人気の迷宮
次の日、四人は予定通り近くで一番人気の迷宮へ来ていた。
「人は少ない、と言うかいないな。早めに来てよかった」
「平日の朝早くからこればこんなもんですよ。以前もそうでしたでしょう?」
「レベリングの研修場所だったからな」
「あの時は苦戦したけど、今回は大丈夫だね。対策もばっちりだし」
日も昇りほんのりと周囲が明るくなった時間帯に、元公園の中心にできた迷宮の簡易的な門の前で駄弁る四人は、周囲を見渡しながらそう言い合っていた。
「推奨レベル100の草原迷宮。全10階層で、草原にいそうな弱い魔物が多いからね」
「一階層目とか10レベ前後か、高くても20レベの魔物しか出て来ないしな」
「しかも倒しやすい上にドロップ品もいいですしね」
「本格的な罠に限っちゃ5階層目からだしな。それも簡単なのと、分かりやすいのしかない。感知とか斥候系のスキル持ってりゃまず引っかからないよな」
ものにもよるが、基本的に階層が多い迷宮は浅い層の魔物は弱いし、罠などもたかが知れていいる。この程度の迷宮罠なんてスキルがなくても注意しとけば、仮に引っ掛かったとしても大したことない。
「ボスはミノタウロスだったか。前はそこまで行けなかったが」
「半分も入れませんでしたよね。四人で行ったのに」
「50レベの差は大きいとはいえ、慎重に戦えば四人だと安全に倒せるのにな」
「今ではみんなそれぐらい余裕だけどね」
推奨レベルはあくまで4人チームで設定されているため、ボスや深層の魔物が多少格上でも問題ないのだ。何なら道中でも強くなるし、装備やスキル構成、異能次第では余裕だったりする。他にも事前情報の有無や魔物の種類によっても攻略難易度が変わる。
「ま、とりあえず入ろうぜ」
「そうですね」
「ちゃんと隠蔽も張ってますしね」
「これで無理ならまた一から考え直す必要があるからな」
事前に試しているとは言え、この迷宮でも通じるかわからない。無理なら作戦を考え直さなければいけないのだ。朝早くから来たのも、人と出くわしたくないのと、失敗した時に周囲にバレないようにするためだ。
「前にも思ったが、マジで草原だな」
「こうも一気に開けるとな」
「魔物は……大丈夫そうですね」
「ステータスも普通と」
迷宮内に入り、一気に視界が開ける。それにより大草原が見え、チラホラと視界に映る魔物をサッと鑑定してステータスを見ていた。
「隠すのやめたら一気に倍ぐらいになるんだろうな」
「次々に襲い掛かってきますしね」
「安全地帯以外だと休む暇もないしね」
「これが普通の探索か」
波のように魔物が押し寄せてこないことに安心し、二つの地図を見ながらササっと迷宮内を進む四人。これは市販で売られているこの迷宮の地図と、迷宮地図の照らし合わせをしているのだ。
「順調だな。予定通り、この迷宮は地図を埋めながら普通に攻略しよう」
「目的は、初回の攻略報酬と宝箱ですからね」
「ボスだけは隠蔽なしで戦うんだっけ?」
「問題があれば、不人気迷宮に移ればいいからな」
道中の敵には呪いの効果を一切使わず、ボス戦だけ本気で戦う。これも報酬底上げのためだ。その他にも試したいことは多くあるが、それは後々時間を掛けながらすればいいと考えていた。
「いや~、にしても、これだけレベル差があると楽勝だな」
「一撃で倒せますからね」
「スライムに魔兎、鳥系とか馬系や狼系の魔物もいるね」
「しかも温厚でほとんど襲ってこないしな」
草原迷宮の人気の理由が、その安全性である。浅い階層の魔物は襲ってこない魔物が多い上に、襲われても大した強さではない。魔物と戦うと言うより、狩りをすると言う方があっているだろう。その上この草原には、薬を作るのに必要な薬草もそれなりに生えているのも理由だ。
「市販の地図通りで特に目立ったもんはないな」
「宝箱が出始めるのが100レベ以降ってだけですからね」
「本格的に欲しかったら300レベ超えないとダメだしな」
「まぁあったらラッキー程度ですから」
一階層、二階層、三階層とどんどん足を進めるが、やはり低級の迷宮では宝箱などの報酬は見込めないようだ。迷宮側も、そうポンポンと宝箱など出していたら採算が取れなくるので当然でもある。
「っと五階層目。地図埋めながらだと時間かかるな」
「ここからは魔物も襲ってくるのが増えますからね。気を付けないと」
「だな。罠も出てくるし足元すくわれねぇようにしないとな」
「レベルも近づきますしね」
地図を埋めながらとは言え、五階層進むのに二時間の時間を要していた。時間のかかることをしていないし、地図の作製も最高速度なので、結構早く終わっている方だ。
「この調子だと人と出くわしちまうな。四人で挑むか?」
「いえ、そうすると勿体ないので、できる限りやって、足りない分は明日にでもしましょう」
「まぁ別に時間かけてもいいわけだしな。急いでないし」
「ですね。別に数日かけてもいいわけだし。ここで稼げるだけ稼ぎましょう」
人が多い迷宮では20回の周回は不可能と踏んでいるので、とりあえず自分たちの初回報酬と試しに四人で挑むことを考えているようだ。そこから様子見でどうするかを決める予定でもある。
そして次々進んでいった結果。
「もうそろそろボス部屋だな」
「四時間ですか。人が入り始めるころですね。二人か三人が限界ですね」
「残りは離れた位置で魔物狩っとくってことでいいよな?」
「うん、その予定だったはずだよ」
道中これと言ったイベントもなく、ボス部屋の近くまで来ていたのだった。




