とある探索者の話
会社から追い出された四人組と別れた後に、受付に行く二人の探索者の姿があった。
「雷久保さん、清水さん。あれはダメでしょう。酷いようだと上に報告しますよ」
「悪い悪い。つい癖でな」
「足手まといは事実なんだ。こっちとしてはやめてくれた方が世話ないんだよ」
雷久保と清水はそう言うと、受付に背負っていたリュックを渡し、受付が査定のために奥へと行ったのを見計らって話をつづける。
「まぁ結構本音もあるが、それには同意だな。迷宮内で変なことをされても面倒だし、死なれてもな」
「同じ異能者で同期なのにああも才能がないとな。焦って変な事されるよりかは、探索者諦めるか低級の迷宮で大人しくしていて欲しいもんだ」
下にみる相手はちゃんと決めているのか、悪癖でそうなってしまっているのか、四人と話した時とは打って変わって冷静と言うか大人しかった。
「俺たちの下で下働きでもさせてやろうか?どうせあの調子じゃ碌な仕事に付けんだろうし、そっちの方が安全に稼げるだろ。ま、雑用が主だろうがな」
「育てばいい戦力になるかもしれないしな。あの調子じゃ企業では利益が出ないって切り捨てられるが、後から追い上げてくる奴は意外にいるしよ」
この世界では簡単に育つ奴が多く異能の確認もできるので、異能がある前提で話が進み、なければすぐに切り捨てられる。だが、たまにスロースターターや後から運よく強いスキルを手に入れた奴が追い上げてくることもあるのだ。そういう奴らは、自分で成果を上げたり、誰かに見いだされたりが多い。
「あいつらはそうは見えないがな。なんせノルマ満たせなかったから落とされたんだから」
「あんな簡単なノルマも満たせないんじゃ、異能じゃなくて呪いだな。あいつらの異能は」
二人が言う通り、あの四人以外は全員出来たノルマだ。しかも最弱レベルの迷宮で、あそこまでボロボロだと言う事実がそれを後押ししていた。そしてあの四人も同じことを考えており、宝箱の件がなければ強くなる兆しも見えなかったと言える。
「ま、下につけるにしても俺たちがもう少し成長してからだな。チーム全体でああも成長が遅いのは致命的だし、何かしらのデメリット異能かもしれんし」
「異能自体は強力でも、その副作用で成長阻害する奴とかあるって話だからな。個人じゃなくてチーム全体ともなると珍しいが、相当厄介な異能なんだろうよ」
異能はホントに千差万別で、それ自体は強力でもそれ以外はデメリットが大きすぎるものもある。二人は四人の異能を知らないが、一旦企業に声をかけられているのだから便利なものには違いないのだろうと判断していた。
「いずれは独立して……っと、この話はあとにしようか」
「そうだな」
受付が返って来たのを感じ取り、話をやめた二人は、手続きを済ませて帰るのだった。