荒地迷宮の最終周回
ボスの抵抗虚しく、あっけなく最終周回に入った四人は、目の前に佇む巨大なゴーレムを見て呆然としていた。
「最後の最後でこれかよ……」
「デカすぎません?」
「巨大ゴーレムとか聞いてない」
「ちょっと苦労しそうだな」
10メートルを超えるだろう大きさの巨大ゴーレムと
・グランドゴーレム
・LV300
・状態 変異個体、暴走個体、殺意増幅
・把握LV3・地熱操術LV3、対物理LV3・復元LV3
なんかめっちゃ強そうなステータスだった。
「なんか攻撃準備してません?」
「まさか……マジ?」
「先手必勝だ!西田!」
「はい!」
攻撃はしてこないが、何か溜め始めたゴーレム。それに危機感を覚えた田中が、西田に炎熱線を撃つように指示する。それにより放たれる最高火力の炎熱線は、ゴーレムと背景を通過し、大爆発が起きた。
「今までこれですぐ終わってたのに……」
「これはあんまりですよ……」
「装甲少し弾けただけ?嘘だろ……」
「それにすぐに再生だと!?てか次来るぞ!」
煙の中から現れたのは、表面に傷が入り少し溶けた部分を復元させるゴーレムだった。そして頭部の部分に赤い輝きが溜まり、四人の元へ放たれる。
「怪獣対戦かよ!」
「レベルが上がってるとは言えこれはキツイわ!」
「無茶苦茶です!」
「でも倒さなきゃダメだよ!」
田中のお陰で辛うじて反応できた三人は、爆炎の中から飛び出し一斉に動き出す。それをわかっていたかのように手を前に出し、接近してくる西田以外の三人に高熱線を連射し始めた。
「あっつ!」
「連射とか!」
「やめていただきたい!」
吉泉が腕の上に飛び乗り、ピッケルを振るう。それにより腕が削れてヒビが入った。
だが――
「うわっ!」
腕の石部分が蠢き、吉泉を捉えて握りつぶそうとブアッと広がる。それに驚いた吉泉は、転移で別の場所に移動し、次々にゴーレムの体を破壊していく。
「こっちにもくんのかよ!」
「そうみたいだな!」
吉泉がそうしている間に、田中と安藤が近づこうとするが、ボス部屋すべての地面が海面のように揺れ動き、地上にいる三人に地形操作による刺突や打撃と言った攻撃を繰り出し続けていた。
「こりゃレイドボスじゃねえか!」
「ボスな事には変わりない!」
だが数が多いだけで個々の耐久はそうでもなく、ピッケルで打ち砕ける程度だ。それを見極めた二人は、正面突破のごとく次々に障害を破壊し、接近を試みる。
「増えんな!」
「まったくだ!」
地面から腕が生え、二人は急いで回避する。すると複数体のゴーレムたちが二人を囲んでおり、攻撃を仕掛けて来た。
(こいつら数だけで脆いし弱い。熱線持ちは頑丈だが動かねえから簡単にキャンセルできる。問題ないな。行ってこい!安藤!」
「わかってら!」
突っ切る安藤を止めようと襲い掛かるゴーレムだが、動きが遅くすり抜けられる。そこで後ろから熱線を撃とうとするゴーレム一行だが、田中が片っ端から破壊しまわっていた。
「攻撃が弱まったな!処理能力不足か!?」
抵抗はあるものの、先程ほどではない。それにより簡単に足元までこれた安藤は、さっそくピッケルで足元を削り破壊する。それから逃げようと後方へ下がるそぶりを見せるが、遅すぎてまったく意味をなしていない。
「要塞ゴーレムに名前変えた方がいいんじゃねぇか!?」
高い攻撃力と耐久、凄まじいい復元力により耐えながら迎撃をするゴーレムだが、何もできずに削られ続ける。そこに西田の炎熱線が頭部に当たり、溶けながら弾け飛ぶ。
「これでも死なないんだ。なら撃ちまくるまで!」
三人に翻弄されてまともに行動できていないゴーレムに、最大火力の炎熱線を連射することにした西田は、集中力を高め震える杖を握りしめて、ゴーレム目掛けて振る。すると赤い線が何度もゴーレムの体をなぞり爆発が炸裂した。
「あっつ!?」
「これはっ!?」
「逃げろ!」
「みんな!」
そんな感じで削っていると、ゴーレムの体が赤くなり始め、動きの機敏さが増す。同時にゴーレムを中心に煙と蒸機が混じったようなものが噴出し、空間全体の気温が上がり始めた。この空間が有毒ガスに染まるのも時間の問題だろう。
「近づけない!」
「だがジリ貧だろうよ!」
「だからってこれはな!」
逃げる三人だが、西田の攻撃を受けながら追いかけてくるゴーレムは、自身の消耗も考えずに熱線をばら撒いて追いかけてくる。更に地形を大きく操り、津波のようにマグマ寸前と化した大地を押し流して来ていた。
「自爆特攻とかマジ勘弁だぞ!」
「何か案ありませんか!?」
「俺に任せろ!西田こっちにこい!」
「はい!」
煙の中、逃げながら合流した四人は、安藤に言われるがまま一か所に集まり、安藤と西田に強化を流し込む。すると地形を利用したドームが四人を包み込み、地面の中へと身を隠した。
「で、支えながら待つ。これでダメならペチャンコか蒸し焼きだ。諦めるしかねぇ」
「成程、あいつが死ぬのは時間の問題だから、待てばいいんだな」
「安藤さんの念力とか吸収した地熱操術とかで地力の差をカバーしてるんですね」
「にしても驚いたよ。操術系は誰でも取れると思ってたのに、才能無いと取れないなんて」
あらゆる手段を用いて隠れた四人を、頑張って探し回るゴーレムの気配を感じながら引きこもる四人は、操術に関して話していた。
「まぁ異能と同列らしいのは本当だったのか。まさかと思ってたけど、これは少し考えを改めなきゃダメだな」
「従来の考え方が変わっちゃいますね。まぁ公表なんて無謀なことしませんが」
「スキルオーブで覚えられるのってまさか、才能の強制付与なんですかね?」
「その可能性が高いな。マジで何なんだろうな、ステータスとかそれ関係って」
どこかで手に入る前提で話してたのだが、どうやら異能経由では限界があるようだ。現に西田と安藤しか取れていない。
「そうだなっと、終わったみたいだ」
「熱いね」
「そりゃね。迷宮壊す勢いみたいだし」
「いや~随分と恨まれてるもんだ」
しばらく経ち、ゴーレムの気配が弱々しくなったのを見計らって外へと出る。そこは、無茶苦茶な焼け野原となっており、小さくボロボロとなったゴーレムが四人を見つけて、こちらに来ようと足を向ける。
「もう終わりだな」
「そうですね」
田中がそう言うと、ゴーレムの足は崩れ地面に膝と手を着く。それでも諦めずに手を向けて熱線を撃とうとしていたが……
「西田」
「はい、分かってますよ」
西田の炎熱線に当てられ、爆発四散し消滅したのだった。




