『高草迷宮』の探索
推奨レベル180の『高草迷宮』に来た西田は、その名の通り視界が悪いほど高く草の生えている草原に立っていた。
「話通り、これはめんどくさそう」
最低でも胸まである草むらがどこまでも続いている。見ての通り、この環境だけで凄く嫌われていると言うのがひしひしと伝わってくる仕様だ。
「10階層でしたっけ?広い代わりに階層が少ないの」
魔物の気配を感じながら階層全体を見やる。至る所でカサカサと動く草と、突き刺さるような殺意を感じつつ、炎を出そうとするが……
「これ燃え盛ったりしない?」
野焼きのようにならないか心配する西田。迷宮への過度なダメージは厳しく禁止されてるし、西田もそんな後々めんどくさくなる事はしたくない。今でさえ顔が知れれば指名手配ものなのに、これ以上心配事を増やすわけにはいかない。
「いや、確かある程度壊れる事が前提の迷宮もあるし、迷宮への一番のダメージは枠への攻撃だったはず」
障害物が多すぎて、それなりに壊れる事を許容している迷宮も少なくないし、迷宮への一番のダメージは、世界を取り仕切っている壁への攻撃だ。そこを意図的に破壊しなければ、普通の迷宮でも少々の破壊行為は無視される。
「薬草とか取れる採取とかもあるし、迷宮って案外頑丈なんだよね」
小規模とは言え生半可に世界を作っていないのでその通りである。まぁ採取とかもあるし、毎日採取物を全部を根こそぎ持っていくとかまでなら、迷宮からの当たりが少し強くなるだけで済む。
「そう言や昔に、迷宮の資源を根こそぎ持っていこうとして、迷宮が崩壊した事例があったらしいし。枠を壊さなきゃいいって、バカみたいに伐採とか建物の解体、土砂も持ち出して……」
因みに初期の頃は、無限に資源が取れるとか言って、重機を入れて何から何まで持っていこうとして、迷宮が崩壊した事があるので、それも禁止事項だ。そしていつしかドロップ品と採取物以外持ち出せないように対策されていた。まぁ抜け道はあるが危険なので勿論禁止事項だ。
「まぁいいか、エリア全体を壊すようなことしなきゃ問題ないはずだけど」
地面に手と付き、持ち上げるように一本のマグマのように赤熱した剣を引っ張り出す。
「折角手に入れた力だから、有効活用しなきゃね」
地熱操術を使い剣を生み出した西田は、草むらに入った瞬間に襲い掛かって来た植物系の魔物を切り燃やす。
「虫系と植物系、偶に蛇とかだったね」
消えゆく魔物をチラリと確認した。こいつは「斬草」背の高い草むらに擬態しながら獲物を待ち伏せる、探索者の嫌われ者。その体はしなやかなで切味のある葉で形成されており、目を凝らさないとまるでただの草原の一部にしか見えない陰湿さを持つ。
「で、デカいカマキリと」
そしてこの迷宮のメイン戦力「大蟷螂」が草を描き分けて現れる。
「速い!」
背の低い人間ほどのサイズのカマキリが、一瞬にして距離を詰めて鎌を振るう。同レベル以下であれば初見殺し扱いされるような斬撃だが、今の西田の敵ではなく。
「危ないね」
滑らかに素通りし、カマキリはバラけ、燃え尽きる。
「差がありすぎる。高レベル帯の人たちの強さが分かったよ」
高レベルによる高い身体能力と、圧倒的スキルの差により、まるで敵にならない。過剰なレベル差は、種族の壁をも超えてしまういい例だ。
「さて、罠の方にも気を付けて攻略しよう」
飛び掛かって来た蛇を切り落とし、ドロップを回収しながら、攻略を進めるのだった。




