準備と……
四人は外に出かけるために準備をしていた。と言っても、朝飯を適当に食ったり、掃除や空いた時間でゆっくりして、昼飯を外食に出来うように調整しているだけだ。
「ん!見てよ、この探索者!」
「ああ、迷宮攻略系の人だったっけ?ツナグチャンネルの……ん?ってこの人は!?」
「なんだなんだ?って噓だろ!」
「迷宮内を生配信できる探索者でしたっけ?っとこれは……!」
西田が見せた動画をみんなが見に来て、各々反応を見せていた。
「生中継のコラボ。それにこの人、ランキング一位の人じゃねえか」
「あの中々表に出て来ない人を、どうやって呼び出したんでしょうね?」
「三年前に800レベ超えたって話なのに、もう20レベ以上上がってるって」
「うん、どうやったらこれだけレベリングできるんだろうね」
動画に映っている人に驚きつつ、投稿者の質問にぶっきらぼうなのか冷静なのかわからない返答をする男にくぎ付けになる四人。
「この人、国内じゃ最大手の動画配信者だろ?たしか迷宮発見当初から活動してるツナグさん。以前にも一位の黒田さんだったか?ともコラボしてたけど、仲いいのか?なんかいつも反応が淡白だが」
「迷宮内の詳しい内容とか、探索者の実情とかを動画のネタにしてる人だったよな。この人ぐらいだよ、個人で黒田さん呼び出せるの。あと黒田さんはいつもああらしいぞ。一部の人なら反応の違いが判るらしいが、一視聴者でしかない俺たちには違いは判らんが」
「レベルも600ぐらいと上位陣。人脈もピカ一とは、羨ましいですね」
「そうそう、数少ない迷宮内を生配信できる探索者だよ。異能使ってるらしい。前に一緒に黒田さんと潜ったことあるらしいけど、配信断られたって以前の雑談回に話してたよね」
長年の友人のように話しかけるツナグは、雑談交じりに質問をして、黒田は次々に答えていく。中にはあとでスキルの使い方見せてやるみたいな話もあるのだが、如何せん黒田は受け身で、しかも反応が反応なので、お世辞にも動画で映えるとは言い難い感じになっている。だが視聴者は非常に多く、コメントも流れるように付いていた。
「ツナグさんのトーク技術は凄いですね。楽しそうですし」
「黒田さんの反応をものともしないな」
「僕だったら気まずくなって黙っちゃいますよ」
「だな。俺もだ」
黒田の受け答えは微妙だが、内容は興味を引くものばかりだ。高位の迷宮にはどんなものがあるのか、今どこに潜っているのか、高位迷宮の攻略の際の注意点や押さえておきたいことなど、その他様々な話が出てい来る。
「東京駅迷宮の上位互換の東京迷宮か。推奨レベル780の攻略済み迷宮の最高難易度じゃねえか。それを個人で周回とかバケモンか」
「いくら初攻略者だからって凄すぎますね。ボス戦は毎回が死闘に近い戦いってのも」
「はい、普通はパーティー組んで入るのが当たり前なのに」
「黒田さんクラスになると、誰もついてこれないんだろうな。国と同等とか言われてるし」
世界ランキングダントツで一位を走っている黒田には、ともに迷宮に潜る仲間がいない。それどころか、特定の国や企業などの組織に属してすらいない。これは組合組織どころか、各国にも同じことが言え、個人で対等な取引相手としての形を取っている程の規格外な人物だ。
「まぁ世界中回って迷宮攻略しまくってた時期もあるしな。世界七大迷宮にも行ったことがあるらしいけど、効率悪いって放置しているらしいし、今は東京が効率いいって言っているだけで。あそこ量より質みたいな迷宮だし」
「レベリング重視ならそれも納得ですね。それに一部では英雄視されてるらしいですよ。溢れた魔物を殲滅したりして」
「マジか。ヤベェな。そういや他国からなんか要請が出るとか何とか聞いたことあるぞ。それか?」
「まぁ黒田さんの通った道は、魔物がいなくなるなんて言われていますし。それは暴走した迷宮でも同じことが言えるみたいですね」
黒田伝説は多岐にわたる。曰く溢れだした魔物を一人で一晩も経たないうちに殲滅されたとか、曰く攻略不能とまで言われた迷宮を単騎で攻略したとか、曰く大国と条約を結んでいるだとかである。現に定期的に危なそうな迷宮があると、国や地域問わず呼ばれて攻略していたりする。
「いや~スゲェな。まぁ下位の迷宮潜っている俺たちには手の届かん話だが」
「ですね。正直追いつける気がしません。私たちでも普通の探索者に比べて成長速度が何倍も速いのに」
「仕方がないよ。あっちは30年以上も探索者やってるんだから」
「しかも大量のスキルに異能も複数持ち。詳しくはわからないが、レベリングしやすい能力持ってるとか何とか」
当たり前だが、誰もが率先して自身のステータスを見せるようなことはない。せいぜいレベルを言い合うのが関の山だ。まぁそのせいで、未発見や詳しくわかっていないスキルや能力が数多くあるのだが。
そうやって動画を見ていると昼近くになっており、動画の方も終わりちょうどいいかと四人は外食に出かけるのだった。




