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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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Side-10 アルベルト4

「なん、だと……。ファルト村が壊滅した、だと……?」


「ええ、大変悲しい事ですが、事実です。私が受けた報告では火竜の群れがファルト村を襲ったそうです。生き残った村人は1人も居ないとか」


 “勇”の枢機卿のババァが突然訳の分からない事を言ってくる。


 ファルト村が壊滅した、だと。


 父さんと、母さんが、死んだ……?


 村長や、神父様、ブランや皆が……


 そんな、嘘だ。


 突然の出来事に目の前が真っ暗になる。


「おそらくは火竜の群れは魔族に導かれたのでしょう」


「……魔王が俺の存在を掴み、恐れをなして故郷を焼き払ったとでも言うつもりか?」


「詳しい事は分かりません。ですが、ファルト村が焼き払われたのは事実です」


 俺は、何の為にここまで頑張って来たんだ。


 今まで順調に行ってたじゃないか。


 皆を護るために勇者としても実力をつけて来たし、姉さんとも再会したのに。


 ……ん? 姉さん?


 あ、姉さんが居てファルト村が壊滅した?


 あり得ない。


 えーと、つまりこれはどういう事だ?


 姉さんの事だから俺に監視が付いている事は知っていると思う。


 ファルト村にも監視が付いていて、どうにかならないかと思っていたが、ついこの間、姉さんと再会して『任せた』と言ったので、何とかしているはずだ。


 つまり、姉さんは監視を何とかしてババァにファルト村を壊滅させたと嘘の報告を届けたと言う事か?


「アルベルト様には心苦しいでしょうが、勇者としての責務を全うするために気を強く持って下さい。まさかここに来て勇者としての責務を投げ出すとは言わないでしょう」


 確かに、勇者の存在は公表されてないが、連合軍や各王国、各機関には協力を取り付けている。


 今更協力できないとは言えない段階に来ている。


 今、俺が逃げ出したとしても世界中がこぞって俺を表舞台に、戦場に引きずり出されるだろう。


 ……なるほど。


 引き返せないところまで来たので、人質であるファルト村は必要なくなったと。


 姉さんはそれを見越して、壊滅させたと嘘の報告を届けて一時的にファルト村から目を逸らさせたのか。


「まさか。今さら勇者を投げ出すなんて言わない。俺が魔王を倒さなければ魔族の脅威がなくならないんだ。やってやるよ。ファルト村の仇を討つためにも」


 こう言っておけばババァも満足だろう。


 流石にババァも俺が全て言いなりになっているとは思わないだろうが、表向きは従順な振りをおかないとな。


 ……ハッ、とんだ茶番だな。


「ええ、その意気です。アルベルト様。つきましては魔王軍に牽制する為にも、連合軍の指揮を上げる為にも勇者アルベルトの存在を公表する事に致します。よろしいですね?」


「いよいよか。分かった、準備を進めてくれ。俺は俺の成すべきことを成す!」


「発表は20日後を予定しております。それまでにアルベルト様も準備を怠らないようお願いいたします」


 そう言ってババァが部屋を出ていく。


 このまま行けば、ババァは勇者を育て上げた枢機卿として、勇人部隊を設立した功労者として栄誉を授かる事だろう。


 そうすれば地位や権力は不動のものなり、益々逆らえる者は居なくなるだろうな。


 だが、それはあり得ないだろう。


 なんせ、あの姉さんが動き始めているんだ。


 姉さんに任せればババァは終わりだ。


 とは言え、姉さんに任せっぱなしなのもな……


 俺の方でもババァをぎゃふんと言わせることが出来ないかと、あれこれ探ってみたが所詮は飼われた勇者だ。


 戦闘能力は兎も角、中身はまだ8歳の子供でしかない。


 大したことは探れなかった。


 だとすれば、俺に出来る事は……


 そう考え、俺は勇人部隊がよく(たむろ)っている訓練場へと足を運ぶ。













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