次の作戦
どこの迷宮に行くかを話し始めた四人は、一人ひとり案を出していく。
「近くにある手ごろな迷宮は、百足迷宮、骸骨迷宮、蜥蜴迷宮、毒鼠迷宮とかですかね」
「とりま全部回るとして、提案なんだが、ここは分かれて行動しないか?」
「なんでだ?」
「どうして?」
安藤の提案に、首をかしげる三人は理由を聞くために尋ねた。
「俺は経験値の入りが悪い。けど戦わないとうまみが少ない。だから少なくとも俺は離れて動いた方がいい。それに吉泉は転移で気軽に移動できた方がいいし、西田は百足迷宮とか毒鼠迷宮で殲滅しとけばいいかなってな。田中は骸骨迷宮でスキル上げを中心にしてさ」
役割を分けた方が効率的だという安藤。
「もちろんボス戦とかはみんなで挑むし、すぐに集まれるように連絡経路を確保しときたい」
「わかったが、連絡経路はどうする?迷宮内部じゃ電波届かないぞ」
「思念伝達とか念話とかも同じ空間にいる前提ですし、上位スキルか異能でもないと」
「そもそもそういうスキル持って……あ、できた」
悩んでいると西田がポツリとそう言い、三人はそちらを見る。特に安藤は別の案を出そうとしていただけに面食らっていた。
「何がだ?」
「ちょっと自分のステータス見てみてくれ」
言われるがままに自分たちのステータスを見る三人。
「これはっ!?」
「そうか共有!」
そこにはステータスが、まるでメモのように操作された形跡があった。
「だがどうやって?」
「虚偽で文字打ち込んだ。共有を通してやったから距離とか空間の隔たりも関係ないとか思うけど」
「ステータス開く前提だが、これで連絡できるな」
「これ思念伝達とか使ったらいつでもどこでも会話できるかもしれませんよ」
ステータスの状態を共有している四人は、誰か一人でもそこに変化が起こると他の三人にも影響が広がる。それを利用し、虚偽で付け加えられた文章が浮き出てきていた。
「じゃあ安藤の提案通りにするか」
「推奨レベル以下の迷宮限定ですけどね」
「それでもパーティーで挑むのが普通だから、異能者でよかったよ」
「ありがとう。それでも迷宮をソロで攻略する奴なんて少ないから、無理そうなら別の案を出し合おうな」
不測の事態が起こりやすい場所なので当然だが、それでもボス戦以外とはいえ、ソロで迷宮に行くものは少ない。それこそ実力者か四人の様に何かしら手がある者たちだけだ。それ以外は自殺行為と言っていいだろう。
「とりま今日は休もう。疲れが取れないと明日に響く」
「そうだな。僕も眠たかったところだから」
「では私からお風呂に入っても?」
「ああそうしてくれ。俺は少しゆっくりしたいからな」
そうして四人は、明日に向けてゆっくりと休むのだった。