[♠5]ゲームスタート-4
タイトルの前に書かれているのは、対応した人物の視点を示しています。
「ふむ。このゲームが何をしたいってことは理解出来ました」
スプエロからゲームについての話を聞き終えてから、香取佐助は自分の持ち物と端末の機能を見ながら状況を確認していた。
「まさかただの悪戯ではなく、本当にゲームだとは……やはり迂闊でした」
興味本位で返信してしまったことに後悔するが、いまさらこうなった事実は覆せない。とりかえずこの現状を理解することを優先にした。奇妙なピエロからゲームについて説明を聞かされたが、何かと不透明な部分が多すぎるが、このゲームの運営側がやりたいことは理解できただろう。
まずルールについて一から見直してみよう。
[ルール1]には、ゲームの概要について書かれていた。
このゲームには自分を含めて52人参加しているということだ。この52名で異世界という訳の分からない場所で生き残らなければならない。異世界がどういう意味なのか、この段階では判断できないが想像し難い場所なのは確かだ。そして参加者にはプレイヤーナンバーというトランプの数字をそれぞれ振られ、それに対応した勝利条件や能力というのが設定されているらしい。
僕に振られたナンバーは[スペードの5]だ。この数字が何を意味するか強さなのか、今このことについて考えても仕方ないことだが、何より訳の分からないのが、僕に定められた勝利条件と能力だ。これについては後回しにしよう。
そして何より、このゲームの運営の小汚い部分が、賞金10億のところだ。
勝てば10億円を手に入れれるのではなく、賞金10億を勝利者全員で山分けと記載されており、僕が受け取ったゲームの招待状には、きちんと書かれている。"総額10億円を賭けたゲーム"と。こういった記載は懸賞の広告でよく使われる表現だ。もし他の参加者にも同じような招待状を受け取りゲームに勝てば賞金10億だと思って参加している者いたら、こう考えに至る可能性もある。このゲームの参加者を殺せば、手に入る賞金が上がる。このことが人々による殺し合いにつながるだろう。おおよそこのゲームの運営はその展開を望んでいるはずだ。僕の考えてたとおり賞金10億賭けたゲームなんて生ぬるいものではない。
次に[ルール2]には、これはゲーム期間のことが書かれている。
"最初の勝利者が現れてから60日後"と何ともアバウトな日程が記載されていた。
下手をしたら1年以上もサバイバルしなけらばならないと思うと何とも恐ろしい。しかし何より気になるのが、"その限りではない"という一文。他にもゲームを終了させる条件が設定されているという意味合いなのか分からないけど。
次の[ルール3]に記載されているのは、勝利条件というこのゲームの肝の部分だ。
[ルール2]に"ゲーム終了時に勝利条件を達成できなかった者はその場で死亡"と記載されているので、条件を達成しないとこのゲームに生き残れないということだろう。他の参加者がどういうものが設定されているか分からないが、他の参加者を殺害といったものがあった場合、殺し合いの動機にも繋がる。
あと気になるのは、"参加者の勝利条件は例外を除いて最初に提示されているものに限る。"という一文だが、何かによって条件が変わるということだろうか?
そして[ルール4]だが、これがいまいちよく分からない。能力について記載で"参加者に付与された能力は最初に配布してあるタブレット型携帯端末を媒体に使用できる"というとだが、僕の持っている[能力]だとこの一文の意味合いが釣り合わない。媒体という表現が相応しくないが、他の参加者が持っている能力が魔法が使えるということなら理解が出来る。まぁつまりこのルールが言いたいことは、他の参加者の能力は使えないということだろうか。
[ルール5]は配布物について。
僕が今、[情報]のアプリを使って、ルールの確認で使っているタブレット型携帯の端末と僕が目覚める前に寝ていた寝袋と中に入っていた飲食物。あとはこの異世界で使える金貨だ。この金貨がどのくらいの価値なのか街に着いたら確認したいところ。
あとはチェックポイントについての記載だ。おそらくこのチェックポイントはこのゲームにおける重要な役割だろう。まずこの端末の電池問題だ。端末はこのゲームの生命線だ。使用出来る出来ないだと状況が大きく変わる場合があるので常に使える状態にしとく必要がある。しかし充電方法がチェックポイントでしかない以上、一番目指すところはそこだろう。それにチェックポイントには宝箱があるという気になる点がある。他の参加者も同じことを考えるので人が一番集まりやすい場所と言えるだろう。そこを狙って狩りに行く者もおかしくはないので、向かうときは気を付けるところだ。まぁチェックポイントの場所が分からない以上、隈なく探す必要なのだけど。
最後の[ルール6]は、何かあったら運営は動くという意味合いだろう。
つまり運営はこのゲームで僕たちにやらせたいことは、サバイバル生活ではなく殺し合いなんだろう。賞金、勝利条件、能力、チェックポイントと殺し合い舞台を作るのに最適な材料が揃っている。それを畳み掛けるように、最後にあのピエロが言っていたゲームにまつわる情報には興味深いことが書かれていた。
[情報3]
ゲームの参加者52名にはトランプカードに模した数字振り分けられているが、その中に「ジョーカー」が存在している。ジョーカーにはジョーカー専用能力や勝利条件を達成で得られる追加の特典が存在する。
[情報6]
ゲームに勝利することで得られるものは賞金の他、希望するものを報酬として与えることも可能。例えば次回以降のゲームに有利な立場で参加できるなど用意することが出来る。
[情報22]
ランク[4]の参加者には極悪犯罪を犯した残虐者を採用している。
[情報31]
ランク[6]の能力一覧
・筋力を著しく向上させる。
・脚力を著しく向上させる。
・眼力を著しく向上させる。
・聴力を著しく向上させる。
[情報3]は最初、トランプのカード模しているのになぜ52人? ジョーカーはどうしたって思っていたがどうやら52人の中にジョーカーが存在するってことか。所有者特典がすごく気になるところだ。
次に[情報6]はこのゲームを経験したことがある人、つまりリピーターの存在を示唆するような文言が書かれていた。もしリピーターがいるのだったら、そいつはもう殺し合い側の人間と考えていいだろう。次の[情報22]に書かれているランク[4]の参加者も危険と考えていい。
最後に[情報31] はランク[6]の参加者が持っている能力についての情報だ。筋力、脚力、眼力、聴力と人間の身体の機能を向上させる能力ってことだろうか。それにもしこの情報が本当だったら、推測だけどランクによって参加者の能力が統一されているということが考えられる。
つまりこのゲームは時が経つことで、殺すことに否定的なサバイバー側とゲームに肯定的なキラー側の二陣営に分かれ、殺し合いの舞台が形成される。これが運営の意図なのだろう。僕はどっち側かと聞かれれば、今現時点では判断は出来ない。もし殺さなければならない状況なら、僕はあっさりと武器を振るうだろう。しかしその動機がない以上、キラー側に回ることはない。必要性が出てこない限り。