スライム迷宮で
とある森の入り口付近にあるフェンスで仕切られた場所にやってきた四人は、探索者カードを使い扉を開けてフェンスの中へ入り、迷宮入り口の門という名の空間のゆがみに入っていく。
「平日の昼間だから人いねぇな。てかいつも思うけど、これどうなってんだろうな?」
「さっぱりわかりませんね。現実がゆがんでるのか、別世界にでも繋がってるのでは?」
「単なる空間のゆがみだったり、建物だったりでよくわかんないよね」
「上位迷宮とかの入り口は豪華だから、やっぱ迷宮の格次第とかだろ。俺たちが前まで行ってた推奨レベル100以上のは簡易的な門とかがあるわけだし」
人類が入ってくるのが前提かのような作りにそう思う四人。
「景色も変わった様子はないな」
「でも限界があるらしいからやっぱ異空間なんだろうな」
中に入ると、外と同じ森のような景色が広がっていた。どうやら迷宮は生成された場所や環境を参考にして迷宮内部を作り上げるようで、一面森景色になったこと以外違いは判らない。
「あ、スライムがいますよ」
「お、そうだな。じゃ潰すか」
そういうと田中はスライムの元まで行き、持っていた剣で素早く対象を叩き斬る。すると一撃でやられたスライムは消滅し、ドロップ品を残していく。
「スライムゼリーか」
「2割とはいえ幸先いいな」
「でも回収がね。その場で落ちるから」
「しかも安いですからね。これで20円とは」
ドロリとした液体を容器に詰める田中。
魔物は倒されると消滅してドロップ品を落としていく。基本的に落とされるのが魔石で、時折それ以外のものがドロップするのだ。今回のスライムゼリーは、そのままではお世辞にもうまくない非常食になったり、加工することで肥料にして売りに出されている。
「一階層と二階層合わせてスライムが40~50体で、三階層の迷宮ボスで100円程度。初回報酬やドロップや魔石の上澄み狙っても一周でよくて1000円いかない。誰もやらんな」
「簡単とはいえ肉体労働ですからね。このレベルで死ぬことはなくても、装備の維持やケガには対応できなくなりますし。昔はそれでも稼げたみたいですが」
「30年前の話だろ?そりゃ当時は探索者どころか迷宮のことも何もわからなかったからな。今じゃ初心者除けば、定期的に間引きしに来る組合の人しか来ないぞ」
「ですね。それに放置するとそれはそれで問題出ますし。魔物があふれ出したり、迷宮が成長したりで」
安易さや需要と供給のことを考えると当然だが、世の中世知辛いものである。そう雑談しながらスライムを潰し、先へと進む一行。当然ながらそれは驚くほどスムーズに進み、30分もたたずにボス部屋の前まで来ていた。
「早いもんだ」
「推奨レベル普通に超えてますし」
「散歩みたいなものでしたね」
「でもボスは相手のレベルに合わせて出てくるらしいから油断すんなよ」
どんな迷宮でもボスは、挑戦者に合わせた強さで出現する。とはいえ迷宮の限界を超えられるわけではないので頭打ちはあるが、それでも謎に対策を取ってきたりある程度レベルを合わせてくるのは厄介極まりないだろう。そのくせドロップ品は心なし程度に良くなるだけだ。
「おお、デカいスライム」
「解析とか欲しくなりますね」
「じゃとりあえず強化するね」
「わかった。ま、俺は出ない方がいいんだろうが」
部屋に入るとそこは、森の中の開けた広場のような場所だった。そしてボスを見た反応は各々だが、手慣れたように動き出す。
まず最初に田中が巨大スライムに斬りかかる。それに合わせて巨大スライムは触手を生やして応対しようとするが、吉泉の転移で簡単に背後を取られて刀での一撃を入れられる。それに驚き混乱している巨大スライムに、田中が触手を斬り裂き本体へと大きな一撃を与えた。
「やれ!」
田中が巨大スライムの反撃を避けるためにその場を離れると同時に声を上げ、西田が用意していた炎が巨大スライムに炸裂する。
「お前の炎いつみてもスゲーな」
「そうでもないよ。ため込んでやっとあの威力しか出ないから」
「念には念をとはいえオーバーキルですね」
「こっちの仕事がない手際の良さだよ、みんな」
西田の強化マシマシ圧縮火炎により焼き尽くされた巨大スライムは、何もできずに消滅した。
そして――
「「「「宝箱?」」」」
聞いていた報酬とは全く違うものが出現するのであった。