百足迷宮の最終周回
今回も無事周回を終えた四人は、20回目の戦いに挑むためにボスの復活を待っていた。
「ここのボスは改造が凄かったな」
「スキルを使わずよくあそこまでできたもんだな」
「そうですね。そのせいで目立ったスキルが手に入りませんでした」
「うん。でもその分経験値は多かったからいいじゃん。確実にレベルを上げようと思えばボスぐらいじゃないと話にならないし」
単純な強化からスキルに頼らないように改造されたボスだったので、スキルの実入りが悪く新しいスキルが手に入らなかった。だがその分経験値が多く、レベルの方はホクホクの様だ。
「その割には報酬が悪いがな」
「悪いと言うか、俺たちが使わなそうなやつが多かっただけな」
「籠手とか鎧とかが多かったから」
「そうですね。性能は確かですが、私たちには似合いませんからね、ああいうの」
経験値が多いという事は、いいものが出やすい証拠だが、ここ百足迷宮のドロップや攻略報酬は四人と相性が悪かった。とは言え資金源にはなるので役に立たないわけではない。
「まぁ変なことしないから倒しやすいしいいところではあるな」
「単純なスペック勝負ですからね。今のところは」
「立ち回り次第で難易度がわかるって感じだね」
「回避力と攻撃力あれば余裕だったなっと、復活したな」
単純なフィジカルの高さと、四人がするであろう攻撃に対する耐性などで戦ってきたボスだったが、これも四人で翻弄して袋叩きにすれば難なくクリアできていた。酷い話である。
そうしているとボスが復活し、四人はさっさとボス部屋へと入る。
「相変わらずデカいな」
「今回は10m近くありますよ」
「スペックは断トツでしょうね」
「変な能力持ってないと良いけどな」
なんとボスである百足は、過去最高の体長10mに及んでいた。これはこのボス部屋が狭く感じるほどであり、ゴリ押しする気満々に見える。
「ま、さっさと終わらせよう」
「早く帰って休みたいですからね」
「明日も攻略だしな」
「うん、じゃあ安藤さんお願い」
西田にそう言われた瞬間に、いつものようにボスに向かって走り出す安藤。それを見越してボスも、口を開けて素早く安藤を食い殺さんと迫る。
「遅ッ!?」
巨体であるが故にそれなりに素早いで終わっていた速度だった。それに対応するように向かっていき、余裕をもって攻撃と退避をできるようにしていたが、なんとボスは安藤に向かって毒液を飛ばしたのだ。
「うおっ!?」
そしてそれは安藤にかかり、驚いた安藤は攻撃をやめ、ボスの突進から逃れるように横へと避ける。
「安藤さん!?」
「その前にこっちだ!」
「よくもっ!」
ボスは安藤に目もくれず、三人の元へと直進する。驚く吉泉と剣を構える田中、そして西田の熱線が放たれ――
「貫けない!?」
「嘘だろ!?」
「効いてない!?」
直撃した熱線はボス頭部に傷と熱を残して消え、三人は散らばるようにその場を離れる。
「大丈夫ですか、安藤さん」
「ああ、汚いだけだ。今度は気を付けないと」
スキルにもなっていない毒液など、余程の地力差がない限りスキル持ちには通じない。だがそれは毒としての話であり、牽制や嫌がらせとしてなら話は変わってくる。
「にしてもどうする?西田の攻撃が通じないぞ」
「流石に実力差が開きすぎたんですかね」
田中と吉泉がそう言うが
「じゃあもっと火力高めればいいな」
「ですね。西田さん、お願いします」
「うん、わかった。ちょっと溜める」
「んじゃ俺たちは牽制だな。やるか」
速攻で計画を変え、動き出す四人。それに感づいたボスは、そうさせまいと様子見を止めて即座に四人に迫る。だが突如目の前に何かが映った瞬間に、それは大爆発を起こし視界が覆われてしまっていた。
「ミスりました。口の中へ放り込むつもりでしたが」
「ひでぇ戦法だな」
「今に始まったことじゃあるまいし」
混乱しながらも進行方向を変えないボスを尻目に、西田は少し離れた場所へ移動し、残り三人はボスへと攻撃を仕掛ける。
「機動力を削ぐぞ」
「足とか関節だな」
「遊撃と援護しますね」
いつも通りの戦法で田中と安藤がボスに攻撃を仕掛け、少しづつ足などを斬り落としていく。そして暴れだすと安藤の爆弾や斬撃が突発的に飛び交い、更に混乱するボス。
「やっぱ硬いな」
「しぶといですね」
「急所以外ダメだな」
巨体すぎて動きが大雑把になっており隙だらけな為、壁や天井に逃れようにもすぐに三人がそれを邪魔してくる。そして毒液もすでに見切られておいり、振り撒いたところで汚物扱いされて終わるだけだ。
そして……
「みんな撃ちますよ!」
「おう!」
「やってください!」
「ちゃっちゃと終わらせよう!」
西田の掛け声に三人はボスから離れ、機動力を削がれたボスに巨大な火炎放射が放たれる。
それを食らったボスは炎の中で暴れ狂い、全力で抵抗するが――
「お~焼けとる焼けとる」
「こんがりでしょうね」
「大きいから焼くのが大変だよ」
「的が大きくてやりやすかったけどな」
疲れを知らぬ西田の火炎の前に近づけすらできずに焼け死んだ。そして炎が止んだ後には、百足の牙をナイフのようにした武器がポツンと残されていたのだった。




