廃墟迷宮
次の日、さっそく別の迷宮に行くことにした四人は、目的の迷宮へと足を踏み入れようとしていた。
「これが民家の廃墟にできた迷宮か」
「あの話がホントならシュールだな」
「まぁ豪邸って程じゃないけど大きめの民家だったんでしょうね」
「だからって、そんな生成のされ方するか?普通大きくなったりするもんだろ?」
そう言って中へと入った四人が見たのは、曇のせいで少し薄暗い豪邸っぽい廃墟が規則正しく並ぶ迷宮内部だった。そして何がシュールかと言うと、すべて同じ家だという事だ。
「こりゃ嫌われるわけだな。攻略しずらい」
「見晴らしが悪いし、奥はもっとごちゃごちゃしてて何が何だかって感じらしい。勘弁してほしいね」
「魔物に不意突かれるとか最悪だぞ」
「ここは10階層で、奥に行けば行くほど建物とか配置物が乱雑になるみたいですね」
嫌な顔をする四人。安藤が言ったように魔物に不意を突かれやすかったり、周囲を把握しずらい迷宮はすこぶる嫌われている。障害物が多いなんてどこに罠があるかわからないし、単純に戦闘での倒壊なども考えなければいけない。
「レベリングには向いてそうにないな」
「それこそ更地にでもしないと使い勝手が悪すぎるぞ」
「まぁそうしても時間が経ては元に戻るんでしょうけどね」
「その前に迷宮が暴走すると思うよ」
話しながら建物に入り探索する四人だが、意外にもすぐには魔物は襲い掛かってこない。
「感じはするんですけどね」
「狭いからどう攻めようか考えてるのかも」
「植物系はその場から動けないし、空にいたカラスは屋内に入ってこないからな」
「屋根乗って移動しようとしたらカラスが襲ってくるとか嫌すぎるわ」
この迷宮は、庭や植木鉢などにある植物系の魔物、外を飛び回っているカラスっぽい鳥の魔物、室内を動き回るぬいぐるみや人形の魔物。そしてなぜかどこにでもいる見えにくいカメレオンだ。
「おっ!いたいた。鑑定っと」
「ん?レベルが高い?でもスキルも目立ったものはありませんね」
「ぬいぐるみと人形みたいですね。大きさも市販で売ってそうなぐらいの」
「武器は針とか包丁とか鉈とかで、ビジュアルの割には殺意高いな。まぁ当然なんだが」
少し離れた曲がり角から五体ほどの人形たちが現れ、田中たちを見た瞬間に襲い掛かってくる。
「ほいっと!」
「それっ!」
田中と安藤が即座に前線に出て、向かってきた始めの三体をささっと斬り飛ばし倒す。
「させませんよ」
「そうだよ」
そして後ろで何かしようとしていた残り二体の人形を、吉泉が転移で背後を取って一体を始末し、熱線が残り一体を貫いて燃え上がり消滅した。
「大したことありませんね」
「人形系は基礎能力に欠けるからな。その分疲れないし欠損も無視して攻撃してくるが、一撃で倒せばこの程度だ」
「スキル構成とかで強くなる特殊系だから、下位の迷宮じゃ大したことないんだよ」
「割のいい魔物ってわけでもないがな」
スキルなしでも元から持っていれば特殊なことはできる。そして残念なことに、表示されないほど弱い力は吸収ではあまり取り込めない。初期の安藤では、取り込んだ能力をスキルでブーストしないと、まともに使うどころか認識すらできないのだ。
「まさかここは質重視の迷宮か?」
「そうかもしれませんね」
「数が少ないけど、レベルは高いと」
「そうなってくると、罠のレベル上がってるかも?」
質重視の迷宮は何かと面倒なので敬遠されがちだ。なぜなら、基礎レベルだけではなく、スキルの方もちゃんと揃えて行かなければ危ないからである。
「攻略回数の低い迷宮は情報が少ないな」
「ここは数が少ない代わりにレベルが高いようですね」
「その分報酬はいいんだろうけど……」
「宝箱もあるかもな。だが不意を突かれやすいぞっと、休ませてくれる暇はなさそうだ」
困ったなと話している隙に、四人の気配を感じ取った魔物がやってくる。どうやら一度にやってくる数は多くはないが、それなりの強さの魔物を止めどなくぶつけてくる気らしい。
「種類が少ないのがせめてもの救いか」
「そうですね。あと分かりにくいですが、あっちにも」
「ああ、そうみたいだ。背後には気を付けないとな」
「やっぱ感知系のレベル上げは必須か」
そうして魔物たちと対峙した四人は、隠れて隙を伺っているカメレオンにも気を付けながら戦闘に入るのだった。




