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現代迷宮は世知辛い  作者: バトルマニア
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レイドボスって奴ですか?


 小さな人形は、中心にいる四人を見つめていた。その目は人形らしくなく、若干感情が入っているかのように見える。だが話しかけてくることも、先手を打ってくるわけでもなかった。


「見た目は可愛らしい金髪美少女の人形だな」

「でもレベルがヤバいぞ」

「レベルだけではないでしょ、あれは」

「全乗せとか勘弁してよ」


 四人が見た鑑定内容は以下の通りだ。


・殺戮人形

・LV300

・状態 エリアボス、レイドボス、変異個体、暴走個体

・戦闘術LV3・強靭LV3、念力LV3、対現象LV3


「戦闘術か。あれに全部詰まってんだろうな」

「戦闘者じゃないだけマシだな」

「絶望的な事には変わりありませんけどね」

「何もしてこないけど、どうする?」


 周囲に何かしかけている様子はない。それどころか不気味なほど魔物も罠もなくなっていた。まるでこの階層にいるのは、この人形と自分たちだけになったようだ。


「逃げられないし、倒すしかないだろ」

「倒せるんでしょうかね?」

「さぁ?瞬殺はないだろうけど、普通に負けそうだな」

「このままだとですよね?」


 そう言うと、四人は戦闘態勢に入りながら更に強化を強める。それに反応した殺戮人形は、まるで散歩をするかのように四人に向かって足を踏み出し――



「「「「ッ!?」」」」


 凄まじい速度で接近してきた。それに慌てて対応したのが、田中だ。


「ぐっ!?こいつ!なんて馬鹿力してやがるッ!?」


 振られ鉈を剣で受け止め、甲高い音と衝撃が広がる。そしてジリジリと最大強化状態の田中を押し斬ろうと、力を込め続けていた。


「くたばれ!」


 安藤が真横から刀を振るう。だが何かに止められ、ピタリと刀が……安藤自身が動かなくなった。そして鈍い音を立てながら、安藤の体が悲鳴を上げ始める。


「こいつッ!」

「安藤さんを捩じ切る気ですか!」


 西田は炎剣を出し、吉泉と共に斬りかかるものの、炎剣は掻き消え、四人とも吹き飛ばされていた。


「流石に四人は受けきれないか!」

「狂骨がこんなところで役立つなんてな!」

「でも脅威ですよ!念力があんなに強いなんて!」

「あれじゃ届ないか!」


 安藤が隙を突いて腕から骨で刺突を放っていた。それにより四人は吹き飛ばされたが、殺戮人形は無傷だ。それどころか、この迷宮では小物を投げつけてくるのが精々の念力が、人の体を捩じ切る程度には強化されている事に驚きだった。


「いつも通りで行くぞ!」


 田中の掛け声と全員が返事をして、田中と安藤が殺戮人形に向かって行く。その速度はまさに超人であり、瞬く間に殺戮人形との距離を詰めて剣が振られた。だが殺戮人形は、鉈を構えジャンプして斬撃を避け、田中に迫る。


「させるか!」


 それを邪魔するように安藤が素早く割り込み、空中にいる殺戮人形を切り落とそうとしたが


「念力ですか!」


 念力で軌道を変えて回避していた。だがその隙を吉泉は見逃さず、転移で即座に斬り飛ばす。


「消し飛べ!」


 そして最後に、体勢を立て直そうとする殺戮人形に容赦なく炎熱線を浴びせ大爆発が起きていた。




「どうだやったか?」

「元が力も耐久性低い魔物ですからね。まぁ前者は原型がないほど強かったですが、流石にあれを受ければ……」


 煙が少しづつ晴れていき、赤熱した地面と少し焦げた殺戮人形が姿を現し始める。


「西田ッ!?」


 そして煙が消し飛び、今までにない速度で後方にいた西田を狙いにかかった。それに反応した安藤が割り込むが、鉈の一撃を受けるだけで刀に強い衝撃が響く。


(こ、こいつ!笑ってやがるのか!)


 激しい剣戟の中、殺戮人形の表情を見た安藤は驚いていた。殺戮人形は笑っていたのだ。その笑いは、一枚の絵画になる程に美しく、そしてどこまでも歪んでいた。


 まるで抵抗する格下をいたぶるのを楽しむように、これから起こる殺戮劇を待ち望むのかのようにだ。だが安藤含む四人には関係ない。目の前の脅威を排除するために全力で挑むだけだ。



「舐めんな!」


 安藤の念力で一瞬動きが鈍った殺戮人形は、炎熱線に直撃する。それにより吹き飛び、建物に突っ込み連射される炎熱線の餌食と化す。


「倒せてねぇだろうな」

「一時的に動きが止まってるだけですね」

「安藤さんしかあいつを倒せませんよ」

「わかってるさ」


 爆発炎上する光景を眺め、四人はそう言った。現状、安藤しか殺戮人形にまともに追いつけてない。殺戮人形も安藤の攻撃は回避を選択し続けていることから、安藤を危険視していることは明白だ。恐らく吸収を警戒しているのだろう。



「てか、流石に、キツイ……」


 全力で攻撃をし続けてきた西田が体力を切れで悲鳴を上げ、殺戮人形は念力で炎を消し飛ばし周囲の瓦礫を手当たり次第に持ち上げ四人に向けて投げつける。それにより戦場は複雑化し、殺戮人形は小さな体を生かして隙間を縫って素早く攻撃を仕掛けた。


「くっ!これはキツイ!」

「転移厳しいですよ!」

「西田は休んどけ!俺たちがやっておく!」


 四人は集まって西田を守りつつどうにか攻撃を防ぎきっているが、どれもギリギリだ。なんせ一撃防ぐだけで腕が軽く痺れるのだ。これでは反撃もままならない。


「なら……ッ!」


「「「安藤!!」」」


 安藤は鉈の攻撃を腕で受ける。それにより切り落とされそうになる腕だが、それに耐え狂骨で骨を変形させて、殺戮人形の傷や関節部分に強引に自身の骨をねじ込ませた。そしてそのまま倒れ込むように殺戮人形を地面に押さえつける。


「田中!金槌出せ!とびっきり頑丈なの!」

「お、おう!」


 急いで金槌を取り出す田中は、必死に抵抗する殺戮人形を抑え込んでいる安藤に渡す。すると安藤は、金槌で殺戮人形をボコボコに殴り始めた。それにより殺戮人形は少しづつ歪んでいき力も落ち始めるが、安藤は構わず殴り続ける。


「安藤さんが力を取り込んでますよ!」

「ああ、これならいける!」

「私たちは、支援術で回復と強化をしましょう!」


 殺戮人形は弱体化に対する対策をしているため、あまり効果はない。良くて安藤のスキルが嫌がらせになる程度だ。だったらと三人は安藤に強化と回復を送り続ける。


「くたばれッ――!!」


 それが後押しになったのか、猛攻は更に強くなり、殺戮人形の頭部が砕け散ったのだった。



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