これからの作戦
確認作業が終わった四人は、これからのことについて考えていた。
「さて、目立たないことは決まったが、どうやって強くなるかだな」
「下手に動けば目立つからな。当たり障りないようにしないと」
「スキルも取得できるようになったし、どうします?」
「まずは隠蔽とか偽装とかですね」
基本世の中に出回る情報は自己申告制とはいえ、他人に見られていれば隠蔽努力も無駄になる。そのため他人を欺くスキルや行動が必要になるだろう。
「とりあえず高価なもんは取引出来ないな。ま、俺の等価交換があるから問題ないが」
「迷宮も人気のなさそうな場所を選ばないと」
「それだとこっちの出番だな。迷宮周回で吸収しまくってやるよ」
「転移で試したいことがあるから私も賛成です」
目立つ行動を挙げて、こうしようああしようと話し合う四人。一般常識を弁え、さらにはネットで補強された知識が後押しして、話し合いはスムーズに進む。それは非常に楽し気で、これからの面白おかしい人生を夢見ているようであった。
「ま、こんなもんだろ。あとはその場その場の判断ってことで」
「そうですね。では次にスキルを決めましょう」
吉泉がそういうと、四人の脳内にスキル一覧が現れる。
「隠蔽と偽装どっち取ります?」
「どっちも取った方がいいだろ。俺が隠蔽取るわ」
「対異常ってスキル取りたいんだけどみんなある?」
「こっちはある。で、自然治癒取りたいんだが」
スキルとは、できることできそうなことの補助機能なので、何気ない仕草から得意技、ファンタジーじみたものまで適性は意外に広い。異能ほど無法なものではないが、種族や技術の範疇だと何でも補助してくれる便利なものだ。特にレベルが上がるとその範囲も増え、経験や訓練をすることによっても増える。
「よし、じゃ俺は隠蔽取るわ」
「私は偽装の方を」
「僕は対異常で」
「こっちは自然治癒だな」
そういい四人はスキルを取得する。そして解析板でステータスを確認した。
「お、マジで入ってやがる」
「それにスキルが統合進化してる」
「これだけ早い段階でできるとは」
「こりゃこれからも期待大だな」
スキルの統合進化とは、特定のスキルを集めることにより、より強力で使い勝手のいいスキルになることを言う。今回は、隠蔽と偽装が統合進化し虚偽に、自然治癒と対異常がなくなり健康体になっていた。
「スキルの組み合わせは難しいな。パターンが多すぎて」
「気が付いたらなってたとか、言わない人も多いですからね」
「当たり障りのないもんとか強力なのは世に出回ってるけどね」
「そもそも自分の強みを他人に教えるって、弱点見せたり商売しにくくなるだけだろ」
異能はさておき、5個程度のスキルは比較的簡単に手に入るので、頑張れば再現できるものも多い。それは全体的に見ればよいことなのかもしれないが、新たに見つけたスキルの報告は競争の激化の事を考えると面倒しかなく、そもそもある程度の情報は出回っているのも相まって基本秘匿しておくのが当たり前になっている。
「確かに強くていいものだ。あと身体強化がなくならなくてよかった」
「統合進化は完全に効果はなくならないにしても、新しいスキルに偏るからね。再取得で重ね掛けできると言っても、貴重な枠を削るのは考えものだしね」
「基礎だけあって派生は多いですからね。そっちを固めようとして定期的に再取得する人もいるらしいですし」
三人がそう不満を漏らしていると、安藤がニヤけながらとあることを言った。
「おいおい、忘れんなよ。俺はスキルを吸収できるんだぞ。手ごろな迷宮で回収してくりゃいいだろ」
「おお、そうだった。こっちの驚きで忘れてたわ」
「そうですね。でしたらもしかしたら、派生スキルのコンプリートも夢でないかもしれません」
「これからも一緒に頑張って行こう」
そうしてすべての準備が終わった四人は、祝いとして買ってきていた半額惣菜やビールを飲み食いしながら明日に備えるのだった。