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この石には意志がある!  作者: 一狼
第4章 迷宮大森林・疾走編
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048.白黒コンビ

「『森の灰汁』へようこそ! 当店は森の恵みから絞り出されたカスを汁として提供しているお店です! お客様のご希望の商品は何でしょうか!」


 そう言って出迎えてくれたのは、一言で言えば白い女性だった。


 全身が真っ白のコーディネートされており、唯一髪の色がプラチナブロンドと一見すると明るい女性に見えた。


 そして奥にもう1人。出迎えてくれた女性とは逆にこっちは全身が真っ黒のコーディネートされた女性だった。


 こちらは髪の色も黒と本当に黒で統一されていた。


「シロップさん、この店に訪れるお客様のご用件は決まっておりますわ。それにそもそも森の恵みから絞り出される汁とは何ですか? 初めて聞きましたが」


「ああん、クローディアちゃん、こんなのその場のノリに決まってるじゃない! 変わり映えしない日常! そこに現れる親子とも見える謎の2人組! そこに出される怪しげな商品! スリルを感じない!?」


「何処をどうしたら怪しげな商品が出てくるのでしょうか? 不思議です」


「だからノリだって! それよりお客さん、当店にどのような商品をお求めでしょうか?」


 最初に出迎えてくれた白い女性がシロップ。奥の黒い女性がクローディアと言うらしいな。


 2人の漫才(?)に呆気に取られていたマックスだったが、話しかけられてようやくこの店に来た用件を思い出しその事を告げる。


「ああ、アオハルから迷宮大森林を抜けるの為の案内を、ここにくれば紹介してくれると聞いてきたんだが……」


 そう言ってマックスはアオハルから貰った紹介状を見せる。


「うん、知ってた! だってここは迷宮大森林を抜ける為だけ(・・)の案内所だからね! つまりここに来る人は迷宮大森林を抜ける案内が欲しい人だけって事!」


 あー……、つまりシロップが最初に言ったように、暇だから遊びで俺らを出迎えたって事か。


「シロップさん、悪ふざけが過ぎますわよ」


「えー、だってー」


 シロップの方は見た目が15歳くらいと若く見え、何処かギャルっぽく感じる。


 逆にクローディアの方は黒のコーディネートと落ち着いた雰囲気から、大人しめな年上の女性のようだ。


 見た感じはシロップと同じ15歳くらいに見えるんだが。


 同じ15歳でも衣装と性格でこうも違うく見えるとは。


「面白いおねーさんだねー。それで、迷宮大森林を抜ける案内を頼めるのー?」


「アオハルちゃんの紹介状を持っているんでしょー? だったら大丈夫だよ。あたし達がバッチリ案内して上げる! 久々の案内、燃えるわー!」


「はい、お任せください。わたくし達がキッチリと迷宮大森林を案内して差し上げますわ」


 そう言いながら、クローディアはアオハルからの紹介状の中身を確認していく。


「……なぁ、お嬢ちゃん達、随分若く見えるが本当に大丈夫なんだよな?」


 ああ、マックスは2人の漫才よりも、若くして案内人に選定されている方を心配していたのか。


「あら、心外ですわね。わたくし達、こう見えても迷宮大森林の道案内を8年以上も続けて来てるのですわよ」


「そうそう、この道のベテランだよ! 道案内だけに! なんてね!」


 本当にベテランなんだろうけど、シロップのその態度が不安を搔きたてるんだろうな。


 気持ちは分かるぞ、マックス。


「ああ、すまんな。悪気があった訳じゃないんだ。ただあまりにも2人が若かったからな。まぁ、若いからダメって言うのも可笑しいしな」


 そう言いながらマックスはジルをチラリと見る。


 まぁ、ジルと一緒に居れば年齢なんて関係ないと思っちまうよなぁ。


「了解ー! それでどうする? 直ぐ行く? それとも準備してから行く?」


 え? 直ぐに行けるもんなのか?


 普通、準備とかあるもんだと思うけど。


 だが、そう問いかけられれば答えは決まっている。


「もちろん、直ぐ行くー!」


 だよね。ジルにとっては早く迷宮大森林を通り抜けたいんだから。


『だぃじょうぶ、かなぁ……僕、心配だよぉ……』


『彼女らはれっきとした案内のプロなのでしょう。おそらくいつ用立てられても出立できるように準備していると思われます。

 ただ、へきの心配もわかります。シロップとやらの態度が不安を搔きたてられるのでしょう』


 おおい、シロップさんや。石ころにまで心配されちゃってるぞ。


「もう既にご存知かもしれませんが、迷宮大森林の中で数日過ごそうとも、外では1日も経たないのですが、それでも直ぐ行きますか?」


「うんー、直ぐ行くー!」


「分かりました。それではお客様の要望にお応えして、直ぐに参りましょう。シロップさん、準備をしてください」


「あいあ~い。40秒で支度しま~す!」


 即決したら即行動。


 あっという間に準備を済ませ、ものの数時間もしないうちにジル達は拠点都市の北の迷宮大森林の入り口付近に居た。


「さて、これから迷宮大森林に入る訳だけど、ここからはあたし達の言う事は絶対聞いてね! でないと一生出れなくなるから」


「これはシロップさんのいつもの冗談などではなく、本当に迷宮大森林から出れなくなりますからお願いいたしますね?」


 わざわざ案内を頼んでおいて、言う事を聞かない奴なんて……居たんだろうなぁ。


 人によっては「こんな小娘の言う事なんか聞けるか!」とか何とか言って中に入れば自分勝手な行動をする奴とか。


 おそらくこれまでにそう言った輩の案内をしていて、行方不明になった奴とかいるんだろう。


「大丈夫ー。ちゃんという事を聞くよー!」


「ああ、あんた達を侮るようなことはしないさ。但し、しっかり道案内は頼むぜ」


 ジルとマックスの答えに満足したのか、シロップはにんまりと笑い、クローディアも少し感心したようにマックスを見ていた。


「じゃぁ、迷宮大森林に、突っ入ぅーー!」










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