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この石には意志がある!  作者: 一狼
第1部 「幼女」 / 第1章 ファルト村・激闘編
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011.防衛線ー撃退

 餓狼盗賊団の頭領と一回り大きいグレイウルフを前にジルと親父さんは構える。


 俺は【鑑定】を使い詳しいステータスを見る。




 名前:ガロン

 所属:餓狼盗賊団

 称号:頭領

 脅威度:C

 スキル:調教師Lv77




 種族:グレイウルフリーダー

 属性:土

 脅威度:D:(群れ:C)




 うむむ、調教師Lv77か。かなり高いな。


 だからこれほどの規模のグレイウルフの群れを率いてこれたのか。


 脅威度もCと高い。


 そしてこの一回り大きなグレイウルフはグレイウルフリーダーか。


 脅威度も群れだとCだな。


 頭目とグレイウルフリーダー共に脅威度Cとは、確かに周辺の村を脅かすほどの盗賊団と言う訳だ。


「ジル、お前は下がってろ」


 ボスクラスを前に、親父さんはジルを下がらせようとする。


 流石にジルもこの1人と1匹を前に無茶はしないようで、素直に下がろうとするが――


「馬鹿が! そう簡単に逃がすかよ! その厄介なガキが居なくなれば後は蹂躙し放題だ!

 やれっ! グリーダー!」


 頭領がそう簡単に見逃してはくれなかった。


 下がろうとするジルに、グレイウルフリーダーをけしかける。


「グルアァ!!」


『させるか! 【スネークボルト】!』


 地を這う蛇のように雷の一閃がグレイウルフリーダーの動きを絡め取る。


「ギャン!」


「はーちゃんー、力を貸してー!」


 雷で怯んだ隙に、ジルが喉元目がけてはーちゃんを突き出す。


 だが、ジルの攻撃は薄皮一枚傷を付けるだけに止まった。


 痺れても尚躱す動きをするさまは流石リーダーと言ったところか。


 直ぐに痺れから脱したグレイウルフリーダーは素早い動きで牙と爪でジルを攻撃してくる。


 ヤバいな。


 グレイウルフリーダーの攻撃はジルのパワーとスピードを上回っている。


 はーちゃんとえんちゃんを上手く使い捌いてはいるが、確実に追い詰められていた。


『【ヒール】! 【ヒール】! 【ヒール】! 【ソーンバインド】!』


 傷ついて行くジルを癒しながら【ソーンバインド】でグレイウルフリーダーを縛ろうとするも、その素早い動きを捉えきれず牽制程度にしかならなかった。


 ぐぬぬ……


 って、あ。何でこんな簡単な事に気が付かなかったんだ。


『【スピードアップエンチャント】! 【パワーアップエンチャント】!』


 俺の【百花繚乱】スキルは大抵のスキルを使う事が出来る。


 それは勿論、対象に効果を与える付与魔法スキルもだ。


 スピードとパワーを上げたジルは何とかグレイウルフリーダーの攻撃を捌き切り、反撃を行なえるようになっていた。


 後は……


『ジル、ふーちゃんを使え』


 ジルは俺の意図を察し、足下にふーちゃんを出し体捌き代わりに使う。


 ふーちゃんの最大の特徴はその直線移動力にある。


 だが宙に浮いていると言う事は、戦場の足場を気にしないでいられると言う事でもある。


 ジルはふーちゃんに乗ってグレイウルフリーダーの背後に回りはーちゃんを振るう。


「ギャンッ!!」


 おし、今のは致命傷だ。


 背中を斬りつけられたグレイウルフリーダーは目に見えて動きが悪くなった。


「ちっ、何をしてやがる!」


 見れば頭領が苛立たしげにジルを仕留めきれないグレイウルフリーダーを睨んでいた。


 頭領の相手をしていた親父さんは劣勢に立たされていた。


 元々【狩人】は弓を使った遠距離攻撃を得意としている。


 全く接近戦を熟せないわけではないが、明らかに不得手と言える。


 そんな【狩人】でこれまで盗賊を相手に戦ってきたのは凄いのだが、頭領相手には押されていた。


 これは【調教師】でありながら【狩人】相手に上回れるほど自力が凄いのだろう。


 必ずしもスキルが全てではないのだ。


「グリーダー、こんな所でくたばるくらいならせめてその命有意義に使わせてもらうぞ!

 【狂化】!」


 あ、折角こっちが優位に立っていたのに、グレイウルフリーダーに【狂化】のスキルを使われてしまった。


「グルアァァァァァァァアァァァアァッッッッッッッァッ!!!!」


 理性を失ったグレイウルフリーダーはスピードとパワーが再び上回り、我武者羅にジルを襲ってくる。


「ジル!」


「てめぇの相手はこっちだよ!」


「おとーさんー!」


 ジルの窮地に親父さんはこちらへ駆け寄ろうとするが、頭領がそれを遮る。


 ジルも親父さんの方へ向かいたいのだろうが、狂化したグレイウルフリーダーがそれを許さない。


 って、あ。あああ~~、何でこんな簡単な事に気が付かない、俺!


『【ソーンバインド】!!』


 放つ相手はグレイウルフリーダーではなく、頭領だ。


 こっちならこの魔法を躱す動きは出来ない。


「なぁっ!?」


 足元から現れた蔦により一時動きを縛られた頭領は、親父さんの一撃を受けてその場に蹲る。


 だがまだ致命傷じゃない。


 親父さんは頭領には止めを刺さずに直ぐにジルを助けるべく、グレイウルフリーダーに向かう。


『【スピードアップエンチャント】! 【パワーアップエンチャント】!』


 親父さんにも付与魔法を掛け、援護をする。


 これももっと早く気付いて掛けろよ、俺!


 流石に【狩人】を含む2人掛かりでは敵わずに、グレイウルフリーダーはその場に崩れ落ちた。


「ちっ! だが、この俺様に止めを刺さなかったのが敗因だ!

 【ファイヤーボール】!!」


 グレイウルフリーダーを倒され悔しそうにしていた頭領だったが、それでも切り札を持っていたらしく、ジルと親父さんが揃っていたところへ特大の【ファイヤーボール】を放った。


 なっ!? 【鑑定】では【火魔法】スキルも【ファイヤーボール】のスキルも無かったぞっ!?


「おとーさんー、下がってー」


 だが、ジルは慌てない。


 親父さんを背後に庇い、えんちゃんを火球の前に掲げる。


 そう、えんちゃんの能力は反射(魔法)だ。


 跳ね返された火球は逆に頭領へと迫る。


「へ?」


 まさか切り札が跳ね返されるとは思わなかった頭領は呆けた顔をしたまま火球を喰らい火達磨になった。


 運が良かったのか悪かったのか、頭領は大火傷を負いながらも死にはしなかった。


 だが、頭領が倒されたことで勝敗は決した。


 残った盗賊達はまさか頭領が倒されるとは思っていなかったらしく、目に見えて動揺していたところを突かれ次々と倒される。


 グレイウルフの方も【調教師】の効果が切れたのか、統率された行動が無くなりこちらもほぼあっさりと倒すことが出来た。


 こうしてファルト村を襲った餓狼盗賊団は返り討ちに遭い、村はほぼ犠牲無しでやり過ごすことが出来た。


 そこにはジルの活躍もあったのだが、公式には残らなかった。











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