とある迷宮で
とあるどこかの薄暗い迷宮で、仮面をつけた二人の影が駆け抜ける。
「これからどうすっかな?」
「顔はバレてないとはいえ困りましたね」
広い広い薄暗い屋敷の中のような迷宮を駆け抜け、目ぼしいものを取りながら、仕掛けながら走る二人。
「いや困ったじゃすまない気がするんだが?生中継で映ってたぞ」
「いきなりあんな火事に巻き込まれるとは思いませんでしたし、しかもあんな一瞬のコマで組合が私たちを見つけ出すとも思ってませんでした。甘く見過ぎました、ねッ!」
宝箱がバケモノとなりいきなり襲いかかってくるも、一人が短剣を抜き瞬殺した。
「相変わらずだな」
「どうも、次来ますよ」
鎧や浮いた武器、幽霊のような魔物がうじゃうじゃと湧き出て来て二人に襲い掛かる。その前に出たもう一人は槍を振り、荒々しくだが確かな技量を持った槍術で薙ぎ払い殲滅を開始した。
「後ろ任せた!」
「わかってます!」
後ろからも同じく魔物が追いかけてくる。だが魔物たちは、足を取られたり、棚や物が倒れたり、シャンデリアが落ちたりと妨害され、その隙を的確に突かれて消えていく。
「推奨レベル430の迷宮とは言え、浅い階層の罠はやっぱ弱いですね」
「魔物は上等だがな!ん?」
楽しそうに湧き出続ける魔物を屠り続ける槍使いは、何かに気付いたようで短剣使いに話しかける。
「一瞬だが変な気配がしたぞ?」
「調べて見ますね……ああ、ここまで追ってきましたか、組合の連中は」
迷宮全体を探知した短剣使いは、見覚えのある気配に眉を顰める。それもそのはずで、相手は二人を追いかけてここまで来たのだ。しかも当然ながら迷宮内での大体の場所もバレている。
「あの時巻けたと思ったんだがな」
「正体がバレてないのが不幸中の幸いですがね」
そう言いながら魔物を蹴散らし、どんどん遠くへと進み、魔物のレベルもぐんぐん上がる。それでもなお優勢を保ち続ける二人の実力は確かなものであり、一撃も攻撃を受けずに、魔物にマトモな行動もさせずに素早く瞬殺していた。
「魔物のレベルは490か……そうだ!ここで切り札の一つでも使って完全に巻こうか!」
「そうですね!罠の具合いもちょうどよくなってきましたし、しつこいストーカーには消えてもらいましょう!」
最奥付近まで来た二人は、数が減り質が上がった魔物と罠が確認すると作戦を考える。数が減ったとは言え、流石にこのレベルの相手と連戦するのは骨が折れる。だからこそ、これを利用する様だ。
「ちょうどいい、よこせ」
異能を使い相手を品定めしていると、強めの鎧騎士型の魔物が現れ、一気に距離を詰めて剣を振り落として来た。だが寸前で鎧騎士の動きが止まり、カタカタと震えだす。
「流石は500に近いだけあるな。それだけだが」
そして少しの抵抗の後、剣を下ろした。
「相変わらず無茶苦茶ですね、その『横奪』って」
「お前の『窃取』の方が便利だろ」
そう言い振り返った瞬間、短剣使いの前にある床が抜け、呆気にとられた魔物たちが落とし穴の底にある剣山に突き刺さっていく。浮遊していた幽霊系の魔物はそれをものともしないが、ロウソクの火が激しく燃え上がり、それらもまた塵に返った。
「お前が罠を掠め取ってくれるお陰で、ずいぶん楽出来てんだぜ?」
「はは、ありがとうございますね」
気づかれてしまうが力が勝れば強引に奪い取れる異能と、気づかれていなければ掠め取れる異能。詳細は省くが、この二人の能力を簡潔に言うとこんな感じだ。流石は非公式組上位の、野良の強者と言ったところだろう。
「っと、お出ましか」
「準備は済んでますよ」
曲がり角から現れた三人の組合員を見てそう言う二人。
「見つけた!」
「情報を!」
「レベル500越えです!それと異能はッ!?」
現れた三人の組合員は突然の天井の崩れ、驚き飛び退く。
「見させねぇよ」
「油断も隙も無いですね」
二人は武器を構え、魔物を出す。それに合わせて組合員も戦闘態勢に入り、一気に殺伐とした雰囲気に入った。
「お前ら!」
「殺す気はなかったんだがな。だがここまで付きまとわれちまうんだったら」
「この通りですよ」
罠が発動し、二人の後ろの壁に飾ってあった剣が高速で射出される。それをギリギリで弾いた組合員の一人は吹き飛ばされ、それが合図かのようにその場にいた全員が動き出すのだった。




