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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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089.村を憂う者

「マジでかっ……!」


 ジルがクローディアに集めてもらった資料を見せて、これまでの教会の不正やら悪事、そして極めつけのドラゴンによるファルト村の殲滅計画。


 乱暴に資料をめくってはその内容にグラットは激怒し、顔を真っ赤にさせていた。


「それでどうするのー? まだ教会に義理立てするー?」


「そ、それは……きょ・教会には孤児だった俺を恩がある。それに『草』として教会に尽くすように言われ育ってきた。う・裏切るわけには……」


 おいおい、まだ教会に義理立てするのかよ。


 これには俺だけでなく、お気に入りの皆もそう思ったらしく、文句が飛び交っていた。


『はぁ? こいつ何を言っているんだ? 教会自身がお前を裏切っているんだぞ?』


『う~ん、この男の態度を見ると教会を盲目しているわけでもないよね~』


『おかしいな、義理立てするのか? 捨てられたのに』


『何かしらの精神操作を受けている可能性もありますね。きゅー、この男を【鑑定】して見て下さい』


 はーちゃんやふーちゃんは文句を言っていたが、えんちゃんとぼーちゃんは何処かおかしいと思ったらしい。


『確かにおかしいな。ちょっと待て。【鑑定】!』




 名前:グラット

 種族:ヒューマン

 状態:強迫観念

 スキル:農業Lv22

 備考:Alice神教教会所属『草』




 強迫観念……?


 更に【解析】で詳しく見てみると、スキルの効果じゃなく、素で洗脳されていたようだ。


 まぁ、ここまで追い込むのにスキルを使ったんだろうが、スキル無しで洗脳するなんてパネェな、あのクソババァ。


 原因が分かれば後は簡単だ。


 俺は【クリアマインド】のスキルを使い、グラットに植え付けられている強迫観念を解除する。


「メリーナさんやバリー君が死んじゃうんだよー? それでもいいのー?」


「そ、それはダメだ! 妻や息子は関係ないだろ!」


「でもー、枢機卿のおばーさんはそれを壊そうとしているんだよー。それでもまだ協力するのー?」


「協力したら、メリーナが……バリーが……。そうか、教会は最初から俺を捨てるつもりで……『草』は何処にでもあるし、簡単に刈り取れるもんな……はは」


 正確には教会じゃなく、あのクソババァだけどな


 強迫観念が取れたのか、協力的になって来たな。


「それじゃあ、私に協力してくれるー?」


「ああ、分かった。妻と息子を護るために教会と戦おう」


「ありがとー! 表向きは『草』として活動して教会を裏切ったと思わせないようにしててねー。所謂2重スパイだねー」


「ああ。これからはそれでいいんだろうが、この後行われる予定の計画のドラゴンの襲撃は、ジルちゃんなら間違いなく防げるんだな?」


「うんー、任せてー。ドラゴンの1匹くらいなら大丈夫だよー」


 当初の計画ならドラゴン1匹だが、ジルが居る事が判明したからなぁ。


 あのクソババァが宣戦布告を受けてどう計画を変更してくるか。


 ……まぁ、ジルと俺達なら大丈夫だろう。伊達に20年も迷宮大森林の最奥で過ごしてきた訳じゃない。


「……おお、頼もしいな。流石はジルちゃん、かな。はは、俺は何を見ていたんだろうな。こんな頼もしい猛女が居るのに、教会に靡いていたなんて」


 数年前のジルの規格外さを思い出したのか、グラットはすっきりした表情で笑っていた。


「それじゃ、数日したらドラゴンが襲ってくると思うけどー、慌てないで避難してねー。その後の事も、教会への報告は上手く誤魔化してねー」


「ああ、頼んだぜ!」


 よし、これでファルト村の中の監視者はこっちの味方に付けた。


 もうこれでファルト村からあのクソババァへ不利な報告は行かないだろう。


「(ねー、きゅーちゃんー)」


『どーした?』


「(教会に行って、神父さんに会ってきたいけどいいー?)」


『あー、そっか、そう言えば神父が居たか』


 アルベルトが勇者だと王都教会へ報告したのは、ファルト村の神父だ。


 こう言えば、神父も王都教会の手先のようにも聞こえるが、彼はただ単に純粋に既定に乗っ取って報告しただけだ。


 まぁ、もしかしたらグラットみたいに、密かにクソババァに指令を受けてファルト村の教会に派遣されたのかもしれないが。


 疑えばキリがないが、ジルは神父の真意を探りたいと言っている訳だ。


『いいぜ。この際だ、村の中の不安は取り除いておこう。まぁ悪いようにはならないだろう』


「(それって、【第六感】ー?)」


『まぁな』


 ジルはそのまま教会へ向かう。


 暫くすると、ジルにとっては見慣れた、俺にとっては野盗騒ぎの時に立てこもった印象が残る教会が現れた。


「こんにちはー」


「……これは、このような田舎の教会に珍しいお客さんですね」


 中に入ると、神父は正面の十字架に祈りをささげていた。


 ジルが来たことで祈りを止め、参拝客として迎えてくれたが、どうやらジルだと分からずに通りすがりの冒険者だと思われたようだ。


「女神Alice様は全ての者に祝福を与えます。ですがそれは平等にとは言えません。このような田舎の教会で与えられる祝福はささやかなものにしかなりません」


 この場合の祝福は、5歳の時に与えられる『祝福(ブレッシング)』じゃなく、単に加護とか幸運とか言ったものをさしている。


 つまり、こんな田舎より、王都とかもっと都会の教会に行って祈りを捧げよと勧めているんだろう。


 つーか、普通は折角来た金蔓なんだから、さり気なく寄付金をねだればいいものを。


「あのー、神父さんー。私だよー。ジルベールだよー」


「……………………ジルベール、さん?」


「うんー、そうだよー」


「ああ、ああああああああああああああああああ、女神Alice様、感謝します。私の祈りを届けて下さって」


 神父は目の前に居るのがジルだと分かると歓喜のあまり涙を流し、女神Aliceに感謝していた。












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