第三話 レイフの仲間達
無事に一限目の授業が終わり休み時間に入ると、レイフの周りにたくさんの人が集まってきた。
「レイフ君! なんなのあのイケメンは! どこで会ったの⁉︎」
「 なんか既に仲よさげな感じだし!」
女子達がルーカスのことでわいわい騒いでいるが、当の本人は校長先生に挨拶をするため職員室に行っている。うんうん、確かにかっこいいし、普通に学校に通ってたらモテてただろうなーと思う。
「たまたま市場であっただけだよ」
「そうなんだー」
「へぇーー?良かったじゃない。お友達ができて」
突然スティーナが目の前に来て大声で言った。
「げ、いつの間に」
「なによ人を化け物みたいに」
「なんの用だ」
「あなたにルーカス君は勿体無いんじゃないかしら?」
……まぁ、確かにそれはある。 ルーカスはかっこいいしいい子だし、仲良い友達がオリヴェルぐらいしかいない僕には勿体無いかもしれない。
「で、でもルーカスは絶対僕の友達だよ」
「あなたみたいな人が友達だなんてルーカス君が可哀想だわ」
わー酷い言われよう。でも下手に怒って喧嘩は起こしたくないから聞き流そう。
「それは言い過ぎじゃないかな」
背後からから声がして振り返るとそこにはオリヴェルがいた。スティーナよりも若干明るい赤茶色の髪の毛に、スカイブルーの眼、僕の親友であり救世主的存在。
「オリヴェルさんが入ってくると毎回話がややこしくなるからあっち行っててくださる?」
「いい加減その態度を改めたらどうだい。レイフが何をしたっていうんだ」
「今その話はしてないわ」
「いいや、まずはそれを解決しなきゃ話にならない」
オリヴェルは優しいのだが、スティーナに対しては少し攻撃的なところがあって二人が顔を合わせると必ず喧嘩になる。ここは僕が仲裁しなきゃ。
「まぁまぁ二人とも落ち着いて。今は喧嘩してる場合じゃないよ。僕、ルーカスにはできるだけ学校のことを知ってもらいたいって思ってるんだ。どうしたらいいか一緒に考えてくれない?」
「私はまだあなたがルーカス君の友達だって認めてないわ」
「またそういうことを」
「おーおー始まってるな」
アルヴァー先生がひょいっと顔を覗かせた。最近、先生はこうやって話に参加してくることが多い。場を収めてくれることもあるが、大抵はヒートアップして話をおおごとにしてしまうので、良いのかどうかは分からない。
「せんせー何とかしてくださいよー」
「面白いからもう少し見てよう」
……。うん、自由だ! でもそういうところが良い。
そんなことを思っているうちに、喧嘩が激しくなってきた。
「私が何を言ったってオリヴェルさんには関係ないでしょう」
「だけどレイフに対してキツく言うのは見過ごせないんだ」
「うぅ〜このっ! いい加減ほっといて!」
スティーナがオリヴェルに摑みかかった。
「ストーーーップ!そこまで」
アルヴァー先生も流石にまずいと思ったのか二人を止めにかかる。
「「先生は入ってこないでください!」」
スティーナが、掴んでいたオリヴェルの服を離しドンッと肩を押す。
「あっ」
オリヴェルがバランスを崩し大きく後ろに仰け反った。
レイフは、危ない! と思い咄嗟にオリヴェルの背中側に回る。
ドン!
「「痛っ‼︎」」
アルヴァー先生もまったく同じことを考えていたのか、二人で派手にぶつかってしまった。
「うわあ!」
元の体勢に戻りきれなかったオリヴェルが上から降ってくる。
ドスーン‼︎
教室中に大きな音が響き渡った。
幸い、周りにいた女子たちはスティーナ達が喧嘩を始めた頃にはもう去ってしまったようでこれ以上の被害は出なかったみたいだ。
いやー三人で盛大に体を打ち付けてしまった。
いたたたたー、二人とも大丈夫かな。
視線を感じ、見上げるとルーカスが苦笑いで立っていた。えぇっいつの間に帰ってきたの⁉ ︎気付かなかった。
「大丈夫?」
「うん、なんとか……」
ルーカスが手を貸してくれたので、それを掴んで立ち上がる。
「それにしてもあの子凄いなー。一人で三人の男を倒すなんて」
オリヴェルとアルヴァー先生に「やり過ぎた」と謝っているスティーナを見て感心するように言う。
レイフは一瞬固まった。そしてすぐに、ルーカスが何かを勘違いしていることに気が付いた。