸液をまき散らした。幸い誰にも当たらずにスライムは消失する。
「危なかったですね」
「油断は禁物だな」
「今度は気を付けろよ、ホント」
「ごめん」
そして四人は、ドロップ品を拾い迷宮を出るのだった。