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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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088.村を監視するもの達2

 あのクソババァが計画していたのは、ドラゴンによるファルト村の殲滅。


 おそらくだが、最初からこの事を視野に入れてアルベルトを育成していたと思われる。


 ファルト村を人質に取るのは最初だけで、ある程度勇者育成計画が軌道に乗れば、アルベルトを縛るのはファルト村でなくてもよくなるようにと。


 そして実際にファルト村を殲滅させることにより、アルベルトの所為で故郷が滅ぼされたと自責の念に駆られるように仕向けるつもりだろう。


 だが残念だったな。


 今この村にはジルが居る。


 ファルト村が生んだ世紀の規格外娘・S級冒険者の『幻』のジルベールがな!


 見張り役であるハイドラを挑発しておいたから、何かしらの反応があったら見張りを付けたクローディアから連絡が来る予定だ。


 それまでファルト村で様子見か。


 と、その前に、もう1人(・・・・)の監視者に接触しますか。


「(でも本当に教会の監視者なのー?)」


『ああ、ジルにとっては信じられないだろうが、間違いないよ。何時か何か対応できるように密かに何年も前からあらゆる村・町に住人として潜ませているんだ。そいつもその1人だよ』


 所謂、『草』と呼ばれるスパイだ。


 何も無ければ本当にその村・町の住人として生を終えるんだろうが、ファルト村にはアルベルトと言う勇者が誕生してしまったからな。


 そこでファルト村に何年も前から潜ませていた『草』を中からの監視者として指令を与えられたわけだ。


 この3年のクローディアの献身的な情報収集により、ファルト村にも『草』が居る事が判明していた。


 中で監視しながら情報収集し、外で監視しているハイドラへと伝える。


 ジルは今日村に戻って来たばかりで、しかも大人の姿での帰郷だった為、ジルの情報はまだハイドラには伝わってなかったのだ。


「(何年も前からなんて、ずっと私達を騙していたのかなー?)」


『いや、本人たちは騙しているつもりはないだろう。実際ファルト村の村人として生活しているし、教会からの任務は仕事の一環のつもりだろう』


「(初めから裏切るつもりはなかったってことー?)」


『ああ、それが『草』の恐ろしいところでもあり、厄介なところでもある』


「(うーんー、上手く説得できるかなー?)」


『大丈夫だろ。何せ教会が裏切って来るんだから』


 ジルは周囲を見渡しながら、目的の人物を捜す。


 お、居た居た。


 本当に如何にも村人の30代くらいの男。


 何処にでもいそうな、冴えない無精ひげを生やして農作業の帰りか、手には鍬を持っていた。


「あー、グラットさんー、お久しぶりー」


「は? だ、だれだ? 俺はあんたみたいな綺麗な人は知らないぞ?」


 突然のジルに声を掛けられ戸惑うグラット。


 村長からジルのことが説明される予定なのだが、まだのようだな。って当たり前か。戻ってきてまだ数時間しか経ってないや。


「私だよー。ジルだよー」


「……はぁぁ!? ジルちゃん!? え? マジで!? ちょっ、3年も見ないうちに大きくなって……って大きくなりすぎだろ!?」


「あははー、色々あってねー」


「色々って……ああ、ジルちゃんだからそれもありなのか……」


 ああ、ジルの規格外さで納得させられている。


 日ごろの行いって大事だな……


「私こう見えてS級冒険者になったんだよー」


「マジか……!? そう言えば3年くらい前にジルちゃんがS級冒険者になったって噂を聞いた気がしたが、マジだったんだ」


「それで、S級冒険者だから色々な情報が入って来てねー。グラットさんに聞きたい事があったんだー」


「ああ、俺で答えられることなら答えるが」


「グラットさんー、教会の、“勇”の枢機卿の『草』だって本当ー?」


「っ!」


 ジルの思いがけない問いに、グラットは言葉を詰まらせる。


「な、何の事か分からないな。『草』ってその辺に生えている草の事か?」


 その態度で嘘をついているのが丸分かりだがな。


 【センスライ】の嘘感知魔法でも嘘を付いているのが分かる。


「グラットさんー、もう分かっているんだよー。私アル君の事で枢機卿のおばーちゃんと衝突していてねー。その関連でファルト村に監視が付いていることが分かったのー」


「…………」


「グラットさんは18年前に、ファルト村に来たんだよねー。最初はただの村人としてー。でもいつか教会から指令が来るかもしれないから村人として生活してろって言われたんだよねー」


「………………っち。何もかもお見通しって訳か」


 それまで黙って聞いていたグラットは観念したかのように大きくため息を付き、肯定した。


「ああ、そうだよ。俺は教会の『草』だよ。俺は小さい頃は王都のスラムで孤児だった。食うに困る生活をしていてその日暮らしで生きていくのが精一杯だった。そこを救ってくれたのがAlice神教教会だ」


 あー、まぁありがちな話だな。


 幼い孤児を拾い上げ教育し、優秀なのは新たな教徒や教会の聖騎士などにしているんだろう。


 その中で密かに『草』などの裏方仕事が出来る奴も育てていると。


「そうして読み書きの教育を施してもらい、俺はファルト村に送り込まれた。何時か教会から指令を伝えるが、それまで村人として生活しろと」


「そうしてアル君が勇者として祝福(ブレッシング)を受けたから、『草』としてファルト村を監視しろって指令を受けたんだねー?」


「ああ、孤児である俺を拾って育ててもらった恩がある。それに『草』としての指令は、ファルト村に変わったことが無いか報告するだけだ。だから誓ってもいい。俺はファルト村の住人だ。村には妻も子も居る。俺は身も心も既にファルト村に捧げる覚悟でいる。ファルト村に不利になるようなことはしない。見逃してくれ」


 いやいや、ファルト村の情報を渡している時点で不利な事をしているから。


「じゃあさー、教会を裏切って、私に付いて欲しいって言ったらどうするのー?」


「きょ、教会は裏切れない……」


「うーんー、Alice神教教会……と言うより、“勇”の枢機卿が裏で色々悪さをしているって知ってるー?」


「……は? 何だそれは? 教会が悪事を働いているって言うのか……?」


 流石にそこまでは知らないか。


 所詮村の住人として生活するように潜んでいる『草』だからな。


「それと最新情報ではー、ファルト村をドラゴンに襲わせるって言ってるよー。それでも枢機卿のおばーちゃんに義理立てするのー?」


「はぁっ!? ちょっと待て! そんな事は聞いてないぞっ!! ファルト村をドラゴンい襲わせるって……ふざけるな!!」


 おーおー、流石にこれにはグラット君、激おこです。











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