086.影の協力者
クローディアとの再会は20年ぶり……じゃなかったりする。
実はジルが20年ぶりに迷宮大森林を抜けた時、何とそこにはクローディアが待ち構えていたのだ。
何でも外の世界で3年間もの間、時空波紋に呑まれたジルを捜し続けてくれていたのだ。
世界中を捜し続け、迷宮大森林の出口は重要地点の1つだったらしい。
その日、たまたま監視していたクローディアがジルを発見したのだ。
時空波紋で空間も時間も何処に飛ばされたかもわからないのに、よくもまぁ根気よく探し続けてくれたものだ。
幸い、と言っていいのか、ジルは同じ時間の迷宮大森林の最奥に飛ばされたので、問題は大森林の最奥からの脱出だったが、結局は時空間が歪んだ迷宮大森林に20年もの間、捕らわれてしまったわけだが。
久々に再会したクローディアと情報交換をしたのだが、まぁ、やっぱりと言うか、外の世界では色々な事が起こっていた。
なんと、クローディアとシロップは影ギルドを止めてシルバー王子に仕えていた。
シルバー王子の専属宮廷魔導師と専属隠密として。
そのシルバー王子だが、王族が嫌で太陽王国を出奔したはずが、何故か王国に戻り兄王子達全てを蹴散らして王太子になっていた。
何でも、自分の出奔に巻き込まれたジルを救う為、手っ取り早い手段として権力を手に入れるべく王太子になったと言う。
あれだけ権力を毛嫌いしていたシルバー王子がよくもまぁ心変わりしたものだ。
それだけジルが時空波紋に巻き込まれたのに責任を感じたのか。
それ以前に、マックスが命を落とした責任も負っていたのだろう。
そんな訳で、シルバー王子は王太子の権力を使い、世界中にジルを捜索させたわけだ。
その過程で、ジルの目的である、弟関連を調べたのだが、そこでAlice神教教会のきな臭い話が出て来るわ出て来るわ。
尤も、きな臭い話はあのクソババァ関連が殆んどらしい。
最初、Alice神教教会に出奔しようとしていたシルバー王太子もこの情報を見て、あのままアリスティラ大神殿に向かっていたらどうなっていたかと、ある意味これもジルのお蔭ではと感謝ししていたみたいだ。
クローディアはこの3年間の大まかな世界情勢、クローディア達の状況、Alice神教教会の情報をジルに伝え、今後の指示を仰いだ。
クローディアはこのままジルのお付の隠密として協力するようにシルバー王太子に特命を与えられているらしい。
そこで取り敢えず俺は、ジルと再会したことをシルバー王太子に報告と、Alice神教教会に関する悪事の資料を持って来るようにジルからクローディアに伝えてもらった訳だ。
クローディアが一度太陽王国に戻っている間、ジルはアルベルトを一目見ようと聖王国の王都セントールへ向かったわけだ。
まぁそこからひと騒動あった訳だが、待ち合わせのジルの故郷のファルト村に来るのが遅れたので、クローディアを待たせてしまったと。
「シルバー王太子様はジルベールさんの無事に心より喜んでおりました。まぁ、外見が大きく変わった事は、中々想像し辛いようでしたが」
「まぁ、一気に子供から大人になったと言われても、んー?ってなっちゃうよねー」
「ですが、どんな姿になってもシルバー王太子様がジルベールさんを助ける気持ちには変わりありません。これからはシルバー王太子様と我々が影ながらジルベールさんのサポートをしてまいります」
「うんー、ありがとうー。凄い助かるよー」
うん、マジで助かるよ。
流石にジル1人じゃ出来ない事もあるしな。
「それで、これがシルバー王太子様が集めていたAlice神教教会――いえ、“勇”の枢機卿に関する情報の資料です」
クローディアがあのクソババァに関する書類をジルに渡す。
ざっと目を通すが、再会した時にクローディアから伝えられた情報の通りだ。
・教会の寄付金の横流し
・教会資金の横領
・寄付金の強制徴収
・教会の権力による私的行為
・勇人部隊の無銭飲食
・勇人部隊の私的暴力
・勇人部隊による私刑
ざっとあげただけでもこれだけの事が行われている訳だ。
さらに酷いのが――
・勇人部隊による村の殲滅
この資料によると、確認されているだけで5つの村が滅ぼされているらしい。
ん? 村の殲滅でちょっと気になる点があるな。
『ジル、ちょっとそこのページと前のページを見せてくれ』
「(うんー、何か気になるのがあったー?)」
3つは勇人部隊の欲望のための暴力行為だが、残りの2つは……ちょっと理由が勇人部隊っぽくない?
勇人部隊が最初に設立された頃の1件と、勇人部隊が最盛期の頃の1件。
どちらも遊びが無い。
酷い言い方かもしれないが、勇人部隊が欲望の為に村人で遊んでいる様子は無く、容赦なく一気に殲滅しているみたいだ。
それもある一か所を重点的に。
これは、あのクソババァの指示か?
調べてみる価値はあるかもな。
『ジル、この2つの村に関する事を、クローディアに調べておいてもらってくれ』
「(分かったー)」
まぁ、これだけの証拠の資料があれば、あのクソババァを失脚させることは出来るんだが、提出する先が問題なんだよなぁ。
普通に教会に出せば握りつぶされるだろうし、聖王国も論外だな。教会の権力に支配されているから。
そう言う意味では世界中の国がAlice神教に支配されているから、証拠が闇に葬られる可能性が高い。
まぁ、唯一シルバー王太子が居る太陽王国サンフェルズならそんな事は無いが、立ち回りを間違えれば太陽王国は世界中の敵に回ってしまうから、そう簡単にはいかないし。
後は互助組織である、教会と同じように世界中に組織のある冒険者ギルドか。
ジルはS級冒険者であるから話も通りやすいだろう。
太陽王国にしろ冒険者ギルドにしろ、証拠書類を出してクソババァを失脚、と簡単にいかないんだよなぁ。
下手をすればアルベルトにも累が及ぶ可能性があるとなると、おいそれと責任を突きつける訳にはいかない。
ベストなのは、世間に知られることなくクソババァと勇人部隊を穏便に引きずりおろし、アルベルトの勇者を続行させることだな。
難易度高いな、このクエスト!
まぁいい。取り敢えず、今は村を監視しているもう1人の不審人物に会いに行くか。
証拠書類は手に入れたし、少しずつ切り崩していくぜ。
「(宣戦布告に行くんだねー)」
『おうよ。ようやくクソババァにギャフンと言わせる時が来たぜ!』




