憤怒の権能
思ってたんとちゃう...
異世界転移に伴い、神から最強スキル「憤怒」を授か
った彼は後悔していた。
「いくらなんでも使い勝手が悪すぎるだろう....。」
そう、「憤怒」は確かに最強だ。使用者が怒りの感情
を抱くことによってその力は極限まで増大し、地を割
り山を削る。副作用として非常に怒りっぽくなるとい
う致命的デメリットがある。
例えば、彼が異世界に到着した直後のことだが、湿度
が高く体感温度で35度越えの熱帯雨林の中に彼は居た
。そこでは彼の嫌いな虫たちがエレクトリカルパレー
ドしていた...。彼のストレスは頂点に達し、転移先を
指定したであろう神に激怒した彼は周囲を焦土に変え
た。しかも、それで周囲の温度が上がり自分にキレる
無限ループの始まりである。
またある時は風で前髪が乱された時。デコひろを気に
している彼は前髪が吹き飛ばされた瞬間激怒し、風に
向かい熱風を吹き飛ばし大気の循環を一時的に逆行さ
せた。
その他、数えていたらキリがなかった。
「所詮スキルってのは与えられた物で、俺には分不相
応な代物だったってわけか...。」
彼は悔恨の念と空腹、自分への怒りを滾らせながらも
地面に倒れ臥していた。彼が異世界に来てから3日間、
彼は動物を解体するストレスに耐えきれず仕留めた獲
物を尽く灰にしてしまい、何も食べれずにいた。それ
なら果物をとも思ったが異世界のそれは明らかに毒が
ありそうな見かけで食べる気がしなかったのだ。そし
て、彼の意志に反して力を勝手に振るわれることでエ
ネルギー消費も激しかった。3日持っただけでもすごい
ことである。
しかし、頻発する謎の発火現象から街に避難する途中
の行商人が彼を街に連れていくこととなる。
そして、街が消えた。
きっかけは些細なことだった。行商人の家に運ばれた
彼は、好奇心旺盛なその子供に「起きて〜!」とちょ
っかいをかけられたのだ。それが不味かった、誰でも
寝ている時に騒音を立てられたら不愉快になる。朝の
掃除機は最悪だ。しかし、彼の場合スキルによってそ
の不愉快が致命的なものになってしまう。寝起きだっ
たからだろうか、街が一瞬で焼け消えたということは
無かった。しかし、彼の怒りの炎は街を駆け抜け住民
達の肺を焦がしゆっくりと時間をかけて呼吸困難に陥
らせた。比較的近くにいた人間達は熱風に吹き飛ばさ
れ、木の枝に突き刺さって死んだり、壁にぶつかって
気絶してから死んだりとまだマシな死に方をしてい
た。もちろん彼を起こした子供は即死である。
最終的に人口10万を越える大都市は1日にしてその人
口の95%以上を失い街は全焼。焼け野原と化したので
あった。
彼は激怒した、軽率な過去の自分へ人を殺した今の自
分へ、説明を怠った神へ。その怒りは連鎖し、異世界
を焦土に変えていく。
当然、 未曾有の脅威に晒された異世界に住まう人類と
彼との戦争が始まる。
泥沼だった、彼は殺されても仕方ないと思っていたが
傷を受ければスキルの副作用で血が上る。そして殺す
と自分への怒りで血が上る。そして殺す。負の無限ル
ープである。一方人類も生き残りをかけて命懸けの総
力戦を仕掛けてくるのだ。
ついには彼の心は死んでいった。怒りという感情は常
にあるがそれはスキルによって強制的に作られたもの
だ。彼由来の感情というのは失われつつあったのだ。
もはや彼に残ったのはただ一つの思い「誰か自分を止
めてくれ」だけだ。
そして、それを唯一叶えられる可能性を持つ人類軍最
強の男、勇者との一騎打ちで彼は永久に封印される結
果となった。勇者と言えども彼を殺しきることは出来
なかった。
封印というのは元々相手を永久に閉じ込め、苦痛を与
えるというものらしく生命維持装置のような役割も最
初から付けられているらしく、彼は封印されたまま生
き続けることとなった。
彼はひたすら殺した人達に懺悔し、スキルと戦い続け
た。能力と言うよりむしろ障害と言って差し支えない
それと向き合い続け、1000年以上の時を経て彼は悟り
を開く。怒りを制御し、スキルを我がものとしたので
ある。そのスキルは確かに神に与えられたものであっ
たが、長い時を経て今完全に彼のものとなった。そし
て、それは「憤怒の権能」と呼ぶのがふさわしいだろ
う。
ここから本当の彼の冒険が始まる。
もっとネタ感出したかったんだけど。しかも最後の終わり方打ち切り漫画感ひどい。