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この石には意志がある!  作者: 一狼
第4章 迷宮大森林・疾走編
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063.アサシンバニー5

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!!!」


 ジルの攻撃がアサシンバニーを貫く。


「ギィゥッ!」


 急所を狙ったはずのジルの攻撃は、アサシンバニーの肩を貫くだけだった。


 瀕死の状態にも拘わらず、アサシンバニーは足掻いていた。


 左右の爪攻撃、額の角からの魔法攻撃、それらを向かってくるジルに放つ。


 ジルはそんな事はお構いなしに、傷つきながらも苛烈に攻撃を加えていく。


 おまけに、ふーちゃんを使っての無理やりの空中機動を使った攻撃に、体中の筋肉や骨が悲鳴を上げていた。


『ちょっ、【ヒール】【ヒール】! 【ハイヒール】! 【エクストラヒール】!

 ジル、落ち着け! って、聞こえてねぇ!』


『―――――――――――――――――ッ!!』


『―――――――――――――――――ッ!!』


『―――――――――――――――――ッ!!』


『―――――――――――――――――ッ!!』


 ジルに吊られるように、お気に入りの皆も声にならない声を上げていた。


 唯一俺だけが意思を保ったままだ。


「ギィイッ!」


 アサシンバニーは【影渡り】を使いジルの背後に出現するも、ジルは無理やり身体を捻り薙刀状になったはーちゃんつきぼーちゃんを振るう。


 ブチブチブチッ!


 ザシュッ!!


 ジルの筋肉が千切れる音と、アサシンバニーの体が縦に斬られる音が響く。


 肉を切らせて骨を断つ、って実際にやられると堪らねぇぞ、これ!


 ええいっ、こうなったら一刻も早くアサシンバニーを倒さないとジルが持たねぇ!


 長いようで短い時間の攻防の末、アサシンバニーの最後の足掻きもジルの捨て身の攻撃の前にほどなく倒れることになった。


「―――はぁっ、はぁっ、はぁっ」


 シロップ達はジルとアサシンバニーの戦いにただ呆然と見ているだけだった。


 戦いが終わった今も、ジルに声を掛けられずに呆然としている。


 ジルはそのまま体を引きずりながらマックスの元へと歩いて行く。


「……マックスー、マックスー。ねぇ、返事してよー。ねぇってばー。うう……うぁあぁぁぁぁぁん、うぁぁぁあぁぁぁぁあぁん、うあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁん」


「ジルちゃん……」


 泣きじゃくるジルにシロップは声を掛けれずにいた。


「私の所為だー、私の所為でマックスが死んじゃったー。うわぁぁぁぁん、うぁぁあぁぁぁん」


 ああ、イカン。このままじゃジルが自責の念に押しつぶされてしまう。


 そう思い、どう声を掛けようと迷っていたが、ジルの様子を見かねたクローディアが諭す。


「そんな事はありません。マックスさんは自分の意思でジルベールさんと共にここまで来たのです。決してジルベールさんの所為ではありません」


「でもー、私が巻き込んでしまったのー。本当ならマックスは東大陸で今も冒険者を続けられていたのにー」


「ジルベールさんが責任を感じるのは分かります。ですが、それ以上マックスさんの行為を否定するのは侮辱に当たりますよ。

 ジルベールさんはマックスさんに感謝はしていませんのですか?」


「感謝しているよー。マックスが居なかったらここまで来れなかったものー」


「ならばその感謝を忘れなければいいのです。それでマックスさんは救われます」


「……………ぐすっ、うんー、分かったー。このまま悲しんでばかりじゃマックスが浮かばれないねー」


 ほっ、何とか気持ちの整理がついたみたいだな。


 このまま自分のせいにして自暴自棄になられたりでもしたらヤバかったからな。


 まぁ、7歳児にしては目の前で親しい人が亡くなってこんなに直ぐに気持ちが切り替えられるのかという疑問もあるが、一先ず落ち着いたので良しとしよう。


「その……済まなかった。余の所為で、ジル殿の仲間を失う事になってしまって」


 先程までの調子に乗っていた様子とは打って変わって、シルバー王子は所在なさ気にジルに頭を下げていた。


「ううんー、シルバーの所為じゃないよー。私がマックスをここに連れてきちゃったんだから私の所為でもあるのー」


「だが……! それでは余の気が収まらん。余に何か出来ることは無いか? そうだ! マックス殿はジル殿を聖王国に送っていく途中だったな。ならば余が代わりに聖王国に送ろうではないか」


「シルバー様、なりません。シルバー様の立場をお忘れですか? ジル殿をこちらに巻き込むつもりですか?」


 あー……そう言えば、シルバー王子は逃亡中だっけ。


 コバルトの指摘は後半は小声だったが、明らかにトラブルを抱えているのが伺える。


「むぅ、だが余がこのまま受けた恩を返せずに何もせずにいると言うのは……」


「ううんー、その気持ちだけで十分だよー。マックスもそう言うと思うのー。それにシルバーも何かしらの事情を抱えて迷宮大森林に居るんでしょー? だったらそっちを優先させないとー」


「シルバーはん、失礼を承知で言わせてもらえば、自分らもジルはんらと行動を共にするのは認められへん。

 シルバーはんは自分ら裏ギルドを、ジルはんは影ギルドを雇ってはるやろ? 今は一緒のルートを通っておるけど、この後は別々のルートを通ることになるんや。それぞれのギルドが把握しているルートはおいそれと教えられるものじゃあらへん。

 行動を共にすると言う事は、片方がもう片方のルートをも知ることになるんや。それはどちらのギルドも承知せぇへんことになる」


 それぞれのギルドで抱えている迷宮大森林のルートは極秘扱いだもんな。


 幾ら金を詰まれても教えられるようなものじゃない。


 下手をすれば裏ギルドと影ギルドの抗争にまで発展する、かもしれない案件だ。


 ここはシルバーには大人しく引き下がってもらうしかないな。


「………分かった。ここは大人しく引き下がろう。だが、余はマックス殿に受けた恩は忘れない。何かあったら言ってくれ。余の出来る範囲でなら喜んで力を貸そう」


「うんー。何かあったら力を貸してもらうねー」


 力を貸すって……シルバー王子、あんた逃亡中のみだろう? そんな約束して大丈夫なのかよ。


 まぁ、気持ちは分かるけどな。


 このまま何も借りを返せないってのも心苦しいからな。


 ともあれ、こうして多大な犠牲を払ったアサシンバニーの縄張りの通過はジルの心に大きな傷を残すことになった。












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