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この石には意志がある!  作者: 一狼
第4章 迷宮大森林・疾走編
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Side-8 ユーグ

 俺の名はユーグ・ブレイハート。


 今やAlice神教の花形とも言われる、勇人部隊の部隊長だ。


 最初はAlice神教のババァ――“勇”の枢機卿マリアベル・グレンタールに人工的に勇者を作ってみないかと誘われた時は、胡散臭さに眉を潜めたものだ。


 確かに俺は【英雄】のスキルを持っているから、そう言う誘いは多い。


 【英雄】スキルと言えば、【勇者】スキルに匹敵する程さぞかし凄いスキルと思われがちだが、【英雄】スキルはそんなにいいものじゃない。


 【英雄】スキルは、格上の相手のみに効果があるスキルだからだ。


 格上を相手にした時、己の能力が数倍から十数倍に上がるのだが、それ以外の普段は能力の変化は全くない。


 すなわち、素の能力は平凡な一般人と変わらない。


 【剣術】や【火魔法】などの技能(アビリティ)系スキルも、【英雄】発動時は多大な効果を発揮するのだが、普段はしょぼい効果しか発揮しない。


 どいつもこいつも【英雄】スキルを持つからと期待し、その実態が分かると落胆されたものだ。


 だが、素の能力が高ければ高いほど、【英雄】スキルが効果を発揮した時、莫大な力を行使できると言う事を、馬鹿にした奴らは気付いていない。


 だから俺は必死になって、素の能力を高める事に人生を費やした。


 それにより、俺は普段でも他のスキル持ちにも負けず劣らずの力を手に入れた。


 まぁ、そんな俺の噂を聞き付けババァがスカウトに来たんだろう。


 そこら辺の奴ら同様にババァも【英雄】のスキルを当てに、名声や栄誉を手にする為だと思っていたが、詳しい話を聞いてみると遠まわしに言いながら明言をしなかったが、このババァは己の欲望の為に教会を利用しようとしていた。


 ババァは【英雄】スキルだけでなく、俺の性格すらも考慮しスカウトに来たのだった。


 勿論俺はババァの誘いに乗った。


 普段は効果を発揮しないとは言え、俺は【英雄】スキルを持つ英雄だ。


 当然、俺に地位と名誉と金を手に入れるだけの権利がある。


 ババァはその手段を持って来てくれたのだ。


 まぁ、いきなりがっつくと足元を見られるから、駆け引きをして俺に有利な取引を持ちかけた。


 これにより俺はまずは勇人部隊の部隊長と言う権力を得る事が出来た。


 後はそこからはとんとん拍子に話が進んだ。


 俺の伝手を使い、性格に難があるが使える奴や、実力はイマイチだが事務系に優秀な奴等を集めた。


 そしてあっという間に勇人部隊はAlice神教の神殿騎士よりも優秀だと持てはやされ、名実ともにAlice神教の顔となった。


 まぁ、顔と言っても表向きだがな。


 裏ではババァとの盟約どおり、俺達の自由にさせてもらった。


 好き勝手に暴力を振るい、湯水の如く湧き出る金をばら撒き、言い寄る女や嫌がる女を好きなだけ抱く事が出来た。


 だが最近になって俺達の栄光に陰りが差した。


 俺達が好き勝手出来たのは、人工的に勇者を作り上げると言う目的があったからだ。


 しかし実際に【勇者】スキルを持つ勇者が現れたら?


 俺達の勇人部隊の価値が1段下がってしまうのだ。


 しかも現れた勇者はまだ5歳と言うガキだ。


 周りの目も、勇人部隊よりもガキに期待する眼差しに変わった。


 けっ、面白くねぇこった。


 まぁ、ババァはそのガキすら己の成り上がる為の足場にしたが。


 勿論俺達もその成り上がる為の計画に乗った。


 ガキより1段下に見られるが、裏からガキを操ることで美味しい目を見る事にしたのだ。


 訓練と称し、ガキをしごき自我を無くすようにしてババァの【指導者】で言う事を聞かせる。


 勇人部隊をガキの故郷に配置し、逆らえば家族や村がどうなるかと言うのを延々と説く事によりガキの気力を奪う。


 その甲斐あって、ガキは段々と暗く沈んだ目をするようになり、最後には冷たい表情をする俺達の言う事を聞く人形に仕上がった。


 ババァもこのままいけば、Alice神教の頂点、教皇になる日も近いだろう。


 俺らもババァ教皇の直属の部隊として美味しい思いが出来るってわけだ。


 そう思っていたのだが―――


「おい、最近のガキの目がいつもと違うくねぇか?」


「ん? そうか? 何時もと変わらねぇように見えるがな」


「……いや、確かに少し違う。暗い目じゃねぇ。僅かな光を見る目に変わっている。

 おい! 最近ガキの行動に何か変わったことは無かったか!?」


「いや? 何時もと変わらないぜ。精々あったとすれば、ギルドに行って周辺の村をモンスターから守るためのクエストを受けたくらいだぜ」


「あー、そういえば最近ガキの監視に付いていたマードックの奴、ギルドでえらい別嬪を見つけたってはしゃいでたな」


「もしかして食っちゃったか? ぎゃはは」


「このところ姿を見ないところを見ると、どっかで囲っているかもな」


「おいおい、俺にも声を掛けろよなぁ。今からでも探してくるか」


 ちっ! 何を暢気な事を言ってるんだ、こいつら。


「てめぇら、今俺達が美味しい思いが出来ているのはガキが俺達の管理下にあるからだ。そのガキが逆らう様になったら俺達の立場が危うくなるって事を忘れるな」


「考え過ぎじゃねぇのか? ガキが今更俺らに逆らってどうするんだよ」


「そうそう。ま、なんだったら、いつもの“訓練”を倍にするか?」


「3倍でもいいんじゃね? だって勇者様だぜ。ぎゃはは!」


 明確な根拠が無いうちはそれでガキの反抗意識を奪うか……?


「……いいか、ガキに何か変化があれば真っ先に知らせろ。それと最近ガキの監視をしていたマードックを呼べ」


 一応、最近のガキの行動を把握しておく必要がある。


 何か、嫌な予感がしてならねぇ。












第1部 -幼女-   完


次章より

第2部 -猛女-   始


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