外食
四人は昼飯を食いにとあるところへ来ていた。
「食い放題と言えばここだよな」
「そうですね」
「うん。ここしかない」
「そうだな。流石は大型ショッピングモール。なんでもあるぜ」
そう、ショッピングモールである。しかも、お高い料理などではなく、どこにでもあるチェーン店のバイキング式の食い放題だ。それなりの質で腹を満たすのならこういう場所が一番で、なにより探索者向けの店なので心置きなく食えると言うのもの大きい。
四人は店に入り空いている席のあるテーブルを取って、料理がズラリと並ぶ食堂を見渡した。
「まさに大食いの探索者にはぴったりだな」
「そうですね。探索者は肉体労働。必然的に食事量も増えます」
「この店はコスパがいいから人気だしね」
「良くも悪くも迷宮のお陰だな。資源に困ることは少ないし」
迷宮ができてからと言うもの、未知の脅威だった初期はともかく、今では大量に産出される資源のお陰で、ほとんどの資源問題が解決していっていた。特にエネルギー資源や食料資源に乏しかった日本は、輸出はさて置き自給自足ができる程度には安定していたのだ。
まぁ色々目を瞑ったり、逸らしたりしていることも多いが、それはどの国にでもある事なので仕方がないだろう。
「さて、食べ放題だ。食いたいだけ食って満足しよう」
「なにしようかな?まずは肉系か魚系か」
「スープとか炭水化物は腹が膨れるから後回しな」
「安藤さん。元を取ろうとか考えずに楽しみましょうよ」
そう言いながらわちゃわちゃ食事を取ったり食ったりし合う。その量はまるで大食い選手のような量で、せっせせっせと運んでは食べ運んでは食べを繰り返いしていた。
「いや~この店と言うか、今の時代はいいな。こんなに食ったって追い出されない」
「迷宮が出る前だと完全に出禁くらうレベルの量ですからね。まぁそもそもこんなに食べれる人なんていないんでしょうけど」
「うんうん。迷宮様々だよ。おいしいものをたくさん食べれるのは幸せの証だね」
「だな。よ~し、もっと食うぞ」
探索者が多い店なので、山のように食べても気にされない。人数も多いとなれば当然で、他より少々多くても“凄い食うなあいつ等”程度だろう。普段からこれほど食っているわけではないのだが、こう言う所でぐらい羽目を外して食うのが探索者流である。
「ん?」
「どう……あ」
「この気配は」
「来るよね、やっぱ」
そうして談笑しながら楽しく食事をしていると、いつぞやの組合で出会った二人組が来店してきていた。相変わらずガラの悪そうな見た目で、堂々としている。
「バレたくねぇな」
「絡まれるのはごめんです」
「同じく。スキルでも使うか」
「だな。それがいい」
そう言い四人はスッとスキルを使い気配を薄める。それが功をそうしたのか、二人組は四人に気付かず空いている奥の席へと行った。
「眼中にないのか、スキルのお陰なのか」
「またはその両方かってか?」
「流石にこんなとこで絡まないんじゃ?まぁ気づかれないにこしたことはないけど」
「あとのことも考えたら面倒ですからね」
四人があまり他人と話すどころか出会わないのは、常にこうやって周囲を警戒しているからだ。元同僚や先輩などは特に警戒しており、スキルを使って先に行動を把握して、逃げるなり隠れるなりしてやり過ごしている。
「でもな。稼ぐとなればあいつらと同じ迷宮に入らなきゃいけねえんだよな」
「ですね。出くわす可能性は一気に上がりますよ」
「迷宮は広いとは言え、人の数は多いからな。隠れてい動かないと」
「そうすれば魔物も普通の出るので一石二鳥ですね」
次行く予定の迷宮には、あの二人組がいる。ここ一帯では有名な迷宮の一つであり、特に100~200レベ程度の探索者が多くいる迷宮だ。低階層に限って言えば、罠もなく初心者や副業でやっている探索者も結構おり、罠の出てくる中階層に行くまでには必ず人と出会う程だ。
「あいつらもレベル上げ結構早いからな」
「異能が異能ですしね。火力型で格上を倒して、素早くレベル上げできる能力なんて羨ましい限りです」
「まぁこっちはコツコツやっていく感じだからな。人より何倍成長が速いと言っても、倒してる魔物の数や質はそれ以上だからな」
「それが割に合ってる気はしないけど、最低限のものは得られてるからね」
元のドロップ率やら成長率が渋すぎて感じにくいが、割にはあっている。だがそれがいいかで言えばそうも言えないのが現状だ。まぁ四人は知らないが、迷宮の嫌がらせになっている点で言えば、迷宮も四人もどっこいどっこいである。
「そういや公式はいつになったらあの記録変えるんだろうな」
「黒田さんの最速記録ですか?確かもう初期から殆ど変わってませんよね」
「まぁあの人が最初にあのレベルに到達してるからなんだろうけど」
「それに多少の誤差はあれど大体合ってるからな。最速ではなくなったけど」
公式で書かれているレベリング記録と言うものがある。それが以下の通りで
100レベが一か月 初心者抜け辺り
200レベが三か月 慣れ始めて安定してくる。
300レベが一年 本業じゃなくてもギリいける。
400レベが二年 中堅者。本業だとここら辺が一番多い。
500レベが三年 熟練者。上位迷宮の本格攻略するならここからが本番。
600レベが五年 実力者。ここから一気に人が減る。
700レベが七年 超一流。世界でも有数。
800レベが十年 異常者。世界で一人しかいない。
の計三十年、と言うものだ。
これは黒田さんを基準にしており、昔と違って迷宮が充実した現代では、普通に攻略していけば大体こうなると言う指標になっている。今もそうだが、トップ勢が頑張りすぎて迷宮側が、レベリングに適した強敵のいる迷宮を出すのに追い付いていないのだ。
でも裏を返せば、強者が揃い、迷宮も充実してきた現代は、理論上は今出ている迷宮の上限までは、爆速でパワーレベリングが可能だ。まぁ安全や費用面を考えると、半年かけて一般的には400レベまでが限界だ。それ以上は、罠やイレギラーの問題でリスクが跳ね上がる。
「100レベ以上のレベル差で倒したら、パワーレベリングでも十分上がりますからね」
「近くにいるだけでな。羨ましいもんだ」
「だから集団でも使って倒そうとする人たちがいるんだよね。無茶するよ」
「普通に考えたら死ぬからな。それはもうドーピングとか高位の装備でも固めとかないと」
極端なレベル差は極端な数や強化でどうにかできる。とは言えそれでもちゃんとしないと犠牲者が出るので、一時期社会問題化していた。こうやれば勝てるとか、これがあれば勝てるとか、私たちがいれば大丈夫ですとか言う売りで、デマや詐欺まがいなものが多発したのだ。
「まぁパワーレベリングは成長率低いからしたくねぇが」
「最低でも100レベごとに慣らし期間も必要ですからね」
「まぁそれでも400レベとかになってくると強いんだが」
「あくまでそのレベル内で最低値ってだけですもんね。迷宮に入らない人にとっては十分ですよ」
その他色々問題があるが、それを抜きにしてもレベルを上げることの恩恵は大きい。単純に能力が上がるので、仕事から私生活まで役に立つ。それをビジネスにしている人たちも普通に居るのだ。めっちゃ儲かるから。
「っともうそろそろ時間だ。会計の準備でもするか」
「結構食べましたね。普通に買ったらどれほどするのやら」
「そうだな。普通に買ったら倍はするな。食べ放題万歳ってところだ」
「まぁ普通の店と違って原価は低いんでしょうけど」
そうやって食べ放題あるあるなどを話しながら、最後のデザートを頬張った四人は、皿などをまとめるだけまとめて、会計をして店を出るのだった。




