能力確認
まるで何事もなかったかのように帰った四人は、とりあえず拠点であるアパートに帰って来ていた。
「何もなかったな」
「ええ、安心しました」
「解析とかされてたら終わってたよ」
「ほんとほんと」
日本国も含め世界中に迷宮ができてから、それに対応するように各国ではギルドやら探索者組合なるものができていた。正式に迷宮に潜るにはその組織を利用するしかなく、それ以外だと重罪として扱われる。理由は迷宮とは危険地帯であり、同時に資源の宝庫のような場所であるためである。それを一括に管理するのが探索者組合というわけだ。これのおかげで税金の処理や物の売買が格段にしやすくなり、国も管理がしやすくなったので両者得のある仕組みなのだ。
「さてそんなことより、さっそく見ていこうか」
「じゃまずは俺のだ」
そう言うと田中が解析板をみんなに見せる。
等価交換……LV1 存在するものを等価交換できる。
LV2 交換物を保存できる。
LV3 能力の等価交換ができる。
「レベル上げれば大抵のことがどうにかなるって話だが、本当だったんだな」
「どうなったんだ?」
「取引の範囲が広がった。今までは金で交換していたが、それ以外でも価値さえあれば何でも取引可能だと。要は一旦金を通す必要がなくなった。あと今までよりも正確に物の価値がわかるようになった気がする。まぁそのものの詳細は分からないがな」
レベルが上がると、全体的な性能が上昇し、新しい機能が追加される。田中の場合だと、取引の範囲が広がり物の価値の判別である。
「それと今回手に入った保存機能と……あとこれは?」
「ステータスをいじくることができるらしい。今試してみたが、100レベ以上ないと使えないみたいだ」
「でも保存だけでもスゲーよ。店に行って安いもの片っ端から等価交換して、それをため込めるんだから」
「だな。一度でも出したら終わりとはいえ、異能で買い込んだものは保管庫みたいに劣化せずに保存できるんだからな」
物をしまい込むスキルや異能は色々あるが、その中でも保管庫と言われている異能は、無制限にものをしまえ、更にはしまった際の状態を永久的に維持できる異能である。田中はそれに似た異能を得ていた。まぁ本質は違うんだけどね。
「次は私のですね」
そう言って吉泉が解析板をみんなに見せた。
転移……LV1 体力を消費して転移をする。
LV2 障害物を無視して転移できる。
LV3 無生物の転移ができるようになる。
「おお、壁のすり抜けに物の転移か。なかなか強力だな」
「体力の消耗量も減りましたし、今まで以上に役立てるようになりました」
今までは消耗を気にしてここぞという場面でしか使えなかった転移が、消耗が減りある程度自由度が増していた。これで移動はさておき探索で困ることはなくなるだろう。
「どれぐらい減ったんだ?それと物の転移はどこまでできるかわかるか?」
「感覚的には今までがいきなり全力疾走してたのが、余裕をもっての小走り程度になりましたよ。物は私が持ち上げられる物だけで、それを投げた程度の消耗ですね」
「妨害し放題だね」
転移にゆとりができただけでも強力なのに、敵の周囲に物をばら撒けるのだから弱いわけがない。
「僕のも便利になったよ」
そう言うと西田が解析板をみんなに見せる。
共有……LV1 外部影響を共有する。
LV2 再分配できる。
LV3 良好状態を共有する。
「みんなの都合のいい状態だけを共有できるようになった。今までは強化だけだったけど、一部のスキルとか回復が全部調整した状態で共有されている感じの、いわゆる重ね掛け?って状態になってる。経験値に関してはそれじゃなくて、均等化されてる感じだよ。あと消耗とか負傷は共有されないけど外部からの状態異常は残ったよ。でもそっちはスキルか道具でどうにかなると思う」
「え?これが一番強くね?てかすごくね?」
自身のを見せる前にそう驚く安藤。
「状態異常は健在ですか。まぁ言った通り対策できるのでよしとしましょう。それに安藤さんにはすごい恩恵ですね」
「まぁそれはな。それにそれだけじゃない、吉泉もだ。安藤の得た体力吸収による回復で、転移を気にせず使えるようになるかもしれねぇ」
「単純に早くレベルが上がると考えれば田中も……というか全員に理があるな。ありがとうな吉泉」
「どういたしまして……と言いたいところだけど、それだけじゃないんだ」
え?と呆ける三人に、自信満々に続きを話す西田。
「なんと言うか、適性もスキルも増えると思う。そういうところも共有してるから」
「は?」
「それって……」
「スキル取り放題?」
適性の被っているスキルを取得すれば、皆一斉にスキルを取得できる。おまけに持っていないスキルも適性が手に入る。それはとんでもないアドバンテージで、実質的に通常の人よりも強力で多くのスキルを取得できるということだ。
「まぁとりあえず、最後はこっちだな」
そう言って安藤が解析板をみんなに見せた。
吸収……LV1 体力などを吸収する。
LV2 強化などを吸収する。
LV3 能力などを吸収する。
「体力と強化、能力とかを吸収できるようになった。能力吸収に関しては、基礎能力がほとんどだな。異能も運が良ければ手に入るかもしれないけど、何度倒せばいいのやらって感じだ。全体的には多少効果は上がったとはいえ相変わらず接触時間とかダメージ次第だけど、なくなるまで何度でも使えるらしい」
「お前も大概だな」
「魔物から力奪うとか強すぎ」
「しかもそれも共有できるんですね」
安藤本人は何でも吸収できるが、共有者たちは特殊スキルや異能は共有できない。これは共有者が異能者本人と違い、受け入れる能力がないからである。しかしそれでも強力なものだったが……
「そうだが……残念なことに、さらにレベルが上がりにくくなった」
「うん、まぁそれはね」
「まぁ経験値がそっちに回ってんだから同然だろうな」
「そうですね」
本来レベル上げに使われるエネルギーを吸収で割いているため、異能の効果が上がる度にレベルが上がりにくくなる。また吸収関係は経験値と同じ扱いになるので、共有によりこれも均等化されて今まで以上に魔物を倒さなければいけなくなっていた。とはいえ共有で他の三人から経験値が送られてくることを考えれば大したことではない。
「にしてもマジか。ますます隠しとかなきゃヤバくなってきたな」
「本来3、400レベが到達するスキルレベルですからね。バレたら大変ですよ」
「異能も強力だし、適正レベルになっても実力は隠しておくことにしたほうがいいね」
「中堅程度とはいえ本職が数年かけてたどり着く領域だからな。黙っとくのが吉だ」
細かい内容まで調べつくした四人は、再度そう思い
「あ、ちゃんと解析板の金支払ってくれよ」
「「「あっ、はい……」」」
田中に支払いを済ませるのだった。