表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
87/357

077.Lv3

 迷宮大森林の最奥に閉じ込められて20年。


 最奥からの脱出の為、ジルはあらゆる手段を講じた。


 その内の1つが【ストーンコレクター】のLv3だ。


 最奥のモンスターの強さはA級並みなのはざらだ。


 そのA級モンスターの群れを突破して最奥から脱出しなければならない。


 スキルのLvUpは最も有効な手段の1つでもある。


 そしてジルはこの20年で特殊(エクストラ)系スキルでは珍しいLv3の力を手に入れたのだ。


 【ストーンコレクター】のLv3のLvUpに伴い、お気に入りの皆の特殊能力がまた1つ増えた。


 俺も【百花繚乱】【千載一遇】に続き、新たなスキル【森羅万象】を手に入れたのだ。


 はっきり言って【森羅万象】のスキルはチート中のチートだ。


 何せ、全てのスキルを使用する事が出来るのだ。


 【百花繚乱】では不可能だった、希少(レア)スキルや固有(ユニーク)スキルすらも使用する事が出来るのだ。


 尤も、全てのスキルを使用できるからと言って、無双が出来る訳じゃない。


 いや、最初は俺も【森羅万象】を得て、天狗になってたよ。


 だがこのスキルの使い辛さに俺は頭を抱えた。


 確かに全てのスキルを使用できるが、使い方がシビアなのだ。


 例えば【百花繚乱】で【ファイヤーボール】を使おうとすれば、普通に火球を作り出すことが出来る。


 だが【森羅万象】で【ファイヤーボール】を使おうとすれば、火球の大きさ、火力、熱量、密度、飛距離、速度などを自分で調節して放たなければならない。


 いちいち放つたびに全てを自分でコントロールをしなければまともに放つことも出来ないのだ。


 【百花繚乱】をオートマ車だとすれば、【森羅万象】はマニュアル車だと言えよう。


 【森羅万象】は全てのスキルが使えると言うが、全てのスキルにこの調整(コントロール)を出来るのだろうかと言われれば、答えは否としか言えない。


 勿論、俺もこの20年の間に出来るだけ【森羅万象】でなるべく自然にスキルを放てるように熟練度を上げて来たが、流石に全てを調整(コントロール)出来た訳じゃない。


 だが、ジルの身に襲い掛かるであろう毒に対しての対策は万全だ。


 確かにマードックが言う通り、奴の放った毒は【百花繚乱】の【キュアポイズン】じゃ解毒は出来なかった。


 【百花繚乱】のオート機能の【キュアポイズン】じゃ細かい調整が出来ずに解毒機能が作用しなかったのだ。


 だが【森羅万象】の【キュアポイズン】なら解毒機能を更に精密にし、ジルを蝕む毒を分解していく事が可能だ。


 まずは【解析】でジルを蝕む毒の成分を弾きだし、麻痺毒に対しては麻痺作用のあるポイデンピリオンをパルシ酸で分解し、腐食毒のクロージンキシンをクロムリウムで打消し、媚毒のバイアグランは鎮静作用のあるトライキライザーで鎮める。


 因みに、マードックが放った毒はスキルで作り上げた毒じゃなく、スキルの調合で実物を用意した物なので【千載一遇】のスキルキャンセラーは効果は無い。


「嘘だ! 俺の【ポイズンマスター】がこんな簡単に解毒出来るものか!」


 そう叫びながら剣に新たな毒をふりかけジルに襲い掛かる。


「(きゅーちゃんー? あれって元々毒が掛かってた剣じゃなかったっけー?)」


 そういやそうだな。元々剣には媚毒が掛かっていたのに、新たな毒を被せて効果はあるのか?


 一応【解析】でマードックの剣の毒を解析する。


 被せたのは毒じゃなくピルアミンと言う抗生剤だが、バイアグランと混ぜると細胞を焼く毒のフレアミンと言う毒へ化学反応を起こす、か。


 細胞を焼く毒――火傷毒か。面白い毒だな。


 まぁ、【森羅万象】の【キュアポイズン】があるジルには効果は発揮しないがな。


 【森羅万象】の【解析】で詳細な膨大な情報を得て、その中からフレアミンに効く物質を一瞬で導きだしジルの体に与えておく。


「くそっ! 当たらねぇ! 当りさえすれば……!!」


「当たったところで無駄なんだけどねー」


 おぅ、煽る煽る。ジルさんやりますね。


 まぁ、当たっても火傷毒の効果は発揮しないんだけどな。


 と言っても、ジルの腕があれば当たらないから必要なかったか?


『用心、することに、こしたことは、なぃよ……』


『そうそう、腐っても相手もLv3のスキル持ちだからね。だからと言って姐さんの肌を傷つけた奴は許さん。ぼー、やっちまえ!』


 確かにへきちゃんとめーちゃんの言う通り油断は出来ないな。


 この後も様々な毒を使いながら襲い掛かってくるマードックをジルは軽くあしらっていた。


 俺はその間にもマードックの放つ毒に対抗策を用意していく。


「くそっ! くそっ! くそっ! 俺は【ポイズンマスター】だぞ! 何で俺の毒が効きやがらねぇ!!」


「【ポイズンマスター】ってこういうの?」


 そう言いながらジルはそこら辺に生えていた草と、マードックが撒き散らした毒の1つを掬い上げその場で調合する。


 正確には俺が【森羅万象】の【ポイズンマスター】で即時調合をしたんだがな。


「なぁっ……!!?」


 流石にマードックもこれには目を見張った。


 まさか目の前で【ポイズンマスター】のお株を奪う毒調合をやられるとは思っても見なかったろう。


 尤も調合した毒は精度が甘く使い物になるかと言えば微妙だろうがな。


 動揺しているマードックはそれには気が付かない。


 やっぱり【森羅万象】は使い勝手がムズいな。


「………これだけは使いたくなかったが仕方がねぇ。ここまで俺をコケにしたことを後悔しな。ここからの俺は簡単には止まらねぇぜ」


 マードックは新たな毒を取出し、それを自ら飲み込んだ。


「ぐぎ……ぐが……ぐぎゃぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!!」


 マードックの目の焦点が定まらず、筋肉が膨れ上がり犬歯が伸びて涎を垂らしながら四つん這いに近い前傾姿勢になる。


 その姿は正に狂犬。


 なるほどな。毒により自ら強化と狂化状態に持って行ったって事か。


 その代償として理性が極端に下がってしまうと。


 これがマードックの奥の手なら問題は無いな。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ