蜥蜴迷宮の最終周回
面倒なことはあっても特に苦戦することなく無事20回目の周回に辿り着いた四人は、ボスの復活を待ちながら雑談していた。
「思ったんだが、なんで魔物見かけないんだ?こういう場所」
「ボス部屋の近くとか階層移動場所には魔物寄ってこないそうですよ」
「あとある程度大きな迷宮には安全地帯もあるらしいですね」
「気の休まる場所は必要だもんな。上位の迷宮になってくると、万全の状態でも攻略に数か月かかるとか言うし、世界七大迷宮の未攻略迷宮は短いのでも年単位でも無理って話だしな」
迷宮についての何気ない雑談である。不思議が一杯な迷宮は、各国の研究もそうだが、ネットでの議論も盛んに行われている。それは30年経った今でも変わらず、雑談ネタに尽きないのだ。
「スキルと異能とか現代技術を使ってもわからんとは、流石は迷宮だな」
「説は多いんですがね。如何せん正確な情報源が乏しいですから」
「だな。世界そのものを調べろってんだからそりゃ無理だわ。こっちに侵食してこないだけマシだよ」
「外部のものを取り込もうとするって割には、入って来たものと学習だけで滅多に外には出ないし」
迷宮の真意を知ることは、現人類では解析不能であった。なんせ、迷宮やステータス関連のものは迷宮によりもたらされたもので、それにより迷宮への一定以上の干渉は不可能ではないかとも言われているからだ。
「っと、復活したな。行くぞ」
「はい。気を引き締めていきましょう」
「今度はモドキじゃなくて本物のドラゴンかもな」
「20回目は大幅な強化ですからね。そうかもしれません」
そうしてボス部屋へと入った四人は
「レッサードラゴン?」
「新しいスキルはあるけど、それ以外がごっそり削られてるな」
「劣化版とは言えドラゴンですからね」
「翼とかはないけど」
巨大な蜥蜴とワニを掛け合わせたようなドラゴンが出てきて感心する四人。どうやら種族を一段階上げるために相当無理したのだろう。勿論、毎度の事ならが適性レベルでは攻略不可能な相手だ。
「報酬何になるんだろ」
「普通に体の一部の肉とか鱗とか尻尾じゃね?他でもそうだし」
「それ以外でしたら武器とか道具ですね。あと定番の薬系とか」
「血液とかだったり?ドラゴンの血とかってなんかすごい効果ありそうだし」
そう雑談しながら強化を最大まで高めた四人は、いつものように安藤を筆頭に田中と吉泉が駆け出し、西田は後方でいつでも射撃できるように構える。
「っと!あっぶね!」
安藤に反応せず、ドンっと構えているかと思った瞬間、ボスはいきなり口を開けて安藤を食い殺そうとする。その速度は見た目にそぐわず非常に俊敏で、安藤はギリギリでそれをかわしていた。
「安藤!」
「安藤さん!」
「ッ!?」
西田の爆弾も田中の斬撃を無視して、確実に一人沈めるためにボスは安藤に襲い掛かる。
「くっ!?負けるか!」
体勢を立て直した安藤は、迫るボスに臆さず立ち向かい刀を振るう。それにより片目を溶かし斬り、安藤はドラックに撥ねられたかのように吹き飛ばされてた。
「安藤!」
「田中さん!先にこちらです!」
片目を失い上手く攻撃が決まらなかったボスだが、だったらとすぐに三人が直線状になる場所に移動し、口を大きく開け
「噓!?」
「火吹くのかよ!?」
その瞬間、口内より火炎放射が放たれる。その範囲は広大で、一瞬にして視界が埋め尽くされるほどであった。
しかし――
「下がってください!」
西田の火炎放射がボスの攻撃にぶち当たり、少しの拮抗後に相殺される。そしてその陰から田中がボスに襲い掛かり、素早く首を斬り裂いた。
「ぐっ!かってぇなっ!」
「斬りにくいですね!」
深く斬ることには成功したが、強引に一発斬り込むのがせいぜいで剣にガタがき始めていた。それは吉泉も同様で、転移で回り込み 柔らかそうな腹に斬撃を放ったが、上手く斬れずに反撃される前に転移で逃げおおせる。
「硬くて素早くて範囲攻撃持ちとは恐れ入りました」
「これぞボスって感じだな」
「ネットで見たレッサードラゴンより強いですからね」
ボスと三人は一切の隙を許さず睨み合う。
そして――
「あらよっと!」
突如として現れた安藤が、田中が作った傷に向かって刀を振り落としていた。それに驚いたボスは、急いで安藤に攻撃を仕掛けようとするが、腹にできた大きな傷と病魔に侵された体では上手く攻撃が決まらず、楽々避けられ安藤に次々に斬り裂かれる。
「おお、鈍い鈍い、流石病魔だ」
病魔は、被弾数と時間経過で強くなる状態異常だ。始めは少しの体調不良から始まり、最終的には無視できないほどに悪化する。対処法を持っていなければ、目の前のボスのように本来の力を発揮できなくなる。
「じゃ、もうそろそろ終わらせるか」
体調不良で息を切らし、傷口が溶かされ再生できなくなったボスの側面を取り、ボスから吸収したスキルを本格的に使う。
「龍種っと。スゲー、力が溢れてくる」
恐らく想定されていない事だろうが、こいつらには関係ない。その結果、龍の力を手に入れた安藤は凄まじい力を得て
「これで終わりだ!」
何度目かになる首の傷へと刀を振り落とす。それにより絶命したボスは、簡素な龍の鎧的な防具を残して消え去ったのだった。
感想にて、おまけ欄が不要との意見が出ましたので、これからは控えさせていただきます。




