そして三日後
とあるファミリーレストランで、食事をしながら会話をする四人がいた。
「二日もかけたのに結局攻略できなかったな」
「流石にレベルが低すぎた」
「推奨レベルが100レベでしたしね」
「すまん、足を引っ張って」
挫けそうになっても腹はすくようでモリモリ食べる四人。しかしそこに明るさはなく、探索者向いてないのかな?という雰囲気が漂っていた。特に安藤は、みんなに手伝ってもらいレベリングを行ったが22までしか上がらなかったので申し訳なさそうだ。
「いいんだ。これほどとは俺も思ってなかった」
「そうですよ。経験値のほとんどを安藤さんに渡しても、まったく上がらないとは誰も予想できませんって」
「でも、過剰に吸収すれば一時的に強くなれるってわかったんだからさ。それでいいじゃん」
「それだけレベルが上がりずらいってことなんだよ……」
安藤がついてこれるようにきっちりレベリングを行ったものの、やはり安藤はとりわけ上がりずらく大した成果は上げられなかった。しいて言えば、レベル以上の強さを発揮できるということだけだが、やはりレベルが上がらないことのデメリットの方が大きい。
「あのみんな。大した礼はできないと思うんだが聞いてほしい」
「なんだ?」
三人は安藤の言葉に耳を傾ける。
「レベルは低いけど、近場でスライム迷宮ってあるだろ。あそこの報酬なんてどうかな?」
「あのスライムばっか出るやつか?」
「階層も3階層で一本道だそうですね」
「たしか推奨レベルは10レベの超初心者用ってものだった気が」
彼らが話している迷宮は、スライム迷宮と言われている子供数人でも攻略できる迷宮だ。特に低レベルなスライムは動きも遅く棒で強めに突けば簡単に倒せるものであり、余程の数がそろわなければ脅威にならない。
「まぁあそこ以外行ったことないからな。試しに行こうぜ」
「うん。探索者になってからあの会社に養ってもらってたから」
彼らは探索者になって以降、勧誘してきた会社におんぶにだっこでレベルを上げていた。そのため特定の迷宮以外行ったことがないのだ。しかもそこでもレベル上げを重点的に行っていたため、戦闘技術に関しても他の一般人に毛が生えた程度である。これはレベルが上がってからの方が物覚えが良いからと、後回しにされて、そのまま何も得られずに解雇されたのが原因だ。
「そこぐらいなら俺達でも攻略できるだろ」
「攻略報酬でなにかもらえるかもしれませんしね。初攻略なら確実にもらえますし」
「初攻略はどんな報酬でしたっけ?」
「え~と。大きな魔石とか四級の回復薬とか、低確率で低級のスキルオーブらしい。因みに二回目以降は大きめのスライムゼリーとか小さな魔石、運が良ければ五級の回復薬とかみたいだ」
安藤がスマホを取り出しサッと調べておいたのを伝える。それは初心者用ではありふれたものであり、その中でもとりわけ攻略もしやすく報酬もいいものだった。
「初回はさて置き、二回目からがしょっぱいな。迷宮って一日の攻略回数に限度があるのに一回の攻略で千円稼げれば御の字って」
「それも回復薬が出ればの話ですね。まぁだれでもクリアできる迷宮ですから」
「そうですよ、クリアできるだけありがたいです」
「魔石だけだと、一日で稼げるのが推奨レベル×100円ぐらいが目安だからな。まとりあえず行こうか」
そうして食事を終えた四人は会計を済ませて、スライム迷宮へと向かうのだった。