下見?
迷宮内部へと入った四人は、どこまでも見渡せるだだっ広い荒地と、チラホラ見える魔物を見て鑑定を使う。
「うん、普通じゃないね」
「スキルがあんなに……」
「落ち着け安藤、アレは罠だ」
「呪いってホント凄いですね」
見た感じ普段の様子とは変わらないのだろうが、その中身は呪いよろしく殺意満点である。通常ここに出てくる魔物はスキルなしの30レベ前後なのだが、いきなり120レベでスキルありと言う正気を疑うレベルのものとなっている。
「多分入ってそれなりに進んだら一気に量増えますよこれ」
「そうだな。まぁ全部倒せばいいだけだ」
「万単位で倒さなきゃスキルレベルが上がらない。望むところだ」
「安藤さん、スキル中毒になってません?」
今にも飛び出しそな危ない安藤をどうにか抑え込んで、四人は地図埋めのために隅々まで回ることにした。そしてしばらく進んだ後に、魔物たちは一斉に四人の元へと向かって移動を開始する。
「無駄無駄!お前らのスキルと力をよこせ!」
「あ~こりゃダメだな。危なくなったら加勢しよう」
「そうですね。まぁここは安藤さん一人でも大丈夫でしょう」
「うん。気が済むまでやらせてあげよう」
向かってきた魔物に刀を構えて走り出す安藤。それを見た三人は、自分たちの安全を確保しながら諦めたように安藤の様子を見ていることにしたようだ。
「高レベルになればなるほど単独で潜れなくなるから、スキルの成長速度が遅くなるんですよね」
「吸収って言っても1か2レベ程度が限界だからな。そこからは大量に倒さなきゃレベル上がらんし」
「共有でもそうですけど、強引に取ってるからね」
目の前で起こる無双劇と抜け来た魔物の対処をしながらそう話す三人。正規の方法で取っていないスキルは成長が遅くなる。数が多くなればなるほどその傾向が強くなり、そして最悪なことに、正規で取ったスキルもその影響を受ける。なので通常以上に使用するか、こうやって魔物を大量に倒す以外にスキルレベルを上げる手段がなくなっているのだ。
「そういやここは、カラスに野犬みたいなやつ以外にいたっけ?」
「奥の方へ行けば腐食性のスライムとか虫系や萎れた植物みたいなのが出るらしいですね。まぁ後者は魔物兼罠の類みたいですね。因みに罠は少し足場が崩れたり、目立ったりするのが大半らしいですよ」
「やっぱこのレベルの迷宮となると種類も増えるね。罠の方も気を付けなきゃダメだし」
弱くても厄介な敵が多く、罠もあるとなると油断できない。因みにだが、罠兼魔物みたいな扱いの魔物は結構多い。こういうのを組み合されたら、簡単な罠でも一気に難易度が上がるので気を付けたいところだ。
「流石に安藤一人に任せたら進行速度が遅いな。ちょっと手出すか」
「ですね。時間がもったいないです」
「安藤さん!加勢します!」
「もうちょっと!もうちょっとだけ!」
安藤の我儘を聞いていられないと、三人は手を出す。すると瞬く間に魔物は殲滅されていき、安藤は残念そうな顔をしていた。
「あとでさせてやるから、今は我慢しろ!」
「す、すまん、つい……」
「とりあえず安全地帯まで行きたいですね。流石に数が多すぎます!」
「地図埋めの時ぐらい隠蔽張っといた方がいいかもね!」
魔物も多いが、様々な攻撃をして移動を邪魔してくる魔物たちがウザすぎて、移動するのも一苦労だ。せめての救いは明確に連携してきていない事だろうか。
「一度地図埋めしてから攻略するか。時間がかかると思っていたが、こっちの方が時間かかりそうだな」
「あわよくば攻略……と行きたいところでしたが、これはで直した方がいいかもしれませんね」
「せめて行けるところまで行こうぜ。何なら俺が前線を切り開くから」
「戦いたいだけでしょ、戦闘狂も混ざり始めました?」
慣れてきて安定しだしたのか、駆け足で魔物を殲滅しながら進む四人。勿論回復量が上回っているため、精神的な面を除けば一切の疲れ知らずで進み続ける。そして精神が強靭な彼らはそんなこと気にしないので、精神面でも死角なし。
「そういやここ陸続き型だったけ?」
「そうですね。と、次のフィールドが見えてきました。魔物いないので多分あれでしょう」
「門だったりホータルみたいだったり、階段とか種類多いな」
「差別化してるんでしょ、何のためには分かりませんが」
階層の移動法は様々あるが、中には陸続き型もある。これは階層がない、または分かりずらい物で、奥へ行けば行くほど難易度が上がる仕組みとなっている。そして定期的に魔物が少ない場所や、安全地帯が存在するものだ。
「こう極端に魔物が多いと、安全地帯もすぐわかるな」
「明らかに少ないところとか、最終的にはいなくなりますからね」
「前後で魔物が待ち構えてるけどな」
「時間経てば散るでしょ。まぁすぐに戻ってくるでしょうけど」
油断は禁物と一応休もうと安全地帯へと入る四人。すると魔物たちは距離取り四人を外から眺め出す。流石に何十分も待っていられないので、一旦散ることはあるだろうが一歩でも出れば、すぐにでも追い回されるところになる。
「ここで遠距離攻撃できたらな。安全に経験値稼げるのに」
「遠距離攻撃持ってたらできますよ。まぁ割には合わないですが」
「距離があるからできる事一気に減るからな。効率が悪すぎるから誰もやらんし」
「普通の探索してるだけで十分ですからね」
安全地帯には基本的に魔物は近づかないため、距離が離れて攻撃がしにくくなることが知られている。そのせいで、魔物を見かけても倒すのに結構苦労するのだ。決して彼らのように待ち構えてなど来ない。
「西田、ちょっと炎熱線で焼き払ってみてくれないか?」
「いやですよ。迷宮の破壊行為はダメですからね」
「そうだぞ。いくらあんなにいるからって範囲攻撃はダメだぞ」
「難しいところですよね」
少し遠くの方で待ち構えている魔物たちのを見た安藤が、焼き払いを提案するがみんなに却下される。因みに銃のように撃つのではなく焼き払いを頼んだのは、遠くへ飛ばすのにはそれなりの力が必要であり、制御が難しく範囲攻撃になりやすいの原因だ。まぁ安藤は数が多いからそう言ったと言うのもあるが……
「銃器でも買っとけばよかったな」
「バカなこと言わないでください。日本での銃器使用には資格が必要なんですよ。持ってないでしょ」
「それに弾とか整備とかのことも考えたら金がかかりすぎる。あれは金持ちの武器だろ」
「日本じゃ手に入りにくいってのもあるから。まぁ一番はレベルアップしずらいってのが大きいけど」
銃器を使う探索者もいるが、あまり人気ではない。なぜなら、高くなった身体能力で殴り殺した方が簡単で安上がりだからだ。そして、倒した魔物が発するエネルギーを取り込んでレベルアップする構造上、距離を取って戦う銃器はレベルアップの妨げになることが多い。勿論、最低値の話や例外などもあるが、多くの場合はそうなると知られている。
「ま、とりあえず行きますよ」
「そうだな。十分休めた」
「よし、もっと倒すぞ!」
「ほどほどにお願いますね」
そう言い四人は、攻略のために魔物が待ち構えている安全地帯の外へと向かうのだった。




