とある探索者たちの苦悩
とある迷宮の端に止められた車の中で項垂れる雷久保と清水は、元気なく資料を読んでいた。
「相手は500レベ越えで迷宮内にて交戦。死傷者多数で非公式組に逃げられる……か」
「あっちの方が急務で、調査の強化のため、こちらに寄こす救援は限定的か。真面な人員は期待できないぞ」
資料には、数人の人員追加と物資と金銭的支援が明記されており、健闘を祈る旨が書かれている。高レベルの応援を期待していた二人からすると、落胆するには十分すぎる内容であった。
「くっそ!非公式組め!どこに隠れてやがる!」
「すべての迷宮を回ったし、それでも怪しい奴は見なかった。他の連中からも問題なしの報告ばかり。監視カメラの映像もカードの登録履歴もなにもなしだ」
ガン!とハンドルを殴る雷久保。そして清水の言う通り、どこにも怪しさどころか異常がなかった。
「迷宮に潜りすぎてもう30レベも上がっちまったよ」
「選択でいるスキルもずいぶん増えたし」
週一ぐらいしか休んでおらず、それ以外は迷宮を回って調査と警備をしていた。それも朝一から深夜までずっとは働いている。
「誰かいないか?怪しい奴?」
「特に思いつかん。町中じゃ顔を出さないのは当然として、迷宮内でも見つからないのは想定外だし」
思考と記憶を巡らせる。最低でもこの一か月は何も問題は出ていない。組合の方にも情報はなく、不人気迷宮からも何の情報も得られていない。
「不人気迷宮に潜りやすいと聞いてそっちも見てみたが」
「何人かの探索者はいたが、収穫なしだったな」
不人気迷宮は本当に人が少ない。だが誰もいない訳ではないのだ。一応、攻略報酬のために来る探索者もおり、近いからと肩慣らしで来る者もいる。他にも異能との相性がいいだとか、自分だけの狩場としている者も少なくない。あくまで人気迷宮のように、とりあえずその迷宮に行っておけば安心と言う場所ではないだけだ。
「……そういやあのクビにされたあの四人はどうだ?」
「ああ、不人気迷宮でよく見かけるな。一人でいたり四人でいたり」
そこで不人気迷宮へとで入りする、同じ会社をクビにされた四人組を思い出す。時々すれ違う程度で殆ど面識がないが、まだ迷宮に潜っていたのかと思っているのだ。
「最近レベルを上げて来て喜んでたな。カメラの映像でも何度も迷宮は行ってるのはあったし」
「いつも夜遅くに組合に換金に来るらしいし、修業でもしてるんだろう」
誰にも気にされていないが、一応話は上がって来ている。夜遅くに換金に来るぐらい攻略を頑張っているようで、最近はいくつか迷宮を攻略して力を付けてきているらしい。だが成長速度もこれと言った目立った点もなく、行動としても癖はあるが注目するほどのものではない。
「異能の詳細的にもできる事は少なそうだし、怪しい点はないな」
「迷宮にも異常はないようだしな」
問題なしとの判断をした一番の理由は、彼らが入った前後での迷宮に異常が見られないからだ。何なら一緒に入ることもあったが、その時でさえ異常が見られなかった。勿論、監視カメラもカード履歴も特に問題ない。
「確実な証拠がなけりゃダメだからな。面倒な事に」
「怪しい奴を片っ端からは問題があるからな」
怪しい奴を尾行するぐらいならいいが、誰これ構わず捕まえる訳にはいかない。実際、迷宮内で変な事をする人が多いとはいえ、証拠なく捕まえれば賠償ものであり、より面倒な事になる。実質、証拠固めしてからか、迷宮内での現行犯以外で彼らを捉えるすべはない。
「紛らわしい奴が多すぎるんだよ、クソ……」
「わからなくもないがな」
利益の総取りは誰しもの夢である。自分の優位性を捨ててまで他人に協力するものは少ないだろう。
「……はぁ、まぁ地道にあぶり出すしかねぇな」
「イラついても仕方がないしな。明日は休みだし、今日は酒でも飲んで休もうぜ」
そう言って二人は換金のために組合に車を走らせるのだった。




