今回の結果
流石に疲れた四人は、さっさと組合での売却処理を済ませて、拠点で爆睡したのちの次の日の朝に報酬を確認していた。
「わかっていましたが、随分と沢山ですね」
「これでも薬系とか普通の奴は等価交換でうっぱらった方だぞ」
「まぁ96回も攻略しましたからね」
「こんな短期間にこれだけ攻略する奴なんて他にいないだろ」
たった四日ぽっちで、四迷宮合わせて96回もの攻略回数は正直言って異常だった。迷宮の強さにもよるが、そもそもボスの復活時間や道中の移動時間もあるので、世間では一日10回でも結構多い方だと言われている。
「とは言えそのおかげでこれだ」
「「「おおっ!」」」
そう言い田中が、まとめていた報酬品を見えやすいように床に並べる。
・病魔の指輪 一級
所持者とその干渉者へ、同程度の病魔を強制的に付与する。
・狂骨の大剣 一級
込めた力分、重量と耐久性が増す大剣。
・毒牙のナイフ 二級
強力なムカデ毒が斬撃に付与される。
・劣龍の鎧 二級
それなりの耐久性と柔軟性がある着心地のいい鎧。
主なものがこれらで、その他にも装飾品や武器など含めてだいたい二十個程度はある。
「質はさて置き、量はあれだけやって二割行くか行かないかですか」
「まぁ強さの割にな。とは言え、どんな迷宮だって道具とか武器は珍しんだ。あるだけいい方だろ」
「初回以外では宝箱とかしか手に入りませんからね。大抵の場合」
「それも普通の時に比べての話だろ?初回でも中々手に入らんし、宝箱の方がまだ手に入る」
武器、道具、装飾品などは本当にドロップ率が渋い。しかも手に入った物が有用かどうかも考えると更に渋い。一応売れば金になるが、正直、初回攻略か運よく宝箱で手に入るものでなければ元を取るのは難しいとも言われている。なので基本は、たまたま手に入った臨時収入程度の認識だ。
「レベルの高い迷宮はいいものがたくさん手に入るって話だよな」
「割合的に多いらしいですね。まぁその分、難易度も危険度も段違いらしいですけど」
「奥まで入る奴が少ないからだろ。だからだよ」
「ですよね。大半の人が取りに行けないから、取れる人だけの取り放題みたいなものですし」
宝物の補充速度は謎だが、高位の迷宮では、比率的に見たら高品質でそれなりの量の武器などが産出されている。これは難易度が高すぎて簡単に武器などがドロップする事と、そもそもの挑戦者の数が少なく競争率が低いからだ。とは言えそれが市場に出ることは少なく、大半の人間には無関係の話だ。
「で、一応残しといたこれらなんだが」
そう言い残っていたものを見る。
「効果はいいんですがね」
「300レベ台で取れるもんと同等だからな」
「うん。ホントよく、こんなところで出たもんだよ」
質のいい四級品が出れば大当たりみたいなところで、それなりの三級品が大量に取れたのだ。それに果てには二級品や一級品も出ている。本来の等級品に比べれば明らかに見劣りするとはいえ、本来なら500レベ台がたまに持ち帰るレベルの品が出てくること自体おかしい事だ。迷宮からすれば、大損失もいいところだろう。
「俺に考えがある。ちょっと実践してみるが……この『退病の首飾り』をいつも来てる作業着に……」
さっと『退病の首飾り』を手に取り、畳んでそばに置いていた作業着へ近づける。すると――
「あっ!それって!?」
「統合!?そんなことできたんですか!?」
「スキルの付与移しには見えないからな。てか劣化してない……だと!?」
『退病の首飾り』が消え、作業着が強化された。それを見た三人は、あっと驚き考察する。この世界には能力やスキルを使って、効果の複製や移動、統合や道具そのものの合体などの技術がある。だがコストが高かったり、劣化したり、上限があるなどいろいろ問題があった。
「しかも上限無視だ。いくらでもひっつけれるし、壊れても俺の等価交換ですぐに複製可能だ。まぁバカたけぇけど」
コストをできるだけ抑えるために道具ごと等価交換しているのだ。それで一番突出した統合先に合う機能だけを移し替えることが出来る。その主旨から離れれば離れるほど機能は劣化し、離れすぎたり合わないものは、道具と共に消滅する。なお強化上限はないが、同時にコスト上限もないので、下手すると金額にして憶でも兆でも簡単に吹き飛ぶ。
「これ全部統合して四人分の装備を作るとしたら、ざっとこれぐらいだ」
「は?いやなんと言うか、凄いですけど……」
「効果も金額もバグってますよ」
「おいちょっと。こりゃ稼ぎ続けなきゃいけねぇってことじゃん」
田中に出された金額は、四人が一か月と今回の報酬分の財産を含めて、全て吹き飛ばす程のものだった。そしてこれからも続けるのなら、これ以上の金額か同価値のものを要求され続ける。比率的に見たら、普通の探索者が3~5割で、こいつらは大きな損失なくても一割そこら返ってくればいい方だろう。
これはどれだけ高位の迷宮に潜っても大して変わらず、仕事量的に見たら完全に割に合っていない。
「僕たち基本的に呪われてますから、強敵に出くわしやすくなってますし、どうします?」
「敵の数も尋常じゃないからな。だけど、いい装備が手に入るとは言え、これは考え物だな」
「とは言っても、やらないわけにはいかないんですよね。それに呪いの誤魔化しもいずれ限界が来るでしょうし、これぐらいの装備も必要になりますよ」
「だろうな。推奨レベル以下で安全マージンとってもあれだからな」
最後の骸骨迷宮の時には、四人のレベルは140~160レベ程だった。普通なら道中は余裕であり、ボス戦でも、面倒に感じながらも普通に攻略できる程度の難易度のはずだ。なのにそうはならなかった。
「火の車寸前でもやるしかないのか……」
「転職しようにもスキルが足りませんからね。今のところだと、力仕事のバイトがせいぜいでしょうか」
「探索者向けの能力にスキル構成だからね。やりようはあってもそこまでが長いし」
他の職種には、それに特化した者たちがいる。スキルや能力の発現以降、履歴書には推奨枠としてスキルが書かれるようになったが、実質的に適性スキル持ちか余程優秀でなければ、書類審査の時点で弾かれるのが現実だ。転職サイトなどにも当たり前のように、適性スキルの一覧が張り出されている。
「おいおい、お前ら。そんなにしょげんなって。俺たちは探索者なんだぞ。他の職種に行く理由があるか」
田中はそう言い、次々に武器や装飾品などを統合し始めた。それに三人は慌てるが、田中は続ける。
「確かに現実は厳しいしこの世は世知辛い。だからって、他人と比べたって仕方がないし、社会に求めても煙たがられるだけだ。違うか?」
田中の言葉に三人は押し黙る。
「だがな、そんな状況でも生き残れる力を俺たちは持ってるじゃねえか」
そう言い、統合し終わった作業着を三人分用意し前へ並べる。
「どうせならだ。ギリギリを楽しもうぜ。生きてるって実感は何よりも大切だ」
差し出された作業着を手に取り、三人は黙って頷いた。
「じゃ、次だ次だ。スキルにレベル。こっちが強けりゃもっと高位の迷宮行けるだろ?一割だってい言っても、億単位で稼げばいいだけだ。目指せ特級クラスだ!」
しんみりした雰囲気を飛ばすために、田中はそう言いステータスを開く。
「そうですね。悩んだって仕方がありません。突き進みましょう」
「そうだよな。未来の事は未来の俺たちがどうにかしてくれるよな」
「うんうん。凄く強くなれば全部解決するよね」
それに合わせ三人も元気を取り戻し、ステータスを開き確認作業へと移るのだった。




