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この石には意志がある!  作者: 一狼
第1部 「幼女」 / 第1章 ファルト村・激闘編
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005.ジルの実力

「ブランに騎士は無理だよー。だって根性ないんだもんー」


 ぶはっ(笑)


 ジルの返しに思わず笑ってしまう。


「なっ! 俺は【騎士】スキルに選ばれたんだぞ! 騎士になれるに決まっているだろう!」


「それとこれとは別だよー。【騎士】スキルがあったって、騎士になるための努力をしないで楽しようったって駄目だよー。

 そんな根性で騎士になろうとするんだったら王様とか領主様とか迷惑だよー」


 うはっ、ジルさんも結構煽るね(笑)


 ジルの言葉にブランは顔を真っ赤にして震えていた。


 まぁ、ブランの「騎士になる」は【騎士】スキル頼みの根拠ない発言だからなぁ。


 ジルにその事を指摘されて反論できないんだろう。


 ただ、反論できないって事は、自分の我を通すだけの悪ガキじゃなく、その事が分かるくらいには分別があるみたいだな。


 と思ったのだが――


「ふ、ふん! そんな努力が無くても騎士になれるのが俺様だ! 将来俺が騎士になって偉くなってから後悔しても知らないからな!

 あ、謝ってお・お・俺の女になるんだったら今の内だぞ!」


 ブランは性懲りも無く虚勢を張っていた。


 まぁ、ここまでくれば分かる。


 ブランはジルに惚れており、悪がきらしいアプローチを掛けていることが。


 その当の本人はブランに一欠けらの想いすら寄せてないがな。


「えー、ブランは好みじゃないからお断りだよー」


 うわぁ、バッサリ言ったー


 ブランは目に見えて分かるほどがっかりしている。


 これでこの場が治まればいいんだが、まぁ治まるわけないよなー


 面子が潰されたブランは勿論の事、ジルの影で怯えていたアルベルトも更に煽っちゃうし。


「おねえちゃんはブランのおんなになんかならないよ! ブランはあばれんぼうだからきらいに決まっているよ!」


「へぇ、言ってくれるね。女の影に隠れてしかものが言えない弱虫の癖に。

 だったら暴れん坊らしく無理やり俺の女にしてやるよ! おい、お前たち!」


 そう言ってブランは腰に刺していた木剣を抜き取り、従えていた子分どもをジルにけしかける。


 あ、こいつ木剣なんか持ってたのか。


 うーん、騎士を目指す為に武器を携帯していたのはちょっと感心した。


 が、よくよく考えれば只の威嚇の為だろう。


 うん、ちょっとは感心して損した。


 左右に散ってジルを3方向から囲う様に迫るブランたちだが、当のジルは全然慌てる様子が無かった。


「むー、アル君に暴力はダメだよー。私も無理矢理は嫌いー。

 ぼーちゃんー」


 ジルはアルベルトを背に庇い、石空間からぼーちゃんを取り出す。


『大丈夫なのか?』


「(大丈夫だよー。こうやってブランが力づくになるのはもう何回もあるからねー)」


 おい! 何度もあるんかい!


「ちっ、相変わらず訳わかんねぇスキルだな。

 おい、ベッシュ、魔法で牽制だ。ビリガー、お前は手数でジルの攻撃を封じろ」


「うん!」


「おう!」


 ブランはぼーちゃんを見ると警戒を顕わにし、子分の2人にそれぞれ指示を出す。


 子分の2人――ベッシュは小さな杖を取出し、ビリガーも両手に木剣を構える。


 うーん、意外と連携がしっかりしていてとても7歳児とは思えん。


「【ウインド】!」


 ベッシュが【風魔法】の【ウインド】でジルの体勢を崩して牽制する。


 その隙にビリガーが両手の木剣を連続で振るった。


 ジルはその連続攻撃をぼーちゃんで隙間なく弾く。


 おおっ、ジルも負けてないな!


 【棒術】のスキルがあるんじゃないかと思うくらい巧みにぼーちゃんを操る。


「ぼーちゃん、伸びろー!」


 伸ばしたぼーちゃんを横薙ぎに振るう。


 ビリガーと魔法を当てようと接近していたベッシュは慌てて距離を取って離れた。


 だが、ぼーちゃんを振り抜いたその隙を狙ってブランが剣を振るってきた。


「【パワースラッシュ】!」


 おおっ!?


 ブランの放った【パワースラッシュ】は【スラッシュ】の上位版だ。


 明らかに7歳児が放てるスキルじゃない。


 これも【騎士】スキルの影響か、それともブランが【パワースラッシュ】を放てるだけ優秀なのか。


 って、このままじゃジルが危ない!


『【シールド】!』


 俺は咄嗟に【光魔法】の【シールド】を唱え、ジルの前に光の盾を翳す。


 ガキンッ


 ブランの放った【パワースラッシュ】は【シールド】の前に阻まれる。


「なにっ!?」


 突然現れた光の盾にブランは驚きを顕わにする。


 よく見ればジルも腕に石の円盾を取り出しており、ブランの攻撃を防ごうとしていた。


『おっと、余計な真似だったか?』


「(ううんー。ありがとー、きゅーちゃん)」


『それもお気に入りの1つか?』


「(うんー、3番目にお気に入りしたえんちゃんー)」


 円盾だからえんちゃんか?


 取り敢えず【鑑定】!




 名前:えんちゃん

 形状:円盾型

 能力:反射(魔法)




 おおぅ、このお気に入りも大概だな。


 反射(魔法)って何だよ。


 魔法に対してかなり有効な能力じゃねぇか。


「ちっ、ベッシュ! あの盾に気を付けろ!」


 あー、えんちゃんはこいつらにはお披露目済みか。


 当然、能力は把握されているか。


「使わせるかっ!

 【四連撃】!【四連撃】!【四連撃】!」


 ビリガーが【二刀流】スキルの連撃スキルを使い、ジルにえんちゃんで防がせその場に動きを縫いとめる。


「今だ! 【エアロボム】!」


 ベッシュがえんちゃんを使えない状態で風の塊を放った。


 だが、甘い。


 ジルは既に別の手を打ってある。


 そして今までの諍いと違い、今のジルには俺が付いている。


『【エアロボム】!』


 ベッシュの放った【エアロボム】に同じ威力の【エアロボム】をぶつけ相殺する。


「えっ!? ま・魔法!?」


 相殺された【エアロボム】を見てベッシュは驚く。


 そして――


 スコーン!


 軽快な擬音が見えそうな感じで連撃スキルを使っていたビリガーに後頭部に石のブーメランが弾ける


 ジルがえんちゃんを出すと同時に隙をついて放っていた2番目のお気に入りのめーちゃんだ。


 石で出来ていようとブーメランはブーメラン。


 隙をついて放っためーちゃんは曲線を描いて見事ビリガーを打倒した。


 そして2度も魔法を使用したのを見て驚いているブランをジルは容赦なくぼーちゃんで攻撃する。


「ぼーちゃんー連続で伸びろー!」


 瞬時に2度伸縮を繰り返し、連続突きのように鳩尾とお腹を突いてブランはその場に膝をついた。


「むふー、また私の勝ちー」


「くっ、ズルいぞ! 何でジルが魔法を使えるんだよ!」


「それはー、きゅーちゃんのお蔭ですー」


 そう言って俺が嵌まったペンダントを掲げた。


「なっ、何だよそれ! お前のスキルは石を集めるだけのスキルじゃなかったのかよ!

 くそっ、覚えてろよ! 絶対俺の女にしてやるからな!」


 捨て台詞を吐いてブラン達は逃げ出した。


 はぁ、何とか切り抜けたな。


 と言うか、ジルとブランはいつもこんなケンカをしているのか?


 最早子供のケンカじゃねぇよ、これ。


「おねえちゃん、かっこいー!」


「びくとりー」


 そんでもって、ジルは意外と戦闘能力が高い事が判明した。


 俺の協力もあったとは言え、ほぼ1人で3人を相手して勝っちまうなんて……


 ……本当に7歳児か?









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