第十話 マックスと招き猫?
「ニャーニャー声がすると思ったら……この宿、動物持ち込み禁止なんですけど」
「えぇ!」
初めての宿、夕食も食べ終え猫との優雅な時間を過ごしていたマックスは、突然部屋に入ってきた宿の女の子にそう言われてしまった。
「見つかったら私がボスに怒られるんで、なんとかして下さい」
「だからって追い出すわけにはいかないっぺ!」
マックスはハッピーチョコを抱き上げる。
「じゃあ一旦私に寄越しなさい」
そう言って、女の子はハッピーチョコを引っ張った。
「ニ゛ャー‼︎」
「あっ」
ハッピーチョコは二人の腕をすり抜け、マウリッツが寝ている布団の中に潜り込んでしまった。
「ん……」
その音で、マウリッツは長い眠りから目を覚ました。
「あ、こっち来たんだハッピーキャンディー。一緒に寝よ」
「ニャーォ」
マウリッツは寝ぼけ眼で呟く。
……和むわー。
猫を抱きしめるマウリッツは童話の挿絵みたいな雰囲気があって癒される。
いつもはちょっと暴力的でなかなか見れないだけに。
「ちょいちょい」
「なんだっぺ? ていうか君誰だっぺ」
「私はフローラ、この宿で働いてるんです」
「へぇ〜そうなんだっぺか。宿か……なんか楽しそうだっぺ」
こんな広いところで毎日生活出来るなんて、マックスからしたら夢のようだ。
「いやいやいや! あなた達みたいな客が沢山いるから大変ですよ」
フローラは大きな声で言った。
「炭鉱夫よりは全然マシだっぺ」
つるはしを持って鉱山を掘り進み、石炭が満帆になったらワゴンで運ぶ単純作業だけど、これが結構大変。
「! あなた炭鉱で働いてるんですか?」
「そうだっぺ。こいつも一緒だっぺ」
マックスは寝息を立て始めたマウリッツを指差しながら言う。
「だからか……」
「何がだっぺ?」
「この子ちょっと痩せすぎじゃないですか?」
フローラはマウリッツの近くに寄ってって言い放つ。
「うーん。確かに普通よりかは痩せてるかもしれないけど、そこまでじゃない気がするっぺ」
「私からしたらこんなの骨ですよ。鳥のささ身を毎日十本は食べさせたいかな」
「俺たちそんな贅沢な生活出来ないっぺ……。それにこいつ太ったら動きが鈍るって言ってあんまり飯を食べようとしないんだっぺ」
「それは逆に良くないですね。そうするぐらいだったらいっぱい食べて運動する方が良いです」
「だっぺな〜」
「ここで一つランニングマシーンでも貸してあげれたらーー」
「えっ⁉︎ ランニングマシーン持ってるっぺ⁉︎」
「……だったらかっこいいんですけどね!」
フローラはわははと笑い出す。
「おーいフローラー‼︎ どこ行ったんだい⁉︎」
「やばっ! ボスが呼んでる! 話し相手になってくれてありがと! サンキューソーマッチベリベリグー!」
フローラは勢いよくドアを開け飛び出した。
「結局猫は良かったんだっぺな……」
こうしてマックスはフローラとの不思議な出会いを果たしたのである。




