『ビル迷宮』のボス
ボス部屋に入った四人は、赤いマネキンを見て即座にステータスを確認する。
・ファイティングマネキン
・LV320
・状態 特異個体、超強化、殺意爆増
・把握LV3・格闘者LV3・対異常LV3・対物理LV3
「格闘型か」
「一人ひり確実にやるつもりだな」
「誰を狙うんでしょうね」
「やってみればわかるよ」
マネキンは、全方位からの攻撃に対応できるようなたたずまいで――
「防ぎますか」
「じゃあこっちのどうだ!」
背後に転移した吉泉の斬撃を受け流し、真正面から向かって来た田中の刺突を紙一重で躱していた。そのまま流れで、強く握りしめた拳を田中の顔面に吸い込まれるように放たれる。
「ちっ!」
「安藤!」
「わかってる!」
転移した吉泉がマネキンの目の前に刀を置く。だがマネキンは、反射のように上体を反らし、それすらも軽々と躱してみせた。一瞬で距離を取った吉泉とマネキンの間を、安藤の影が駆け抜け、渾身の力を込めた斬撃が、空気を裂いて振り下ろされた。
「こいつっ!?」
金属のように硬い体には軽い傷しか浮かばず、大した力も吸収できないし状態異常も効き目が悪い。そして、わずかに動きが乱れたその瞬間――
「あぶねぇ!」
解き放たれた重々しい拳が、容赦なく襲いかかる。そこで急いで刀を戻し受け流し激しい攻防戦に入るが、腕に鈍い痺れが残り、劣勢に追い込まれた。
「喰らえよ、おらっ!」
これ以上の攻防はヤバいと感じた安藤は、手を突きだし、火炎の纏った斬撃の嵐を浴びせた。しかしそれは相手を少し怯ませただけで、それ以上の効果は見られない。
だがそれで十分だった。
「これで!」
西田の炎熱線をまともに浴び、マネキンは吹き飛んだ。だが、致命傷には至っていない。凹んだ装甲と、赤熱した体表がその証拠だった。
「ヤバいな。特に耐久」
「若干遅いですけど、それ以外はあっちの方が上ですか」
「格闘戦に関しては明らかだよ」
「かといって遠距離攻撃でもあれだし」
並みの攻撃では傷付かない装甲に、一撃一撃が重く、しかも技まで巧みときた。連携でどうにかなっているとは言え、非常にめんどくさかった。
「地熱操術で地面をマグマにして沈めるのは?」
「マグマの上走ってきそうだけど」
「落とし穴で落とせばいいですよ」
「地形操作もできるからそれで行くか」
定石中の定石――埋めて、質量で押し潰す。
向かってくるマネキンの足元をマグマに変え、すかさず落とし穴へと変形させる。熱と重力が同時に牙を剥き、暴れるマネキンを呑み込んだ。
「じゃあ一緒にやるぞ」
「はい分かってますよ」
その上から、二人がかりでマグマを流し込み、隙間を限界まで圧縮し続けた。ここからは呆気ないもので、数分も経たずに耐えきれなかったのか――マネキンの気配が忽然と消える。
同時に、報酬と入り口が静かに出現した。
「あんまり吸収できないから、こんな戦い方したくないんだけどな」
「危険を冒すぐらいなら安全策取りましょうよ」
「そうだぞ、命あっての賜物だ」
「だね」
そうして報酬を回収した四人は、迷宮から出るのだった。




