[♣8]ゲームスタート-2
「ようこそ、異世界へ!」
可愛らしくデフォルメされた仮面を付けたピエロ風キャラクターが機械で合成された声でそう告げる。
「……は?」
異世界という非現実的な言葉に戸惑う。
何言ってんだこのピエロみたいなやつは。
「おや、信じていない顔だねぇ~?分からなくもないよ、いきなり知らない場所に連れてこられてよくわからないことを言われて。でも現実だよ?」
「だから何言ってんっだよ! はやく俺を帰してくれよ!」
「分かりやすく言うとね、君たちが参加表明したゲームの会場なんだ! で、その会場が異世界って訳!まぁこの世界で何日か過ごせば実感する時が来るよ。」
タブレットに映る仮面を付けたピエロは俺の訴えを聞かず喋り続ける。どうやら画面に映っている映像は録画されたもの感じだ。しかしゲームなんて参加した覚えなんて…。
「あ、あの時の迷惑メールか!」
挑発的に書かれていたから、勢いで返信してしまったからな…。安易に挑発に乗るんじゃなかった。そういえば、このキャラクターどこかで見たような…。思い出した!あのメールに載っていた道化のキャラクターだ。
「ゲームについて説明に入る前に、ボクの自己紹介しておくよ!ボクの名前はスプーフ・ピエロ!長いからスプエロって呼んでね!このゲームの司会進行役を任されているよ!これからゲームの説明に入るからよ~く聞いてね!まずはこのゲームのルールを一つずつ出すから読み終わったら右上のバッテンを押してね!」
スプエロと名乗る仮面を付けたピエロのキャラクターが間髪入れず説明すると、タブレットの画面にずらずらと文字が表示されてくる。
[ルール1]
このゲームは参加者総数52名による異世界サバイバルゲームである。
ゲーム期間内に条件を達した者は勝利者とし、終了時に勝利者かつ生存していたら、現実世界へ帰還出来る。また帰還後は賞金10億を勝利者と山分けとする。
参加者はそれぞれトランプのカードの数字に模したプレイヤーナンバーが与えられ、それに伴った勝利条件が存在する。また他にゲームを有利に進行させるものとして能力がそれぞれに付与されている。
[ルール2]
ゲーム終了期間は、最初の勝利者が現れてから60日後までと設定されるが、その限りではない。ゲーム終了時に勝利条件を達成できなかった者はその場で死亡となる。
[ルール3]
参加者の勝利条件は例外を除いて最初に提示されているものに限る。条件達成時に自分の端末を所持かつ使用できる状況でないと条件達成とならない。勝利条件によって達成不可能の状況となるとその場で死亡となる。
[ルール4]
参加者に付与された能力は最初に配布してあるタブレット型携帯端末を媒体に使用できる。よって他の参加者の端末を媒体にした能力の使用はできない。
[ルール5]
参加者には、このタブレット型携帯端末、サバイバル道具(ナップサック・寝袋・1日分の飲食物)・この世界で使える硬貨、金貨1枚を配布してある。他にこの世界にチェックポイントをいくつか設けており、そこでは端末を充電することが出来たり、当方で用意した宝箱を開けることが出来る。宝箱の中身はこの世界で手に入れることが出来ないものを多く用意している。
[ルール6]
勝利条件に反した行動しない限りは何をしても自由とする。ただしゲームの進行上、当方で進行上参加者に関与する場合もある。
一通り読んでみると、いまいち呑み込めない部分があったが、なにより条件が達成できないと死亡するという文言に目が留まる。
「死亡って……。」
まさかゲームに命を賭けるってよくゲーマーが言うが、本当にゲームに命を賭けることになるなんて思いもしなかった。
「どお?理解してもらえたかな~? よ~するに、死なないように生き残ればいいの!生き残るために何しても構わないからこの世界の住民を虐殺してもいいし、賞金の為に多くの参加者を滅殺してもいいんだよ!もし参加者全員で賞金山分けとなると2000万弱と少なくなっちゃうよね…。ま、全員が生き残るなんてありえないけどね!」
可愛らしい顔して恐ろしいことを言うなこのピエロ……。つまり、俺以外の参加者は全員が敵ってことになるのか……?
「次に、ルールに書いてあったプレイヤーナンバーと勝利条件、あと能力について教えるよ。重要な事だからよ~く聞いてね! えぇとキミのプレイヤーナンバーは『クラブの8』で、勝利条件が…『プレイヤーナンバー情報交換で得たランク数の総計が51を超える』だね!」
[ニシムロ ケン]
スート : クラブ
ランク : 8
勝利条件: プレイヤーナンバー情報交換で得たランク数の総計が51を超える。
クラブの8。いい数字なのかが分からねぇな…。それに情報交換ってなんだ?
「勝利条件がよくわかってないと思うから教えてあげるよ!まずあとで確認すれば分かるけど、この端末の機能に通信交換というものがあって、他の参加者と端末通信することで情報交換ができるの。そこで他のプレイヤーナンバーの情報を貰えばいいの!だから10・J・Q・Kを持っている5人と交換すれば条件達成!簡単だね!」
よく分からんが、つまり他の参加者と会う必要があるってか。
「次に君の能力を教えるね! 能力は……。『対象の物体を物質変化させる』だね! 例えば、そこら辺の石ころの物質を変えて、すごく重くしたり、柔らかくしたりと材質を変化さちゃうんだ! どう使うかは自分で考えてね!」
[能力]
異能力系:対象の物体を物質変化させる。
端末消費量:極小~極大(変化量によって変動)
異能力……? もうなんかファンタジーだなと思ってしまう。いやこいつの言うとおりここは異世界なのかも知れない。だがまだ信じるのは早いが。しかし物質を変化させるってどう使えばいいか見当もつかないな。
「あと気を付けてほしいのだけど、端末を使用し続けていても端末の電池は減るし、能力を使うことでも電池減っちゃう。つまりゲームでいうMPみたいなもんだね!」
マジックポイントっていう表現にぴんとこないが、つまりこのタブレット型携帯端末はスマホと同じと思えばいいのか。しかし充電方法が先ほどに書いてあったチェックポイントで充電できるって書いてあったがそれ以外に方法は無いのか?
「これにて説明は以上!あと自分で考えてこの異世界サバイバルゲームを楽しんでってね!あとみんなにプレゼントにこのゲームにまつわる情報をあげるから、後で端末内の[情報]から確認してねー!ではみんなの健闘を祈るよ!次に会うまでじゃあね~!」
いろいろと分からないことばかり残して、スプエロという仮面ピエロのキャラクターは手を振りながら画面から消えていくのであった。