サクッと周回
邪魔者のいない『廃墟迷宮』の内部で、轟音と魔物の悲鳴が響く。
「次で最後か!」
「そうですね!あと少しでボスも復活するでしょう!」
田中と吉泉が、前衛で戦う西田と安藤の討ちそびれた魔物を倒しながら雑談をしていた。
「安藤は相変わらずだな」
「そうですね」
安藤は言わずもがなスキル獲得のために、高速で魔物を狩りまくっており、出くわした殆どの魔物が行動する間もなく殲滅されている。まさに無双劇と言っても過言ではない。
「にしても西田も強くなったな」
「一応スキルを使い熟せる程度には戦いたいって話ですからね」
西田は後衛職だが、前衛も最低限はこなせるようになりたい、スキルに振り回されるのは流石にダメだと、堅実に剣を振るって魔物たちを的確に屠って経験を積んでいた。
「スキルも強引に上げたものじゃ、使い熟してる奴には負けるからな」
「経験があった方がいいですからね」
どれだけ凄い動きが取れても、スキルの内は仮初のものでしかない。それを自分の中に落とし込まなければ身に入らないし、いざと言う時に反応が遅れて隙が突かれやすくなる。
「格下だけならそれいいんだが、俺たちはそうも言ってらねぇし」
「格上が基本ですからね」
武器の扱いと動きの補正だけでは、突ける隙などいくらでもあるのが上位勢たちの基本。どれだけ凄かろうが、的確で美しい剣技だけでは真の強者には敵わない。実戦は教科書通りにはならないのだ。
「スキル補正で成長速度が凄まじいいが、さてこれでどれだけ上位に食い込めるか」
「魔物相手であれば、余程の差がなければ問題ないでしょうね、安全マージン取っておけばですが」
人間相手であれば、技術面に不安が付きものだが、魔物面であればそこまで気にしていない。技術面に振り切れた魔物もいるにはいるが、そんな危険は高レベル帯の話だ。今気にするほどの事ではない。
「それにこっちには複数のスキルがあります。単品でダメでも、合わせればどうとでもなるでしょう」
「そもそも相手の得意分野で戦ってやる必要はないからな」
彼らのメインは手数だ。隙や弱点を徹底的になくし、安定的に有利な立場から相手を叩く。なので得意分野を除けばスキルを極める必要などなく、振り回されない程度に鍛えておけば大体解決する。数は力とはこのことだ。
「安藤のお陰でスキルに関してはすでに上位勢を踏み越えて、上澄みに片足突っ込んでいるし」
「あとは地力を鍛えるだけですねっと、行けそうですよ」
そう話している間に、ボス部屋の気配が変わり、復活したのが感じ取れた。
「そうみたいだな。お~い!もう復活したぞ!」
「ちょっと!あとちょっと待ってくれ!そうしたら一万匹超えられるんだ!」
「もう少しでレベルも300になるんだ!ちょっとでいいからお願い!」
田中が声をかけるが、二人は迫りくる魔物の群れに夢中で、タンマをかける。
だが――
「いや行くぞ!これで最後なんだ!さっさと帰って寝たい!」
「組合の事もありますからね!早くしますよ!」
朝っぱらから飽きもせずに、ぶっ続けに戦い続けて来たので多少の疲れも溜まっているし、組合の事もある。これ以上は時間をかけていられないと、押し押せる魔物たちを殲滅し、文句を言う二人をボス部屋に引きずるのだった。




