第四話 レイフの告白
時が経つのは早いもので、あっという間にお昼の時間だ。
授業では、隣のルーカスと席をくっつけて一緒に教科書を見た。いつもだったらスティーナと隣で無言で授業をうけているので新鮮だった。
さてレイフ達は今どこにいるのかというと、中庭にいる。ルーカス、オリヴェルを加えての三人だ。ランチテーブルには他の生徒も結構いたので、レイフ達はちょっと離れたベンチに横並びに座りお弁当を広げる。
教室でも良いんだけど、ルーカスに学校を案内するついでっていうのと、あとはレイフが個人的な相談をするためだ。前々から言おうと思っていたけど、なかなか言うのが躊躇われた。最初はオリヴェルだけに言おうと思っていたが、ルーカスも何か事情を知っているかもしれないのでついでに聞いてもらうことにした。
「二人とも、食べながらでいいから聞いてほしいことがあるんだ」
「うん」
ルーカスが、親分さんが持たせてくれたのだろう、見たこともないようなおかずが入っているお弁当を食べながら頷く。それは食べても良いものなのか……。ヤバいものにしか見えない。
「オリヴェルは僕の家知ってるよね?」
「わりと港から近いところだよね、何回か行ったことあるよ」
「家に裏口があることは知ってる?」
「うん知ってる。たしか幅が広い階段があるところでしょ」
「そうそう。で、実はそこの階段に二人の子供が住み着いてるんだ」
「ええーっ!」
思いもよらなかったのか、ルーカスは驚きの表情を浮かべる。
「それ本当?」
オリヴェルも目を丸くして尋ねてきた。
「うん。一週間ぐらい前からなんだ。二人で何かを相談しているみたいな様子なんだけど、結構真剣な感じだったから話しかけづらくって」
「それって……」
ルーカスが何かを考えるような様子で呟く。
「ルーカス、最近子供達の間で何かあった?」
「うーん。心当たりはあるっちゃあるけど……。その……少し言いづらいっていうか」
やっぱりそうか。でもここは無理に聞かない方が良いかもしれない。
「えっ! ルーカスって『ノトムタウンの子供達』に詳しいの?」
オリヴェルが驚いて尋ねる。
しまった、オリヴェルはまだルーカスがストリートチルドレンだって知らないんだった!どうしよう言っちゃっていいのかなぁ。
そう思い、ルーカスをチラ見する。
「詳しいっていうか俺自身がそうなんだ」
あっさり言ってしまった‼︎ 普通そういうのって隠すんじゃないの。
自分が、意地悪な大人子供に虐められているストリートチルドレンをよく見るからそういう考え方なのかもしれないけど。
そういうの隠さず言うの、ちょっとカッコいいなって思ってしまう。
しかし若干の照れがあるのか、ルーカスははにかみを見せた。
「へぇ〜そうなんだ。全然そうに見えない」
オリヴェルが感心したように言う。
「まあな。詳しいことは後で話すよ。今はレイフの話を聞こう」
「わかった。後でたくさん話聞かせて」
オリヴェルは納得しレイフに向き直った。
さすがはオリヴェル呑み込みが早い。
「まあ状況はさっき言った通りで、僕としては特に困ったことは何もないんだけど……」
「けど?」
「うちのパパそういうの絶対許さないタイプで、見つかったらきっと大変なことになっちゃうから二人が心配だなぁって」
「ええっ! レイフ優しすぎでしょ。普通だったらそんなこと気にしないよ」
オリヴェルが信じられないというような顔で言う。
そうかなぁ。
「そうだな、レイフは優しすぎだ。もし殴られたり通報されたりしてもそいつらの自業自得だ」
ルーカスも言う。
「でも、心配なものは心配なんだ。なんとか立退くよう説得したい。そんで、何か困っていることがあったら助けてあげたいんだ」
何か事情があるかもしれないのに見捨てられない。レイフはそういう性格だった。
「……わかったよ。僕今日レイフの家に行く」
オリヴェルが笑顔でベンチから立ち上がった。
「俺も行くよ」
ルーカスも続けて立ち上がり言った。
「一緒に来てくれるの?」
正直、さっき反対されたから諦めかけてたけど良かった。
「当たり前じゃん。レイフが困ってたら絶対助けるよ」
「俺もレイフには感謝してるし、手伝えることがあったらなんでもする」
「二人とも……」
ほんとに僕はいい人達に囲まれてると思う。
レイフはお弁当箱を置き、二人に抱きついた。
「ちょっ」
オリヴェルは顔を赤く染めた。
「あははは」
ルーカスは楽しそうに笑っている。
「よし今日は三人で一緒に帰ろ!」