骸骨迷宮のボス
骸骨たちを蹴散らしボス部屋の前まで来た四人は、田中、西田、安藤の順でボスに挑み、最後の吉泉の番になっていた。
「そうですか。特に変わらなかったんですか」
「ああ、あの調子だと何かしら違うと思ってたんだがな」
「スキルに強骨ってのがある以外、なにもなかったな」
「洗礼はされてたけど、特別な力とかはなにもね。ただ頑丈になっただけって感じ」
今まで攻略してきた迷宮のボスたちのように、何か変わったことがあるのでは?と考えていた四人だったが、どうやらここではそう言ったことは起きず、ただ単に強化されたボスだと言った感じで終わったと、三人は言う。
「何かあると思ったんですがね」
「そうだよな。一応ここは俺たちの情報を直接持ってるわけだし」
「余裕はありそうなんだがな。なんか企んでんのかもよ」
「うん、そうかも。気を付けてください」
考えられることはいくつかあるが、何であれ罠に近いものと考えた方がいいだろう、と結論を出す四人。そして……
「では行ってきます」
「気をつけてな」
「死ぬんじゃねえぞ」
「いざって時には逃げてくださいね。あと強化も送りますから」
吉泉はボス部屋へと入る。
「聞いていたとおりですね」
攻略サイトで出ている強化版のようなボスが見え、三人から聞いた話とも一致するボスだった。その姿は、体長2メートルはあり、非常に硬く太く頑丈そうな骨でできた骸骨剣士だ。いや、武器は刀なので、雰囲気的には侍と言った方がいいかもしれない。
「ステータスにも異常なし。さて、さっさと済ませましょう……か!」
初手にて骨と骨の隙間に爆弾を転移させ、爆殺しようとする。だが――
「効きませんか。防具もないのに」
爆撃で後退したものの、これと言ったダメージがない。それどころか驚くことも怯むこともなく、手に持っていたデカい刀を構えて距離を詰めようとしてくる。
(基礎能力の差ですか。やはり、今のスキルと道具だけでは限界があるんでしょうね)
真っ向から立ち向かう……なんてことはせず、逃げ回りながら爆弾を的確に転移させる吉泉。だがどれも効果は薄く、牽制程度がせいぜいだった。
(強化ボスとは言えこの程度の相手に爆弾が通じなくなるとは、今後の方針も考え直さなければいけませんか)
言っても100レベ超えていない迷宮に爆弾が通じなくなるのは、吉泉にとっては少々痛かった。主力で使えないだけで方法はいくらでもあるが、今のままでは周回効率が下がることが確実と言っていいからだ。
(もっと数を増やすか高位の……っとそれでは安全に強くなれても採算が取れませんね。火の車は勘弁です)
身体能力が高くなり続けるこれからの戦いでは、それ相応の装備や道具を整えなければいけない。普通の探索者よりも強い敵を多く倒さなければいけない彼らにとって、節約と言うのはより重要なことだった。
(これ以上は浪費ですね。……やりますか」
逃げ回るのをやめ、爆発で動きが鈍った瞬間に一気にボスとの距離を詰めた吉泉は、全力で刀を振る。それによりボスの体に深い傷が付く。
「硬いですねっと」
大腿骨付近を切断する気で放った一撃だったが、ボスは気にせずデカい刀で薙ぎ払いを行う。それを軽々と転移で回避し、死角から斬撃を放つ。
「素早さで上回っていれば脅威ではありませんね」
吉泉を斬り殺そうと刀を振るうボスだが、その速度は吉泉に届かない。転移の事も踏まえればボスと吉泉の速度差は致命的だった。これでは単純な力の差はもちろん、洗礼された動きも転移と大量のスキルと言う理不尽の前には何もできず、耐久も時間の問題だ。
「どれだけ激しくしても無駄ですよ」
流石に一方的に攻撃を受けすぎているため焦り始めたボスは、より一層攻撃を激化させる。だが転移でことごとく逃げられ、できると思った追撃も爆弾に邪魔をされ、逆に隙を晒して傷が増える一方だ。
(にしても硬い。よくそんなボロボロで動けるものです)
ボスが倒れそうになりながらも、強引に出された反撃を転移でかわし距離を取った吉泉はそう思った。
(それに武器の消耗も激しい……厄介ですね)
本来刀とは、斬撃に向いた武器なので、硬いものを斬る事には適していない。迷宮由来の素材と技術により強力になったとは言えそれには変わりなく、武器の性能を超えることをすれば当然こうなる。
(消耗品とは言え大切にしたかったのですが……仕方がありません」
刀を構え、ステータスを通じ西田に向けて更なる強化の申請をする。それにより、力がさらに上がり体が軋む。それを見たボスも刀を構え、無理に動かず迎え撃とうと万全を期した。
「では終わらせましょう」
そして吉泉は、一気にボスとの距離を詰める。その速度は、目に見えないわけではないが、一般人には反応できないほどの速度だった。それによりボスから出た迎撃の一撃を、スレスレでかわしてボスをぶった斬る。
「強化に制限がなくてホントよかったものです。まぁ武器はダメになりますし、反動がありますが」
使い物にならなくなった刀と、強化のし過ぎによる反動でガタがき始める体。しかし後者は、回復系のスキルか薬や道具でどうとでもなるし、武器は買い替えればいいだけの話だ。コスパが悪いことを除けば特に問題ないことである。
「っと骨ですか。確か、肥料用の骨粉として売れるんでしたっけ?こちらとしては武器とかが出てくれた方がうれしかったんですがね」
そして報酬は骨だった。この迷宮は魔石を除けば骨とたまに出る所持武器しかドロップしないので、後者を狙っていたようだが外れたようだ。まぁレアドロップ扱いなのだろうと諦めるしかない。
「さて、周回のために速く出るとしますか」
そうして吉泉は、ボス部屋を出るのだった。




